SMB Buying Behavior and Channel Preference
Can Anyone Save H-P?

The Decline and Fall of The Bell Empire

AT&Tは、1875年、電話を発明したAlexander Graham Bellによって創業されました。

アメリカの、そして世界の電話の歴史と共に歩んできた会社であり、かつては米国最大の雇用者(Employer)として「Ma Bell (Bellお母さん)」という愛称で親しまれました。そのAT&Tが、いわば子供であるSBCに$16Billionで買収されることになった、というニュースは大きな話題になりましたし、少なからず同業者の私としては、色々考えさせられました。

面白い記事がありましたので紹介します。

WSJ.com - AT&T Inventions Fueled Tech Boom, And Its Own Fall
http://online.wsj.com/article_print/0,,SB110729925236542968,00.html

1947年12月に、William ShockleyというAT&Tラボの研究者とそのチームによって、ひとつの技術が産声を上げました。

このときに生まれたトランジスタは、通信の高速化に大いに貢献し、1956年にAT&Tラボにノーベル賞という栄誉をもたらしましたが、AT&Tが長くゆるやかな滅亡への道を歩み始めていたことの一つの象徴とも言えるかもしれません。

Dr. Shockleyは二人の部下、Walter Brattain and John Bardeenにプロジェクトを任せたものの、彼らの成果を見てその凄さに気づいて、トランジスタの発明者としての栄誉を独り占めできなかったことが惜しくなったのか、自分一人で技術の改良に取組み、1 年後に自分単独の名義で特許を申請します。Dr. Shockleyのスタンドプレイは、チーム内の反目を生みました。二人の部下は、後にそれぞれ大学教授になりましたが、Dr. Shockleyはカリフォルニアに引越してスタンフォード大学の近くでコンサルティング会社を始めます。しかし、Dr. Shockleyのあまりの気難しさに付いていけなかった部下8人は、1年程度でスピンアウトして自分達の会社を始めました。その会社が、あのフェアチャイルドだったのでした。

シリコンバレーのメジャーな半導体企業のルーツを遡ると、その大半がフェアチャイル ドの系譜に繋がると言われるほどの名門企業が、AT&Tラボにおける技術者としての名誉を巡る醜い争いの落とし子として生まれたというのは、なんとも皮肉な運命(いや、それが歴史の必然か)だったとしか言えません。

人は誰でも、多かれ少なかれ、必ずどこかで「人に認めてもらいたい」欲というのを持っているものだと思います。それは人間としてごく自然な感情なので、否定する必要はありませんし、逆に、これを軽視すると大変なことになるんだなあと思うことが最近多かったのですが、それを改めて痛感させられた記事でした。(技術者のモチベーション、ビジネスパーソンのモチベーションについては、またいずれ機会を改めて書きたいと思います。)

その後も、AT&Tは、少しずつ大企業病に蝕まれていきます。衰亡には、おそらく、数多くの原因があったのだと思われますが、記事によると、電話事業を独占し単一企業としての存続を守る代償として、AT&Tラボは、その成果を公に安価に公開する義務を負っていたことも、その一つだったとされています。 独占であるがゆえ電話事業はあまりにProfitableで、自らの発明から利潤を追求しよう というモチベーションはAT&T内部には働きませんでした。

"It turns out that knowing a lot about computers was different than selling them," (元AT&Tラボの技術者)

しかし、AT&Tラボが生んだ数多くの技術―UNIX、携帯電話の基礎となったセルラー技術 、VoIPを可能にした音声圧縮技術―は、今日のハイテク・通信業界をリードする数多くの企業が発展する基となりました。IBM, GE, TI, そして当時は東京通信工業という名前だったSONY。

SBCとAT&Tの他にも、P&GがGilletteを、QwestがMCIをと、最近アメリカでは大型のM&Aのニュースが続きました。M&Aが増えると景気は良くなるし株価も上がるようです。業務基盤の拡大・経営の効率化といったプラスの側面が多い、と考えられているようです 。従って、少なくとも株式市場においては、会社が大きくなるのは良いことだと言えます。また、大企業には長期的な研究にもお金を掛ける余裕があります。仮に自社の利益にはならなかったからといって、即、その大企業がダメだというわけでなく、そこで生まれた技術が世の中の役に立っている場合、それはそれで一つの社会的使命を果たしているという面では存在意義があるのだと、私は思います。

"Yes, phone calls were very expensive and we got rid of a monopoly," says Mr. Riordan, the co-author of the transistor history. "But this was a company that literally dumped technology on our country. I don't think we'll see an organization with that kind of record ever again."

AT&Tの名前がビジネスの世界からいずれ消えたとしても、AT&Tラボがアメリカの競争力に大いに貢献し、イノベーションの担い手だった事実は消えることがないでしょう。

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