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インターネット上の国境と言論の自由と

Google's China Problem (and China's Google Problem) - NYTimes, 4/23/2006

すごく長い記事なので一瞬躊躇したが、Googleのことだけでなく、中国のインターネットに関する規制(※)や、ブロガー達を支配する見えざる「自主規制」の雰囲気、アメリカのインターネット企業がこれまで中国市場にどのように参入しようとし、いかに戦い、いかに妥協したか、といった話が書かれており、中国のインターネットビジネスについてあまり知識のなかった私にとっては、とても面白かった。

言論に対する規制の厳しさに驚くと共に、更にはその規制が曖昧さを残しているが故に、自主規制(大抵の場合、実際のNGゾーンよりも安全マージンを取って、より保守的に運用されている)に縛られている息苦しさみたいなものや、「どこの国にも"インターネットで公には語られないタブー"があるじゃないか」といった中国人ブロガーやネット企業のエグゼクティブ達の意見に、なんだか改めて、インターネットの民主主義とかグローバル時代の法規制のあり方とか言論のあり方などなど考えさせられてしまった。

ほんとはちゃんとまとめてからエントリしようと思ったのだけど、NYTimesは確か1週間過ぎると記事が無償で読めなくなるので、少しでも多くの人に読んでもらうにはスピードだー!!ということで、紹介しておきます。

(※)中国では、国内サーバーはモニタリングされており、NGワードの検索はできない。しかも、NGワードはサーチサイトやISPには提供されない。更に、国民 がインターネットに接続するには氏名や住所を届け出なければならないし、ネットカフェ等インターネット接続サービスを提供する企業は、違法サイトにアクセ スした顧客がいた場合、届け出なければ罰金・懲役が課せられる等の法規制があるそうだ。


The World's Most Innovative Companies

BusinessWeekとBoston Consulting Groupによる調査「世界で最もイノベーティブな企業」の発表があった。栄えあるトップ100社の顔ぶれは、1位はApple, 2位 Google, 3位 3M, 4位 Toyota, 5位 Microsoftだそうだ。ハイテク系の会社を抜粋すると、8位 Nokia, 10位 IBM, 12位 Samsung, 13位 SONY, 14位 Dellと続く。

もっと完全なリストを知りたい方はBusinessWeekのサイトへどうぞ。

今日はAppleの四半期決算発表もあったのだが、1年前に比べて売上高が34%アップ、利益も第1四半期から41%アップと非常に好調なようだ。元々の本業であるデスクトップPCに関しては、Intel-based Macの影響、Nativeなアプリケーション不足から若干買い控えがあったようだが、iPodは引き続き好調で、四半期で850万台を売ったとのこと。同時に、現在本社があるCupertino市に新たに50エーカーの土地を購入し、二つ目のキャンパスを建設すると発表された。二つ目のキャンパスには3,500人の従業員を収容(?)予定とのこと。

記事が古くなってリンクが切れてしまったが、San Jose Mercuryによると、2005年シリコンバレーで創出された雇用は38,000(※)で、そのうち半分をたったの5社で占めているのだそうだ。その5社というのはApple(1位), Google(2位), Intel(17位), eBay(18位), Yahoo(61位)らしい。(※カッコ内は「最もイノベーティブな企業」ランキングの順位)つまり、これらの5社は、それぞれ去年1年で3,800人ずつ雇った計算になる。Appleの二つ目のキャンパスの規模も肯ける。

ちなみに、シリコンバレー全体の雇用は約115万だそうなので(Joint Venture "The Index 2006"より)シリコンバレーで働いている人のうち3.4%は、この5社に2005年に雇われたということになる。Valley Fairとかで石を投げれば、かなりの確率でこの5社の従業員にぶつかりそうだ。

ランキングの算定基準はまだチェックしてないが、96~97年頃には、どこかのハイテク他社に買収されそう、という噂が絶えなかったAppleが、大変な時期を乗り越えてこういうランキングでトップを飾るのを見ると、やっぱり誰にも必ず辛い時があるけど、諦めちゃいけないんだなあ、と改めて思った。月並みな感想ですが。ちなみにAppleの当時の株価は20ドル台前半だった(シリコンバレーの景気が底だった2002年頃は14ドル台とかである!)今は70ドルに迫らんとする勢いである。

