Previous month:
June 2006
Next month:
August 2006

新原浩朗「日本の優秀企業研究」

誤解を恐れずに敢えて言えば、この本は、日本の"Good to Great" である。

まず、フレームワークがかなり似ている。「日本の優秀企業研究」とGood to Greatは、それぞれ日米で15年間以上株式市場の平均を上回るパフォーマンスをあげ続けた企業に共通して見られる特徴、そうでない企業には見られなかった特徴を分析したものだという点だ。

それから、導き出された優秀企業の「6つの条件」のうち、3つが非常に似ており、加えてあと1つは明示的ではないが十分同じメッセージを感じることができた。具体的に言うと、

  • Confront the Brutal Facts = 危機をもって企業のチャンスに転化すること
  • Hedgehog Concept = 分からないことは分けること
  • Culture of Discipline = 世のため、人のためという自発性の企業文化を埋め込んでいること

また、経営者のリーダーシップの重要性についても、かなりのページを割いて書かれていた。

なぜ、こんなことを言いたかったかと言うと、よく「日本とアメリカは人も違うし文化も違う。同じやり方ではダメだ。」と言われるが、洋の東西を問わず資本主義社会で成功した企業は、グローバルであろうと内需中心であろうと、似た特徴を備えているということが、非常に印象的だったからだ。ほぼ時期を同じくして、太平洋のあちら側とこちら側で、似た結論に至ったというのが、一番興味深かった。

同様に、優秀企業かどうかの判定基準が、奇しくも同じ「15年間」だったことも面白い。「日本の優秀企業研究」では、プラザ合意以降、為替レートの大幅変動の影響を受け、かなり大きく経営環境が変わった企業が多かったためと指摘されているが、これから推察すると、社会や経営の外的環境の変化はだいたいこれぐらいのサイクルで起こっており、一度築いた優位が持続するのはこれぐらいの期間だということかもしれない。(むちゃくちゃ荒い仮説だが)

日本の優秀企業研究―企業経営の原点 6つの条件 日本の優秀企業研究―企業経営の原点 6つの条件
新原 浩朗


Amazonで詳しく見る
by G-Tools

それはさておき、「日本の優秀企業研究」そのものに話を戻す。

事例に取り上げられた10社(花王・キヤノン・シマノ・信越化学・セブンイレブンジャパン・トヨタ・任天堂・ホンダ・マブチモーター・ヤマト運輸)は、いずれも日本ではエクセレントカンパニーとして名高く、ビジネス書でも頻繁に取り上げられる企業ばかりなので、全く違和感はない。また、様々な逸話は厚みを持って語られており、1つ1つのケーススタディとして読んでもとても面白かった。実直に現場に密着した話が多いので、特に日本でGood to Greatを読んでイマイチピンと来なかった人には、こちらのほうが腹に落ちやすいかもしれない。

それから、私にとって意外だったのは、優秀企業では社長が非常に強いリーダーシップを発揮していた点だった。よく、「日本はボトムアップで、アメリカはトップダウン」と言われるが、例えば、ホンダでは、車のデザインは最終的に社長がGoを出すまで製造できないのだそうだ。最終的な判断基準を1人が持つことで統一感が出るというのは、Webサイト編集等の自分の経験から言っても非常に納得だが、まさかそこまでやっているとは思っていなかった。もう一つ例を挙げると、信越化学では、経営陣がガヤガヤ言いすぎて研究者を萎縮させてしまった反省を活かし、かなり研究者に自由に任せているが、事業化するか・できるかの判断は全て社長が行なっているとのことである。

このように、事業化の判断を経営トップ自らが下している例をアメリカのハイテク業界で挙げると、MicrosoftにおけるBill Gates, AppleにおけるSteve Jobs, GoogleにおけるPageとBrinが有名だ。それを「ワンマン」だと批判する声もあるが、結果から言うと(少なくともその社長1代に限っては)ワンマンの方がうまく行くのだろう。残る問題は世代交代であるが。

一つの組織がどれくらい成功を持続できうるのか、業界や製品アーキテクチャがガラリと変わり、自己否定しなければならない「イノベーションのジレンマ」に勝ち続けて行くことはできるのか、それは経営者が代替わりした後も可能なのか。私はずっと、興味を持ち続けている。

この本の使用方法について一点注意を要するとすれば、著者の新原氏自身も認めているが、この本に登場するのは大企業ばかりなので、ベンチャー・中小企業の成功の条件を知りたい場合はもしかしたら他の本を当たったほうが良いかもしれない。

