2つの150万都市(ニューヨークと札幌)
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北海道を活性化するのは農業クラスターか?

以下は、公開されているデータ・情報にのみ基づいた分析で、かつ私は全く農業経験がありません。間違いや見落としている点などあれば、ご指摘ください。

●北海道経済はやはり活性化していない

<GDPから見る>

<個人の所得、消費から見る>

  • 2003年の北海道の勤労者世帯の1世帯当たりの実収入(451,800円)は、全国平均(524,500円)の86%に留まっている。全国では、沖縄県、大阪府に次いで下から3番目(社会生活統計指標
  • 1世帯当たりの1ヶ月の支出金額が262,281円と、全国平均の309,776円の84%に留まっている。また、東北/関東/北陸/東海/近畿/中国/四国/九州・沖縄と区分された他の地域と比べて一番低い。
  • 2003年と2004年の家計消費状況を比較すると、2004年は、全国平均の支出金額は上昇しているが、北海道は低下を続けており、景気回復は他地域に比べて遅れていると推察できる(家計消費状況調査、H16年度平均
  • 北海道は、個人預貯金残高が379.7万円と全国38位である。ちなみに全国1位は東京都で、734.3万円。北海道民は東京都民の51%の貯金しかない。

北海道の世帯所得・消費の平均値は、絶対額としては全国的にかなり低い水準(全国平均の8割強)にある。しかし、個人・家庭レベルでの感じ方には物価の影響があると考えられる。要は収入が低くても物価が安ければ実質的な経済格差はないので。物価の格差、それが個人・世帯に与える影響がどの程度かは気になる。

ちなみに、よく「北海道で働くのはラク」と言われる。主に東京との比較で、労働時間が短い、通勤時間が短い、だから給料が多少安くても生活はラクなのであると言われるが、少なくとも、生活時間を見た限り、他の都道府県に比べて、労働時間・通勤時間が短いというデータは見られなかった。

従って、現時点での仮説としては「北海道の世帯所得や消費は全国平均よりも低い水準にある」「それは労働時間の長さには影響されていない」とする。

●北海道の農業の現状

  • 北海道は、就業者一人当たりの農業粗生産額(717.3万円。全国平均は245.3万円)と耕地面積(176,188.3平方メートル/1戸。全国平均は15,886.3平方メートル)で全国トップ(統計でみる都道府県のすがた 2005
  • 土地生産性(1ヘクタール当たりの金額)は最低。北海道はヘクタール当たり89.7万円、全国平均の189.8万円の半分以下である(同上)

また、「農林漁業政策金融のあるべき姿に関する北海道有識者の会資料」によると、

  • 農家戸数は大幅に減少(H11年 73,630戸→H16年 65,590戸)
  • 高齢化の進展(就業人口における65歳以上の割合:H11年 30.1%→32.3%)
  • 後継者のいない農家が多い(15歳以上の同居農業後継者がいない販売農家 H16年 69.6%)
  • 畑作経営は収益は安定している(農業所得 H11年 7,707,000円→H16年 10,048,000円)
  • 酪農経営は規模が急速に拡大している(入用牛飼養戸数 H11年 10,200戸→H16年 9,30戸、一戸当たり飼養頭数 H11年 85.3頭→H16年 96頭)

ここまでのデータから推察すると、

  • 個人・世帯レベルでは、北海道の農業はそれなりに魅力ある産業なのでは?
  • 北海道の農業は原料供給に留まっており、製造~流通も含めたバリューチェーンとしての広がりがないのでは?(だから農業以外の勤労者世帯の所得が低い)

●乳業の規模とプレイヤー

次いで、地域や企業というレベルで北海道の農業、そして乳業をみていきたい。

  • 食品産業は約30兆円、うち乳業は1割(2兆5,000億円)(明治乳業ホームページより)
  • 平成16年度の全国の生乳生産は8,333,311トン。うち、半分以上(4,955,729トン)は牛乳として消費された(農林水産省 牛乳乳製品統計
  • 全国の生乳生産700,377トンのうち北海道は4割以上を占める(314,425トン)。但しそのうち1割程度(28,849トン)は、生乳のまま道外に出荷されている(同上)
  • 日本のチーズ消費量・市場は成長しており、20年間で約6倍になった。H12年度の日本のチーズ消費量は、259,576トン(十勝毎日新聞社農林水産省 チーズ需給表
  • H16年度、日本のチーズ製造工場数は全国で126箇所、北海道は51箇所。但し、生産量でみると、全国119,500トンのうち、北海道のシェアは1割程度しかない(農林水産省牛乳乳製品統計
  • 乳業会社は日本に146社あり、うち飲料牛乳に占める大手3社(明治乳業、森永乳業、雪印乳業)のシェアが57.1%(畜産情報ネットワーク調べ

まとめると、

  • チーズに対する日本の消費者のニーズは高まっている。
  • 国内産チーズは、消費者のニーズをとらえきれていない。
  • 北海道は生乳の生産では全国トップだが、1割近くをそのまま輸出しており、加工産業が十分に発達していない。
  • 北海道のチーズ製造は、小規模事業者が多い(工場数の割に生産量が少ないため)

乳業の大手は、トップが明治乳業(連結売上高は7,200億円、単独5,000億円)、次いで森永乳業、そして雪印乳業。雪印乳業の売上高は、2002年まで1兆円規模と、市場シェア5割近くを占める巨大企業だったが、2003年で7,200億、2004年は3,200億と、ここ2年程度で売上を急激に落としている(雪印乳業のアニュアルレポートより)

乳製品では「北海道」をブランド名・商品名に冠したものが多いが、メジャー3社はいずれも東京本社である。(工場は北海道にもあるらしいが)

北海道の乳業会社で最も大きいのは、よつ葉乳業(売上高1,000億円規模)だと思われる。

●感想

食品産業は、「CMなど消費者に対する露出度と比較すると規模が小さい会社が多い」というイメージがあったが、意外と結構大きい会社があるんだな、というのと、農業は結構良い収入になるんだな、と思った。

輸入チーズがそれだけ売れているなら、国産品が盛り返す余地はまだまだあるし、日本人のチーズ消費量が欧米に比べて少ないことを考えると、成長 の余地は大きいのではないか。チーズ以外でも、高付加価値牛乳(明治「おいしい牛乳」は年商400億円のブランド)等、ポテンシャルを感じた。

  • 大学等で先進的な乳製品の研究・教育を行なうようになり、
  • VCの投資を受けたベンチャーがスピンアウトし、
  • 工場が持てない小規模酪農家は、チーズ製造を請負う専門企業に牛乳を持ち込んで製造委託したり(※ハイテクのOEM/EMSだけでなく、カリフォルニアワインの名産地ナパ・バレーには、これと全く同じコンセプトで、ワインの製造だけを専門に請負う工場があるそうだ)
  • 野菜や牛乳を活かしたおいしい料理を提供するレストランが立ち並ぶリゾート地として、観光資源としても活用する(ナパ・バレーは、これにも成功している)

「ここまで来れば、これはもう立派なクラスターではないか!」と盛り上がる自分と、「いやいや、そうは言っても、簡単に出来るようなものではないから」と盛り上がる自分を諫める自分がいるが、次回は是非、

  • 食品関連で発達したクラスター(ブルゴーニュとかナパとか?)の成功の秘訣

について調査・分析してみようと思う。(たぶん次回へ続く。)

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