(※4/23追記)但し、Appleは2005年3月に株式分割を行なっているので、現在の株価は140ドル相当になる。つまり、2002年から比べてほぼ10倍に。

ところで、再び話をBusinessWeek「世界で最もイノベーティブな企業」特集に戻すと、イノベーティブ企業はそうでない企業に比べて、株主還元率もよいらしい(訳はヘンかも?原文は"Shareholder return")。欧米では、差は2-3%だが、アジアでは6.5%程度ついている。

イノベーティブな企業の特徴等は、特集記事に書かれているようなので(まだちゃんと読めてないけど)、追々メモを追加するかもしれません。

(※)4/21訂正:曖昧な記憶で「39,000」と書いていましたが、確認したところ、「38,000」が正解でした。(San Jose Mercury "Valley Steps Up Its Rebound", 4/10/2006)


今後の目標・計画

今後考えてみよう、書いてみようと思うこと:

  • これまで言及した企業の比較、まとめ、今後の展望。具体的にこのブログで取り上げた企業名を挙げると、IBM, hp, Sun Microsystems, Dell, Apple, それと少しMicrosoft, Intelについて調べ、考察したが、「これらの会社を比べると、総体として業界はどうなのか。これからどうなると思うか」整理したいと思う。
  • 日本のIT業界の特徴について。これまでコンピューターの歴史を振り返るのに、私は、クレイトン・クリステンセンやマイケル・クスマノ、ボールドウィン&クラークのIT業界に対する見方に強い影響を受けているが、彼らは一様に「日本は例外」と指摘している。しかし、日本のSIerに働く私にとっては、「アメリカの会社・業界がどうなのかは分かった。じゃあ日本はどうなんだ」というのが非常に気になる。もちろん、日本でも幾つか、日本企業の国際競争力について優れた本が書かれているが、IT業界、とりわけソフトウェア・SIに特化して深く分析されたものは少ないように思う。日本のコンピューター・IT業界がアメリカのそれと違うとしたら、その理由は何なのか。日本市場の特殊性は、日本企業の国際競争力にどのような影響を与えているか/与えうるか。
  • 株価という魔物について。株式市場に投資家として参加することは、「美人コンテストで誰が1位になるかを予想する」ことに似ていると思う。つまり「自分が一番綺麗だと思う人」ではなく、「みんなが美人だと思う人」を予想して投票する必要があるからだ。コンピューター・IT業界の大手各社に対して、私個人が、各企業の戦略を分析して定性的に付けた評価は、株式市場の評価と一致しているのか、していないのか。一致していないとしたら、それはなぜか。(別に私はプロの投資家になりたいと思っているわけではないが、資本主義の世の中で会社を経営していく上では、株価と一体どのように付き合って行くべきなのかを知りたい。「資金調達のコストと難しさ」と世間ではよく言われるが、私自身はイマイチピンと来ていないので。)

今読んでいる本:

  • Jim Collins "Good to Great"
  • John Battelle "The Search"
  • Clayton Christensen "Seeing What's Next"
  • Carliss Baldwin and Kim Clark "Design Rules Volume 1: The Power of Modularity"
  • Eric Von Hippel "Democratizing Innovation"

どれも結構歯応えがあって、行きつ戻りつしながら読んでいるので、全ての書評をきちんとした形では書けないかもしれないが、何らかの形で言及・参照することになると思う。

なにぶん、業務SEという本業の合間を縫って、ポツポツとマイペースに進めることになるので、更新の頻度は今後もそれほどあがらないと思う。また、このブログはあくまで私個人の勉強のために書いているものなので、分かりづらい点・間違っている点をご指摘いただくのは歓迎だが、内容の厳密さ・正確さは保証しない。ブログを通じて私が追求しているのは、可能性を示唆することであって、それを受け取った人が何を考え、どう行動するかは自己責任にお任せしたいと思う。


すでに起こった未来

ピーター・ドラッカーの言葉に「すでに起こった未来」というのがある。

この表現が分かりづらければ「ターニング・ポイント」と言い換えても良いかもしれない。

既に起こった出来事であり、もはや元には戻れない、しかし重要な影響力を持つ変化。たいてい非常に些細なので、殆どの人が見落としてしまう出来事のことを指している。「すでに起こった未来」を知覚し、未来を予測・分析するのが社会動態学者である自分の仕事だ、というようなことを彼は書いていたのだが、実は、「すでに起こった未来」は社会動態学者だけでなく誰にとっても存在するし、誰にとっても重要なものだと思う。

