GoogleのM&Aにみるハイテク業界の技術マーケティング戦略って
December 21, 2006
徳力さんのブログで、私も以前紹介したことがある韓国系ベンチャーのThinkFreeが、Googleに買収されるかも?という噂があることを知った。 → ※でも、ThinkFree側は断ったそうです。(12月22日確認)
それを知って、真っ先に浮かんだ感想は、「へぇ、GoogleもYahoo!と変わらなくなって来たなぁ」。
少し前までは、Flickr, Facebook, Overture, Del.icio.usと、綺羅星のごとくその名が響き渡る人気サービスを次々と買収するのはYahoo!の専売特許のように語られていたこともあった。(Yahoo's Strategy: Growth by Acquisition; BusinessWeek, 10/6/2006)
Since Yahoo bought Flickr in March, 2005, it has become one of the top ten networking sites, according to June figures from comScore Media Metrix. Del.icio.us has grown from roughly 300,000 subscribers, when Yahoo bought it in December, 2005, to 1 million this September
また、買収によるYahoo!の成長の影では、自社製サービスとのバッティングや、プロダクトポートフォリオの混乱が起きており、フォーカスの効いたビジョンや戦略、オーナーシップが不明確になっていることに対する警鐘が、社内からあげられたりしている。(Yahoo Memo: The 'Peanut Butter Manifesto' - WSJ.com; 11/18/2006)
で、Googleの動きはどうか、というと、
2003年にBloggersの親会社であるPyra Labsを、2004年7月にはPicasaを、2004年10月にKeyhole(現在のGoogle Earth)を、2005年3月にはUrchin(現在のGoogle Analytics)を、2005年10月にはAOL株の5%を、2006年1月にはラジオ放送用ソフトウェアのdMarc Broadcasting Servicesを、そして今年10月にはYouTube。11月にJotspot。もう最近は多すぎていちいち覚えきれないぐらいだけど、特に、Google VideoがあってもYouTube, Google SpreadsheetとWritelyがあってもThinkFree、というあたりにシタタカサを感じる。(あえて競合させて実験してるのかな?どっちかが転んでも大丈夫なようにリスク分散?とか。。)
参考URL:Google Looks To Boost Ads With YouTube; WSJ, 10/10/2006
Google Acquires Urchin; John Battelle's Searchblog, 3/28/2005
Google Buys JotSpot to Expand Online Document-Sharing Service; WSJ, 11/1/2006
これをどのように評価すべきなのだろうか?
Google論における日本の第一人者、梅田望夫さんは、「『こんなものゼロから作れば俺たちの方がいいものが作れる』という『天才的技術者の発想』より遥かに上位のところで、Googleがきちんと『正しい経営判断』を下す会社になった」と評価されている。
確かにこれは一理あるかも、と思う。「俺たちの方が~」というのは、優秀な技術者を社内に大量に抱えている技術Orientedな会社にありがちな風景なので。しかし、その反面、企業の内側から、そこのコアな分野に関するイノベーションが生まれなくなってくるのは、衰退の兆しだという説もある。
変化の速いハイテク業界でも、ただ闇雲に突っ走っているわけでなく、内部には技術マーケティング・ロードマップに基づく羅針盤がある、という。その中の選択肢としては、必要とあらば、他社の技術を買うという行動も含まれている。技術開発の戦略、その中でも、どういう場合・どういうモノを買収するのか?というM&A戦略はどうあるべきなんだろうか? ということを最近よく考える。
- 顧客が欲しがっているものを素早く買い取り、ソリューションとして仕立てて提供するうまさに定評があるCisco
- まさに「俺たちの方がいいものが作れる」で、後発企業をブルドーザーのごとく薙ぎ倒してきたMicrosoft
- 歴史に名を残す重要な発明を数多く生み出しながら(レーザープリンター、イーサネット、GUI、マウス、オブジェクト指向プログラミング、ユビキタスコンピューティング 等)、どれ一つ社内では事業として成功させられなかったXerox
- PCアーキテクチャーにおける勝負どころを見誤り、思いがけずに"Wintel"興隆、関連産業の発展の基を開いてしまったIBM
でもまぁ、Googleのコアはやっぱり検索アルゴリズムだろうから、そこ以外のM&Aは普通に経営判断として合理的だろうとも思うし、そもそもシリコンバレーの「世間の狭さ」を考えると、実は両社の社員の中にはフツーに友達同士だったり、「あ~YouTubeね。あそこのXXはいい奴だよ。昔XXで一緒に働いてたんだけど」みたいな感じなんだろうなぁ、と思ったりします。
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