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「知らなかったこと」にはできない。

これまで、「知らなかった」自分と、「知ってしまった」自分とは、どちらが幸せなんだろう。
と考えることが何度かあった。

私の場合、主にそれは食い意地に関係しているのだが。

私の密かな趣味?は、「食パンの食べ比べ」だったりする。と言っても、自分でパンを焼くほどのスキルはなく、ただ、見かけた街のパン屋さんやデパ地下で食パンを買うのが好きだ。不思議なもので、食パンの値段というのはだいたいどこの店でも相場が決まっている。よほど何か蘊蓄がある凝ったパンでなければ、普通は一斤200円から250円ぐらいで買える。

最初は「おいしい」「おいしくない」みたいな軸でしか判断できなかったが、色々食べていると、甘みがあったり、香ばしかったり、塩気があったり、それぞれ味が違っていて、「単に"違う"だけで、後は好みの問題なんだなあ」と最近までは思っていた。

が、先日、「食パン観」が変わるほど"違う"パンを食べた。確かに、値段もちょっと高かった(定価は450円ぐらいで、一日前ので360円だった)んだけど、それぐらいの値段の食パンは他にもないわけではない。でも、これまで自分が食べてたパンとの違いに、カルチャーショックを受けた。

それと同時に、「この味を知った自分は、知らなかった自分と比べて、幸せなんだろうか」と、冒頭の問いに戻ったのだった。

パン以外でも、似たようなカルチャーショックを受けたことは何度かある。例えば、コーヒーとか。私は10年ほど前むちゃくちゃコーヒーにはまった時期があって、街を歩いて美味しそうな喫茶店を見つけたら飛び込んでみる、のが趣味だったことがある。日本のコーヒーは一般的にとてもレベルが高いと思う。それが分かったのはアメリカに行った後だったが、でも、アメリカにも、日本の美味しいコーヒーと比べても全く引けをとらないコーヒーもあった。

なぜ、その味を「知ってしまった」ことが不幸せか、というと、「○○は××でしか買えない」のような、自分の行動に対する「縛り」みたいなものができてしまうからだ。いや、別に、他の店で買ったからって、ペナルティがあるわけじゃない。もちろん、他の方に淹れていただいたコーヒーは、いつでもありがたくいただきます。・・・なんだけど、自分で買うという段になると、やはり、他の店への足が遠のいてしまうのだ。しかも、その店が遠かったりするし。それってホントにコーヒー好きにとって幸せなんだろうか?みたいな。

実は、こんな非建設的な悩み(笑)で、つい最近まで、美味を心から追及することに、私は、心のどこかでブレーキを掛けていたかもしれない。「その割には食い意地、張りすぎ」と突っ込まれるかもしれないけれど(笑)

つい先日、友人と会ってそんな話をして、別れて、しばらく自分でも考えていたのだが、やっぱり、「知らなかったこと」にはできないし、「知ってしまった」ことは自分にとってラッキーなのだと、今は思えるようになった。

この先、自分が知ってしまったおいしいコーヒーやおいしいパンを一生知ることなく過ごしていたとしたら?と考えると、それはもっと寂しいんじゃないか?と、思うからだ。これは、別に、食べ物のことだけじゃないのかもしれない。例えば、きれいな景色や、すごいプレゼンを見た後の感動みたいなのもそうだ。同じように、最近、私はソーシャルブックマークを始めてみて、「ブログを始めた頃の自分だったら、間違いなくコレで一本書いてたな」と思う記事がたくさん溜まっていることに気づきつつあった。

前は、おいしいコーヒーの味を知ってしまうと、「買いたい店が少なくなる」的な、後ろ向きな考え方をしていたが、実はそうじゃなくって、自分の知っている味の幅が広がった、成長したという考え方もできるなあ、と。ブログも、(更新頻度が落ちているのはもうちょっと何とかしたいとは思うけど)たくさん記事を読めるようになったり、感動の琴線ハードルがあがったことで、色々考えてから書くようになったのは、これはこれで良い面もあるのだ。たぶん。

「出会いは別れの始まり」と考えるか、「別れは出会いの始まり」と考えるかの違いみたいなものだろうか。

アメリカのファミレスの、むちゃくちゃ煮詰まったニガニガのコーヒーも、カリスマバリスタの気合十分・焼き立てなコーヒーも、
スーパーで量販されてる乾燥しちゃったパンも、パン職人が極上素材を使って丁寧に焼き上げたパンも、
そのときそのときの状況に応じて、どちらも楽しめる自分でいたいなあ。と今は思う。
例えば、突然思い立って出かけた旅行先で、とか、むちゃくちゃ真剣に議論してるときとかは特に。
何を食べるかも、とても大事だけど、誰とどう食べるかも、同じくらい大事だし。

ちなみに、私が先日感動したのは、天然酵母を使ったパンだった。
パネッテリア アリエッタ
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Comments

Fah

うちのご近所なので、たまに買いに行きます。
おいしいよねぇ。(*'-')

ayustety

このエントリを読んでて、芥川龍之介だったかが「一生で読める本は限りがあるので、読む本は厳選して読む」みたいなことをなにかに書いていたことを思い出しました。若い頃、そのフレーズを読んだときに「生きている間にすべてのことを経験するのは無理なんだよねー」とものすごく腑に落ちたわけです。

すべてを知ることはできないけれど、いずれ知るかもしれないのなら、貪欲にいろんなことを知ろうとするのでいーんじゃないか、と思います。

唐突ですが、パンがおいしい地域は、京阪神間(それも阪急神戸線沿線)だと思っています。あのあたりをぶらぶらして、目に付いたパン屋にふらっと入って、適当なパンを買って、挽きたてのコーヒー飲みながら食べるのは、かなりの幸せです。

Tomomi

Fahさん
あ、ご近所なんだー。
もし他にもオススメとかあったらコッソリ教えてくだされ。

ayustetyさん
確かに「全てを経験するには人生は短すぎる」んですよねー。
せっかく出会えたんだから喜ばないと!という、こんな簡単なことを悟るのに、時間ずいぶん掛かっちゃいました。。。。
大阪には仕事でよく行くんですけど、阪神にはあんまり乗らないんです。今度、機会を見つけてトライしてみます!

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