「すでに起こった未来」を、私はうまく説明できないので、少し長くなるが山田ズーニーさんのコラムを下記に引用する。

「分岐点」

5年つきあった恋人と、
自分の言った
「たった一言」が原因で別れたという人がいた。

「あの一言が原因で‥‥」
と悔やむその人に、ある人が言った。
その一言は原因ではないと、

「5年もつきあって、
 たった一言が原因で別れるようなことはない」と。

事情はまったく知らない私だが、
この言葉にすごく感じるものがあった。

分かれ道は、もっと前に来ていたのではないだろうか。

もっと水面下で、
もっと静かに、
もっと決定的に。

道が分かれて、
最初は目に見えないちょっとの距離が、
水面下で、しだいしだいに大きくなっていって、
ついに水面化に隠しきれなくなって、
水面に現象となって顔をあらわしたのが
その「一言」ではなかったか。

だったら、そのおおもとの「分岐点」はどこか?

人と人が出逢ったり、
別れたり、
成功したり、
転落したり、
人生は不思議だ。

その理不尽さに、
「あのとき、あっちを選んでいればよかった」
「あのとき、こっちを選んでいてよかった」と、
私は、原因を目に見える現象に求めてきた。

だけど、最近はそうでなく、
よくもわるくも、
自分をこの道に入り込ませた決定的な原因は、
もっと見えないところで起こっているんじゃないか、
と思うようになってきた。

人は日々あたらしく生まれ変わっている。
たいていのことはやり直しがきく、と思う。

だけど、よくもわるくも、
それをいったん選んでしまったら二度と引き返せない、

「分岐点」

みたいなものがある、
と私は思う。

それにのったら、二度と、もとには、戻れない。

ところで、少し話は変わるが、仕事をしたりブログを書いたりしていて、未来のことに対して「正しい答え」を(意識無意識のうちに)要求する人ってけっこう多いのだなあ、と思うことがある。

でも、未来に対する「正しい答え」は、たぶんありえない。

もちろん、「様々な状況を考え合わせると、最も可能性が高いのはこうだろう」とシナリオを描くことはできる。しかし、そこには必ず「人間の意思」という不確定要素が影響する。外部環境の変化を知覚することや、タイミングはもちろん大切だが、意思と行動によって、未来は自分の手で変えることができる。未来の芽は、そこいらじゅうに溢れている。でも、その「すでに起こった未来」を、自分の中でどのように位置付けるのか、どういう世界観を描いていくのかは、自分次第だ。

私は、どういう未来を実現したいのだろうか。きっとこれからも永遠の課題であり続けるのだが、どうせなら、素敵な未来を描きたい。今はそう思う。


日本の携帯端末市場に起こりうるパラダイムシフト

前回のエントリが分かりづらかったらしく、大量に反論をいただいたので、改めて補足します。

実を言うと、私はセミナーに参加する以前から、携帯に限らず、日本のハイテク・家電メーカーが今後も日本国内市場だけを見ていたらグローバルな競争の波・潮目の変化に乗り切れなくなるだろうという仮説を持っていました。

その理由は、「市場のローエンド顧客をターゲットにしている企業が、製品を改良して徐々にハイエンドへシフトしていく」よりも「ハイエンド顧客をターゲットにしている企業がローエンドへシフトする」ほうが遥かに難しいからです。

クリステンセンの「イノベーションのジレンマ」「イノベーションへの解」の理論から言うと、

  • 漸次的な技術改良は必ず進む。企業は、より良い製品を提供し、よりハイエンドの顧客を獲得しようとする
  • 製品改良のスピードは、時として、顧客のニーズの変化のスピードを超えることがある。製品が改良されすぎると、市場に「従来製品に満足していない顧客」「満足度過剰の顧客」が現れる
  • 従来製品のスペックが過剰になると、当初「こんなの使えない」「おもちゃじゃないか」と言われていた技術や製品が、「従来製品に満足していない顧客」を捉えることがある。この顧客は通常、市場のローエンドに現れるが、従来製品のリーダー企業にとっては「小さすぎるマーケット」「存在しないマーケット」のため、対応できない。
  • 当初はニッチしか捉えられないと考えられていた新しい製品は、性能が改善されて、徐々にハイエンドの顧客にも受け入れられるようになっていく。その過程で、従来の業界バリューチェーンは破壊される。

