品質崩壊
At Any Cost

Built To Last

題名は知っているし、聞きかじって内容も何となく知っているが、実は読んだことがない本という感じでしたが、遂にNY旅行帰りに読みました(飛行機の移動が長く時間があったので、空港の本屋で見つけて思わず購入)。BusinessWeekのビジネス本ベストセラーリストに6年連続ランクインしたそうです。

Built to Last: Successful Habits of Visionary Companies (Harper Business Essentials)
0060516402 James C. Collins

Harperbusiness  2002-08-20
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この本がユニークだな、と思ったのは、

  • ビジョナリーな会社を選ぶのに、Fortune 500とInc 500から、製造業/サービス業/公開/非公開などの偏りがでないようにCEOを700人サンプリングして、その人達に「ビジョナリーだと思う会社を5つ挙げてください」とアンケートを取ったところ(調査方法)
  • 単にビジョナリーな会社18社(金メダリスト)を調べるだけでなく、同時代に設立され、当時は同じような事業内容だった会社(銀・銅メダリスト)との比較を行なったところ
  • 会社の歴史全部を振り返ったところ(In Search of Excellence との大きな違いでもある)

ビジョナリー18社(全てが1950年以前に設立された会社。つまり、CEOの世代交代が行なわれており、既に創業者の代ではなくなっている)を観察した結果は色々と述べられていますが、私の印象に残った点は、

  • 創業当時から明確な市場を意識した製品開発を行なっていたわけではない
  • CEOは必ずしもカリスマ的なリーダーシップを発揮していたわけではない
  • CEOは殆どがHome-grownであり、外部から雇い入れたわけではない
  • カルト的な企業文化を有しており、全ての人に対して「Best Place to Work」というわけではない

とりわけ、社長は生え抜きだとか、社員が自分達の会社に誇りを持ち(IBM社員はIBMer, Nordstrom社員はNordieと自らを称す)、朝会では社歌を歌って気合を入れる、等という記述に、実は日本企業ってけっこうビジョナリーなんじゃないの?と思った日系企業人は私だけではないとみた。日本でこの本が流行った理由も納得です。巻末の膨大な分析も面白かったですし、一気に読ませる迫力はあります。

ただ、残念なのは、じゃあどうすればビジョナリーな会社になれるのか、ビジョナリーな会社を作れるのか、は書かれていないことです。

ビジョナリーな会社の経営者はTime tellerではなくClock builderだった、という結論は、表現として非常に分かりやすいですし、自分の時代を超えても組織が残り続け、世の中に良い価値を付けて行ったら素晴らしい、というメッセージには共感します。ただ、その結論が、組織や創業者の具体的な振舞いやマネジメントを考察した結果導き出されたもの、というよりは、その組織が世代交代しても元気だから、「ゆえに創業者はClock builderだった」と結論付けているように(少なくとも私は)感じました。もしかしたら私の読み方が浅いのかもしれませんが。

・・・とまあ、期待していた分、やや辛口評価になりましたが、この本の価値は、ビジョナリーな会社というものを定義付け、世の中に良い意義を付けて行く会社こそが生き残って行くんだ、というメッセージを提示したことで人々に夢と希望を与えた というところにあるのだろうと思います。あと、タイトルやClock builder等の表現が非常にキャッチーで分かりやすいので、色んなところで使われているという面で「ハイインパクト」な本である、という言い方もできます。素晴らしいマーケティングセンスです。(誉め言葉)

そういう意味で、多くの人に支持される理由は良く分かりますので、続編のGood to Greatにぜひ期待したいと思います。

Good to Great: Why Some Companies Make the Leap... and Other's Don't
0066620996 James C. Collins

Harperbusiness  2001-10-16
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それとBuilt to Lastほど一般的な人気はないと思うのですが、同様に会社の歴史を紐解いて、組織マネジメントの歴史、とりわけ「事業部制」という新しい組織がなぜ生まれたのかを分析している経営書、という点で、「組織は戦略に従う」にも期待しています。こちらはかなり古典ですし、今日的な課題に即しているかどうかは分かりませんが。

組織は戦略に従う
4478340234 アルフレッド・D・チャンドラーJr. 有賀 裕子

ダイヤモンド社  2004-06-11
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Comments

岩崎宏介

今ちょうど戦略論の授業でこの本を読んでいます。ご批判、いろいろ勉強になりました。BHAGs(Big Hairty Audacious Goals。「ビーハグス」と読みます)というのも、この本のキーワードの一つですが、これもアメリカ人に受けはいいようです。

Tomomi

岩崎さん、こんばんは
メルアドから推察するにコロンビアのMBAですか?!すごいですね~~~
その後授業でどんなディスカッションがなされたのかが気になります。
ぜひ今度教えてくださいね。

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