とりわけ印象的だったポイントを、下記にまとめる。(私が理解したままを、自分用のメモとして書いたものなので、原著には完全一致箇所がない場合もあります。)

Continue reading "新原浩朗「日本の優秀企業研究」" »


ブックマーク公開しました

ソーシャルブックマークといふものをしてみようと思い立ちました。私のブックマークは英語の記事が多いので、英語圏での流行り具合が分かる方がいいかなあと思い、Del.icio.usを利用することにしました。

本当はもう少し頻繁にブログを更新したいのですが、なかなかそうも行かないので、私のアンテナにピピっと来たものをカジュアルに共有する仕組みを活用してみることにします。気が変わって今後突然消滅したり、非公開になるかもしれませんが、とりあえず公開してみます。

http://del.icio.us/vietmenlover


自分と社会と仕事と

少し前に、大学の後輩と飲んだ。最近いろいろ悩んでいるので少し話を聞いて欲しい、ということで、同じく仕事で悩んでいる別の後輩を連れて来てくれた。彼女達はどちらも社会人4年目になったところだ。

「悩み」というのは、他人からどう見えようと、その最中にいる本人にとっては深刻なものなので、まとめてしまうのは彼女達に失礼かもしれないのだが、断片的に聞いた限りではかなり共通するところがあると感じたので、敢えてまとめさせてもらうと、

  • 自分の仕事が本当に人の役に立っているのか、お客様に喜ばれているのか、実感が持てない。
  • 「ホントは今のままじゃダメだろう」と思っているのだが、自分には、周りの人を説得するだけの技術や能力がないので、自分の意見を主張するのにイマイチ自信が持てない。だから、主張しても周りに理解してもらえない(あるいは、主張することを躊躇ってしまう)
  • なので、もっと顧客や消費者に近い仕事に転職しようと思っている。

実は、これと非常に似た話を、過去に会社の同僚達(正確に言えば「元同僚達」)から何度も聞いたことがある。更にもっと正直に言うと、私自身もかなり似た悩みを彼女達と同じ年頃の時に持っていたので、その気持ちはとてもよく分かるような気がした。私自身が、その時その悩みをどう超えたかは、超えられない壁は、自分の前には現れない。というエントリで書いたことがある。読み返すと青臭くて恥ずかしいが、今になって思えば、私は自分の仕事に対するフィードバックを 欲していたのだと思う。

自分、お客さん、会社、これらの関わりの中で、どのように自分のやるべき仕事を定義してゆけば良いのだろう?

こんなことを考えながら、Jim Collinsの"Good to Great"を読んでいたら、もしかしたら、これは企業や組織にとってだけでなく、個人のキャリアを考える上でも当てはまるのでは?と思う点が幾つもあった。

  • First Who, Then What (誰と一緒にやるのかが最初。何をするかはその次)
  • Confront the Brutal Facts (自分が「勝てない土俵」はどこかを知る)
  • Hedgehog Concept
    • What you're deeply passionate about (自分が心から情熱を感じられるものは何か)
    • What you can be the best in the world at (自分が世界で一番になれるものは何か)
    • What drives your economic engine (自分の強みを経済的な価値に変換する仕事とは何か)

#日本語は私の意訳です。

「戦略とは、『何をするか』ではなく『何をやらないか』を定義することである」とはよく言ったものだが、この中で一番難しいと思うのは、「勝てない土俵」について明確にすることなんじゃないかと思う。誰だって、もしかしたら自分はすごいことができるんじゃないか、ひょっとしたら自分の会社は世界一 (The best in the world)になれるんじゃないかと思っているからこそ、今日も頑張れるのだろうから。

そういう意味では、ものすごく苦手なことがあるとか、自覚している弱点があるとか、今の会社・仕事とは決定的に合わないと思っている人の方が、もしかしたら、Greatになるための道筋は見えやすいかもしれない。Jim Collinsもこう言っている。"Good is the enermy of great." (超訳すれば、「イイ人なんだけどね~」という感じ?!)

「自分と社会と仕事と」については、もう少し考えを深めたら、また書こうと思う。

余談ですが、Good to Great(日本語訳は「ビジョナリーカンパニー2 飛躍の法則」)について。私はこの本、すごく好きです。Amazon.comのビジネス書部門でも4位(2006年7月6日現在)と、未だに売れに売れまくっているだけのことはある。梅田望夫さんも書いておられるように、Jim Collinsの働き方は、ある種の人々(私を含む)にとって「理想的ビジネスライフスタイル」だと思います。内容はもちろん、本の書かれたプロセスや文章の巧みさなどを見るにつけ、「こういうやり方でこういう仕事ができたら素晴らしいな…」と思うのです。