コンピューターのアーキテクチャーも、かつては部品間のインターフェースや機能が相互依存的で、1社が全体を開発した時代がありました。しかし80年代前後にパラダイムシフトが起こり、OSはMicrosoft, マイクロプロセッサはIntel、と独立した部品の組み合わせから成り立つ「モジュラー」型に変わり、同時にそれまでのリーダー企業だったDECやIBMの地位が下がりました。当初は「使えない」「おもちゃ」と言われていたPCが、今日ではハイテク市場で大きな地位を占めるようになったのは、言うまでもありません。

「それはユーザにとっていいことなの?」というfundiverさんのコメントは全く正しいと思います。携帯電話の市場が成長・成熟してくる過程で、コンピューター業界にPCが起こしたのと同じパラダイムシフトが近い将来起こるのではないか?と予想しています。私の想定したシナリオは、

  • 携帯端末の高度化が進んだ挙句、顧客がその性能改善に対して価値を見出さなくなる。「こんな機能、誰が使うの?」「ごてごてしすぎて使いこなせない」
  • ローエンドの顧客に低コストな製品を提供するメーカーが現れる(国内からではなく海外からかもしれない)当初それはハイエンドの顧客に「こんな携帯、おもちゃじゃないか」「使えない」といわれる。
  • 低コスト製品提供メーカーが性能を改善する。徐々にハイエンドの顧客を掴むようになる。
  • 低コスト製品提供メーカーがローエンド⇒ハイエンドへシフトする過程のどこかで、端末のアーキテクチャーがモジュール化される。部品ごとに特化したメーカーが出てくる(OS、プロセッサ、液晶、etc)
  • 低コスト製品提供メーカーのハイエンド進出により、高度にカスタマイズされた部品を1機種ごとに全て設計、製造している現在ハイエンドの垂直統合型メーカーのプレゼンスは相対的に低下する

現に(少なくともアメリカでは)携帯電話とPDAは融合の傾向にあり、Windows CEやシンビアンといった「OSの標準化」が起こりつつあります。

ただ、日本の従来キャリアには自分が業界全体のイノベーションをリードしてきたという自負もあるでしょうし、メーカーは端末を提供するのみならず、通信市場全体にハードウェアやソフトウェアを提供しており、非常に垂直統合が進んだ市場で、キャリアとメーカーの繋がりが強いので、誰が最初に変化の口火を切るかが今までは分かりませんでした。ソフトバンクは、えいめさんがご指摘されたとおり、外国端末を持ってこようと思えば持ってこれるポジションにいます。

このような市場のパラダイムシフトに対してどうするべきかというのは、あくまで当事者が決めることですので、私も「正しい答え」など持っていません。ただ一ついえるのは、グローバル化の流れは、携帯端末に限らず、今後加速することはあっても後戻りはない(一時的・局所的なバックラッシュはあるでしょうが)と思います。

繰り返しになりますが、韓国には、日本と並ぶ世界最先端の市場で戦いながら、同時にグローバルに対して億を越える端末を売っているメーカーが存在するわけですから、彼らの戦略・オペレーションを分析してみたら大変面白いと思います。


東京の桜

東京の春は、何と言っても桜。

こないだの週末は満開でした。ぱあっと咲いて、あっという間に散っていくのはなんだか少し切ないけれど、ハラハラと舞う桜の花びらは、これはこれでまた風情があってよいものです。うちの近所は桜の木が多いので、特にこの季節は「ここに住んでて良かったなあ」と思います。

写真センスがない自分が悲しいけど、まだ桜を見ていない人のために。


「ソフトバンク、ボーダフォン買収で幕が上がる120兆円情報通信産業の波乱の行方」に参加して(2)

※このエントリは「ソフトバンク、ボーダフォン買収で幕が上がる120兆円情報通信産業の波乱の行方」に参加しての続きになります。

日本の携帯電話端末がなぜグローバルな競争には乗り遅れているのかについて、かなり前に自分のブログで書いたことがある。では、ソフトバンクの市場参入によって「箱庭」市場に変化は起きるのだろうか?ソフトバンクは今後、海外メーカーから安い端末を調達してコスト削減を仕掛けてくるのではないか?という質問が会場から投げかけられた。

このシナリオはありうる、と私個人は思った。もちろん、一気に日本市場全体がそうなるとは思わないし、「当然ソフトバンクは従来の付き合いのある メーカーにも良い顔をするだろうが、その裏では少しずつ着々と海外メーカーの端末を買うのでは?」というパネリストの意見を支持したい。

