最近観て気に入った映画
February 28, 2005
それぞれの人に、それぞれ与えられた条件・環境があって、人によっては厳しかったりそうでもなかったりするし、自分一人の力で変えられるものとそうでないものがあるし、努力して報われることとそうでないことがあるし、人によっては意思の力や賢さも違うし、それぞれが与えられた制約の中でも精一杯生きるのが人間の性なのかなあ
というような、どの作品にも共通して流れるテーマがツボでした。(むしろ、私自身が最近そういう気持ちなのかも)
別に人生に対して諦めたとかそういうわけではないのですが、人間には、それぞれ、できることとできないことがあるというのはもうどうしようもない真実だし、本人がやりたくないんだったら、合理性を議論したり、怒ったり責めたりしてもしょうがないよなーと。
「ジョンQ」
妻はスーパーマーケットのパートタイマー、夫はメカニック。ボディビルと野球が大好きな可愛い息子が一人。ある日、最愛の息子が倒れ、心臓移植をしなければ生きられないと告げられる。費用は数万ドル。保険はきかない。夫と妻の年収はそれぞれ年1万ドル台。アメリカの「普通の人」はきっとこういう生活が普通なのだろうなあ、と感じた。子どもがいる人が観たらどういう感想なのか聞いてみたい。「誰かに選ばれたら、その人の期待に応えろ」と息子に語り掛ける主人公の台詞が印象に残った。アメリカは、豊かそうに見える反面、保険や年金等、ソーシャルセキュリティでは色々と問題もあるなあとも思った。
しかし、やはり医療関係者の熱意、人を救おうとする真摯な気持ちが描かれていたことには救われた気がする。
ジョンQ-最後の決断- デンゼル・ワシントン
ジェネオン エンタテインメント 2004-06-25
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「死ぬまでにしたい10のこと (My Life Without Me)」
これもやっぱり「普通の人」が主人公。DVD特典映像で、主演女優のインタビューが収録されていたが、「労働者をジョークにしていないところが気に入った。彼らはただお金がないというだけで、物事をきちんと考えているのだから」といった彼女の言葉に強く共感した。父は刑務所、10代で最初のボーイフレンドの子どもを妊娠してしまい結婚。母の家の庭のトレーラーで生活し、夫は日雇い労働者、自分は大学の清掃員。ある日、癌で余命はあと3ヶ月、と言われたら…。キャスティングや映像センスが素晴らしい。日本では「アルモドバル製作総指揮」といわれていたが、おそらくそれは単なるマーケティングで、間違いなく女性が作った映画だと思う。
主人公の決断・選択には、きっと賛否両論あると思う。愛する夫と子どもを残して先立たなければならなくなった時、自分は一体どうするだろう。同性として既婚者として、かなり色々考えさせられた。「死ぬまでにしたい10のこと」に、私は何を挙げるだろうか。
死ぬまでにしたい10のこと イザベル・コヘット サラ・ポーリー マーク・ラファロ
松竹 2004-04-24
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家族愛の映画。ラストは相当に切ない。勧善懲悪とか爆笑とかスッキリとか、そういうカタルシスを映画に求める人は観ない方がいいかも。逆に、傷付きながらも、立ち直っていなくても、人間は生きていかなければいけないんだね、という感じにはなれる。貧しさの中でも求め続けることを止めない女性をヒラリー・スワンクが熱演(ゴールデングローブ賞ならびにアカデミー賞で主演女優賞を受賞)。ボクサーとしての体作りやトレーニングはすさまじそうだし、殴られて顔ボコボコだし、きれい・可愛いだけの女優ではとてもできない役どころのお蔭で得をしている面はあると思うが、他に適任者が思い当たらないのも事実。イーストウッドやフリーマンと並んで迫力負けしない力量はさすが。
「天は二物を与えず」というが、イーストウッドのように二物・三物(監督・主演・音楽)を与えられた人がいるのだなあーと思ったり、逆にいえば、そこまで頑張ろうと思える対象、熱意を注げるものを彼は見つけたのだということが素晴らしいと思った。
ツチ族とフツ族という憎み合う民族の争いを超えて深く愛し合っている夫婦の姿が、民族同士の憎み合いと強烈なコントラストとなっており、声高に反戦を謳うわけでないのに、争いの無意味さを感じさせる。
内戦の混乱の中でホテルを運営し、多くの人を守った主人公ポール(実在の人物で、現在も存命)のリーダーシップには敬服するしかない。あの状況では、いつパニックに陥ってもおかしくないと思うのだが、ホテル内に秩序を維持していただけでも感嘆に値する。(UNの存在も大きかったと思うし、地元ギャングとの関係をキープし続けられた政治的手腕もすごい。そして最後はやっぱり世の中お金なのねとも思ったが)「シンドラーのリスト」や「キリング・フィールド」と同じようなカテゴリの映画と言えるが、殴られて泣き叫ぶ女性や子供、累々と連なる死体の山、といった映像を、ヘンにセンセーションに走ることなく淡々と続けているところがリアルで逆に怖かった。
今どきよくこんな映画をアメリカが作ったなーと思ったら、イギリス・サウスアフリカ合作だった。将来きっと名作と言われるようになるのではないかと思う。
極限状態に置かれた人間が、どこまで気高く思いやりを持って生きられるか、一人の人間がどこまで人に尽くせるか、その問いかけはとても重い。
Million Dollar BabyとHotel Rwanda 気になります。
日本ではまだ見れないのが残念。
映画化してくれるといいなぁ。
Posted by: yuka | March 12, 2005 at 09:56 AM
Yukaさんこんにちは。
Million Dollar Babyはもうすぐ日本でも公開がはじまるみたいですね。
Hotel Rwandaはミニシアターで単館上映かもしれません。
見て「楽しい」映画ではないかと思いますが、良い話なのでぜひ見てみてください。
Posted by: Tomomi | May 17, 2005 at 05:13 PM