GoogleとYouTubeは既存ビジネスの破壊者なのか?
October 23, 2006
週末、Emerging Technology研究会に参加して、色々な議論を聞いて、Google/YouTubeがもたらしうる「破壊と創造」についてあれこれ考えさせられた。中でも、著作権のあり方が変わるのではないか?という意見があったので、これについて少し考えてみたい。
私自身の著作権に対する考え方は、コモディティ化が進む経済(オンライン音楽販売に考える)というエントリを書いた時から、変わっていない。著作権というのは、その立法趣旨に鑑みても、創作者に対価をきちんと還元する仕組みによって創作活動(と創作物を公開すること)に対するインセンティブを高め、文化を振興するためにある。
と書くと何だか高尚っぽいが、卑近な例で言うと、私の場合、会社で日中働いてお給料をもらって生活してるので、本業以外のことを勉強して書き綴る趣味のブログはなかなか頻繁に更新できないなぁ、みたいな嘆きみたいなものだろうか。
話を戻すと、なぜ本を丸ごとコピーしてそれを配るのが違法なのか?というと、その情報を入手・保持することへの対価を著者に還元するための手段が、紙という媒体を売買することで担保されているからであって、もしそれ以外の方法が担保されたら、著作権法によって禁止される行為は現実世界に合わせて変化していくべきなのだ。レンタルレコード・CDという商売が登場して、「レコードを他人にお金を取って貸す場合は著作権者にお金を払うようにね」という条項が追加されたのと同様に。
そして、CDやDVDといった物理的な媒体ではなく、インターネットを通じて音楽・映像データそのものをやり取りするという動きを止めること、完全にコピー不可能なファイルを作ることはもはや無理だろう。一旦便利な方法に味を占めたユーザーは、不便で不経済な方法に逆戻りはしない。デジタルファイルはコピーされるものだという前提に立つこと(プロテクションを掛けることはできるが、ウィルスと同様ハッキング技術とのイタチゴッコだろう)、「ユーザーから直接対価を回収する」以外の方法を模索することが現実的なアプローチではないかと思う。
●CD業界では何が起こったか
ちょっと回りくどいかもしれないが、まず、映像配信の一歩手前で、音楽配信技術・ビジネスは、既存のCD業界にどういう影響を与えたのか、アメリカでの事例を見ていきたい。
RIAA (Recording Industry Assiciation of America) によると、CDの平均単価は1983年から1996年に掛けて40%下落しており、96年時点の平均単価は$12.75。これがもし、同期間の消費者物価指数と同様伸びていたとしたら、$33.86になるそうだ。そして、CD業界も大多数の商品は大赤字で、儲かる商品はごく一部 ― 黒字化するのは1割以下の商品とのことだ。やはりというか、相当ロングテールなんですね。
Between 1983 and 1996, the average price of a CD fell by more than 40%. Over this same period of time, consumer prices (measured by the Consumer Price Index, or CPI) rose nearly 60%. If CD prices had risen at the same rate as consumer prices over this period, the average retail price of a CD in 1996 would have been $33.86 instead of $12.75.
また、業界全体の売上高を1995~2005年の10年間でみると、(注:PDFファイルが開きます)1999年の$14,584.7 million をピークに、2003年まで下落し、デジタル音楽が市場としてカウントされるようになった2004年から若干盛り返している。1999年と言えば、Napsterが発表された年であり、2003年と言えば、デジタル音楽がビジネスとして成功したiTunes Music Storeが始まった年に当たる。2005年は、2004年よりも業界全体の売上高は若干下落しているが、ユニット数はこの10年間で最大に増加している。それから、デジタル音楽の市場が全体に占める割合は、金額ベースでは4.1%だが、ユニットベースでは29.4%に達している。もう一つ興味深いのは、モバイル市場($421.6 million)が通常のインターネットでのダウンロード($503.6 million)に匹敵する勢いだということ。
つまり、アメリカのデジタル音楽市場(PC+携帯)は1千億円市場(日本円換算するのはちょっとヘンだけど)なのだ。
確かに、CDの単価は下落したし、違法コピーされた音楽ファイル数は合法的に購入されたものの何倍にもなるだろう。でも、トータルで見たら、業界全体はピーク時の84%程度には維持されている。そして、以前よりも多くの音楽が売れるようになっている。
これを見て、音楽配信技術は、従来のCDビジネスを単純に「破壊した」と言えるのだろうか?
●では、YouTubeはどのようなインパクトをもたらすのか
たぶん、(Googleによる買収前も今も、)訴訟リスクはYouTubeにとって最大のリスクファクターの一つだろう。
でも、それと同時に、YouTubeは面白い。可能性がある、と思う。
映画コンテンツなんかは、無償で全部アップロードされちゃうと辛いかもしれないが、それこそ素人が作ったコンテンツや、これまで超ローカルでしかリーチのな かった中小プロダクションのコンテンツ等、YouTubeがなかったらあんまり人に見てもらうチャンスがなかったゾーンにとっては、そもそも元の市場価値がゼロだったわけなので、ほんのちょっとでも金銭になればそれはそれで嬉しいことのような気もする。
ダンナも書いていたが、従来メディアがそれなりに流して作ったコンテンツより、素人が作ったコンテンツのほうが(瞬間最大風速的かもしれないが)人気を集めてしまったり、大量の「寒いコンテンツ」(Masa 33さんの図表は最高に分かりやすい)の中から未来の星が発掘されたり、あと、従来メディアが作ったコンテンツのコピーの中でも、例えば、30分の番組の中で、皆が最も面白いと思ったのはどの瞬間だったのか、ユーザーによる編集結果や閲覧数を見れば、瞬間視聴率なんかはむちゃくちゃ低コストで測定できそうだ。
アップロードされたコンテンツのコピーされ度合い・閲覧度合い、といった、従来とは全く逆の発想で、それに応じてお金に変換してユーザーに還元する方法も色々ありそうだ。その辺は、ダンナが詳しく書いていたのでそちらに譲りたい。
また、ET研でも一瞬話題になったが、なんと、アメリカの4大レコード会社のうち3社が、Googleへの売却直前にYouTubeの株を貰ったそうだ。その額はおよそ$50 millionらしい。(Music Companies Grab a Share of the YouTube Sale, NYTimes, 10/19/2006)
金持ちケンカせずというか、Napsterとの訴訟騒動を通じて「割に合わん」と学んだのかは分からないが、一体どうやってこの$50 millionという額を算定したのかが気になる。合法オンラインダウンロード市場の1/10近い額なので、まーよっぽど違法アップロードが多いと言うことだろうか。。。。NYTimesの続報に期待したい。いずれにせよ、既存メディアがYouTubeの株主になっているというのは面白い構図である。
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Posted by: Vance28Gail | June 29, 2011 at 05:01 PM