以下は、気になったので調べた世界の携帯電話端末市場に関する情報とそれに基づく考察である。

世界の携帯電話市場に関するGartnerの調査によると、2005年の出荷台数は約8.2億台とされている。IDCの調査によると日本国内の出荷台数は約4,500万台とのことなので、日本は世界の携帯電話端末市場の5%を占めるに過ぎない(但し、これは台数ベースのシェアなので、単価の高そうな日本のシェアは金額ベースにすればもっと上がると思われる)

メーカー別で見ると、Panasonic, NEC, Sharpがほぼ横1直線(16-17%)Toshibaが12.5%とのことなので、トップ3社がそれぞれ700~750万台前後、Toshibaが550万台前後となる。

世界に目を向けて見ると、グローバルトップのNokiaは2億6,500万台(シェア32.5%)2位のMotorolaが1億4,500万台(17.7%)3位のSamsungは1億台強(12.7%)4位がLGで5,500万台(6.7%)となっている。日本勢はと言えば、辛うじてSony Ericssonが5位。5,200万台弱を売上げ、6.3%のシェアとなっている。

韓国の人口は日本のザックリ1/2なので、韓国市場全体のパイを2,300万台前後と想定し、Samsungが全体の2/3、LGが1/3のシェアを有すると仮定しても、Samsungが韓国国内で売れる台数は1,500万台、LGが770万台前後となる。つまり、Samsungが売る携帯電話の台数のうち85%は海外市場の可能性がある。

振り返って、日本メーカーの海外での実績はどうだろうか。とりあえずアメリカについて調べてみたら、ワイヤレスキャリアやBest Buy(大手家電量販店)のWebページに載っていた日本メーカーはSanyoだけだった。

日本の携帯電話は確かにすごいと思う。機能も豊富だしデザインは洗練されているし、カメラも液晶も性能が良い。製品としての完成度が高い。しかしグローバルな競争という観点からみれば、日本国内市場は「箱庭」化(あるいは「ガラパゴス諸島化」と言っても良い)しているため、コスト競争力に課題があると指摘されている(安藤晴彦・元橋一之「日本経済 競争力の構想」より)私自身、アメリカにいたときはSamsungの携帯を使っていた。スペックと値段で比較したらコストパフォーマンスが良かったからだ。

日本の消費者は非常に品質・ブランドに敏感で購買力が高いとよく言われる。外国と日本とではライフスタイルも違う。なので、国内と国外の需要の差が大きすぎて、海外市場で戦えないのは携帯電話端末だけの課題ではない。携帯電話は、通信の規格も含めたアーキテクチャー全体が高度に統合化されていて相互依存している。しかもキャリアごとにスペックが違う等、日本市場特有の背景があるので携帯電話端末のメーカーを責めるつもりはない。しかも、携帯電話キャリア3社の売上だけで、年間10兆円には届かないもののそれに迫る規模があることを考えると「日本国内だけでも十分じゃん」というのも分からないでもない。分からないでもないのだが、ただ、日本人として少し残念に思う。

…本当は、下位レイヤ(携帯電話端末)だけでなく上位レイヤ(コンテンツ、サービス)についてもまとめようと思ったが、あまり考えがスッキリまとまらない&既に頭一杯になったのでこの辺で。


「ソフトバンク、ボーダフォン買収で幕が上がる120兆円情報通信産業の波乱の行方」に参加して

グロービス×Emerging Technology研究会開催の「ソフトバンク、ボーダフォン買収で幕が上がる120兆円情報通信産業の波乱の行方」に参加してきました。議事メモ…というより、疑問が色々出てきたので、話を聞いて自分が考えたことを書きます。

なお、このエントリにおける「Vodafone」とは、特に「グローバルの」と明記しない限り、日本の「ボーダフォン株式会社」のこととご理解ください。また、分析のソースはセミナーで語られた内容と公開情報であり、ここに書かれているのは全て私の個人的な考察・見解であることを予めお断りしておきます。

●買収額の妥当性

Vodafoneの決算説明資料(PDF)にある情報から同社の状況を見て行くと、2004年度の売上高は、1兆4,700億円だった。顧客1人当たりの平均売上高(通信業界では一般にAverage Revenue Per User, 略してARPUと呼ぶ)は6,150円。前年比8.6%減であり、2000-2001年の7,900円をピークに緩やかに減少している。また、ARPUに占めるデータ通信の割合は20%強で、2002年以降はほぼ横ばいとなっている。営業利益も前年比14.0%減。純増シェアは2004年度中にマイナスに転じた。また累計市場シェアも2003年の18.6%をピークに17.3%まで下がっている。四半期のChurn Rateは2%前後を維持している。

詳細な分析を行なったわけではないし、私はM&Aの相場について詳しくないので、他のディールと比べてどうかコメントできないが、Vodafoneのほぼ1年分の売上高に相当する1兆7,500億円という買収額は、毎月100億円近くのキャッシュインをもたらしてくれる1,500万顧客というCash cowの代金としては「そんなに高くないんじゃないの?」というのが素朴な感想である。

●メリットとリスク

垂直統合でYahoo! Japanのポータルやサービスをテコにした顧客の囲い込み・差別化ができるという話もあるが、瞬時に結果が見えているのは、何と言っても毎月100億円近くのキャッシュが入ることだろう。

ソフトバンクグループの経営状況をアニュアルレポート2005(PDF)から見て行くと、売上高は連結で8,370億円(2005年3月期)そのうち最大の割合を占めているのがイーコマース事業(29.2%、2,549億円)だが、これは主にYahoo!BB関連の販売が占めているようだ。次がブロードバンド事業(23.6%、2,053億円)そして日本テレコムの固定通信事業(19.1%、1,668億円)と続く。ここまでを大きく「通信」と括ってしまうと、ソフトバンクの売上高の71.9%が通信事業なのである。ブランドイメージとして大きく貢献しているYahoo!は11.8%、1,024億円であることを考えると、ソフトバンクは今や立派な通信事業者と言ってよい。しかもVodafoneを買収することで一気に倍以上の規模に成長することができる。

Vodafoneの設備は古いとか年間の設備投資額が1,667億円も掛かるとか、リアルアセットを背負うことの負の側面もないわけではない。しかし「ネットで儲かるのは当面は広告」と考えると、当面のキャッシュインとユーザー数を増やして広告媒体としての価値・魅力を増すことができるメリットが今のところ一番大きいのではないか。(しかし、「何だかんだ言って、とりあえず毎月100億円がチャリンチャリンと入ってくるのって嬉しいよね」という論点については、なぜかセミナーでは誰も触れなかった。あまりに当たり前なので誰も言わなかったのかもしれない)

買収手段とその妥当性あるいは問題点については、私は詳しくないのでコメントしない。

●ソフトバンクあるいはYahoo!の参入によって通信業界はどう変わるか

「携帯電話事業に関しては、すぐにはあんまり変わらないのではないか」と思った。

今後始まる番号ポータビリティは果たしてVodafone(あるいはソフトバンク)にとって追い風となるだろうか?

一足先にこの制度を導入した(2003年11月だったはず)アメリカの例を見てみると、おそらくアメリカで最もシェアが高いVerizon Wirelessの月次Churn Rateは、2005年に「業界で最も少ない」1.3%となっている。 他キャリアでも2%前後らしいのでこれを四半期に換算すると、番号ポータビリティが導入されるとChurn Rateは2~3倍になると推定できる。つまり、番号ポータビリティ導入後、Vodafoneから他キャリアへ乗り換える顧客は、四半期毎に30万人から60万~90万人に増えることになる。月次売上高に直すと、100億円中4,000万~6,000万円の損失(番ポ前に比べて2,000万~4,000万円損失が増える)というところだろうか。。。しかし実際は、他キャリアからの乗り換えで流入する顧客もいるはずなので、単純に顧客数が減ることはないだろう。また、Vodafoneの新規顧客獲得費用は1人当たり38,300円前後とのことだが、もう少し上がる可能性はあると思う。

消費者の価格敏感度やサービス品質の差を詳細に見たわけではないし、アメリカのChurn Rateは元から日本より高かったはずなので、一気に結論付けるのは乱暴かもしれないが、「番号ポータビリティがあってもなくても意外と消費者は変わらない」のがアメリカの現実だったように思う。

それから、「そもそも周波数帯というリソースを国が免許という形でコントロールするスキームの是非」を問う意見も、あるパネリストからは出たが、他のパネリストからあったように「ソフトバンクも、今は現状のスキームに従った方が良いと判断したのでは」という指摘に同意したい。(そう判断した根拠・理由は色々あるかと思う)

「ハードウェア(携帯端末)からサービスまで含めた形での垂直統合が今後どのように展開するか」については、ここまでが長くなったので、次のエントリとしたい。