The Decline and Fall of The Bell Empire
最近観て気に入った映画

Can Anyone Save H-P?

最初に、個人的な思い出から語ることをご容赦ください。

私がシリコンバレーに来て、一番最初に訪れたのはStanford大学でした。Stanfordに寄り添うように周りを取り囲んでいたのが、緑に溢れた、美しい広大な敷地を持つhpのキャンパスでした。

勿論、hpは日本でもかなりのプレゼンスを誇る一流IT企業の一つなのですが、Stanford大学の二人の卒業生・Bill Hewlett とDave Packardが最初の製品を組み立てたPalo Altoのガレージが「シリコンバレー発祥の地」とされているように、hpはシリコンバレーの「アイコン」、特別な存在なのだなあ、と痛感したことを覚えています。

経営改革のために、5年前に同社が初めて外部からヘッドハントしたCEO, Carly Fiorinaが2月9日に解任されました。

Can Anyone Save HP?
今週のBusinessWeekの特集では、hpが今日立たされている苦境、Fiorina6年間の苦闘の軌跡が描かれています。

hpの現状についてはつい先日、PC製造業のバリューチェーンの変化と海外アウトソーシングで書いたばかりで、BusinessWeekの記事にも取り立てて新しい情報はありませんが、ポイントを再掲すると、

  • ローエンドPCではDellにシェアを奪われ、サーバ市場ではIBMに勝てず、プリンタ事業以外は投資の価値無しとされている (現在hpの利益の3/4はImaging and Printing Suppliesから来ている)
  • 既に、PC新機種の1/4はEMSによって設計されており、大きな技術的イノベーションがCompetitive advantageでなくなりつつあること(それはつまり、エンジニアドリブンの文化を持つhpのR&Dの存在意義を問われる市場の変化とも言えるかも)

Fiorinaの野望は、hpを世界で最も幅広い製品を扱うTech companyにすることだった、というのが幾つかの記事・情報を繋ぎ合わせて伺えることです。Compaqのみならず、ソフトウェアの分野でも過去18ヶ月の間に6社を買収したり、"HP way"を翻して数万人をレイオフ、大物エグゼクティブ(prominent figures)を次々クビにするなど超アグレッシブなリーダーシップで建て直しを図ったものの、投資家を満足させられるような結果を出すことはできなかったようです。

彼女の性格的な短所・女性CEOにとっての教訓などでも触れられていましたが、やはりhpのように強い独特の文化を持った大企業を変革する上で、あまりにも周囲を敵に回しすぎたのは彼女にとって不幸だったのでは、と思いました。同時に、Fiorina Wayに反撥したhpのエグゼクティブ陣が一体何をどうしたかったのかは分かりませんが、hpが自己変革のキッカケを一つ失ったことは確かでしょう。

投資家は「hpは分割すべきだ」と言っているようです(HP may simply be trying to do too much. The giant lacks both the resources and management skills to compete with the best of the best in nearly every industry in tech)。

さて、一体、誰がhpを救うのか?

BusinessWeekの記事には、後任として、Michael Capellasを含む数人の名前が取り沙汰されていましたが、どんな凄腕を持ってしても、難事業 (It's a Herculean task)だろう、とのことです。誰もが連想するように、90年代にIBMを復活させたLouis V. Gerstner Jr.のことも引き合いに出されていました。

先日、とhpの話題で盛り上がったのですが、夫は「hpの商品ラインナップは競合のDellに比べると広すぎて効率が悪い(折角買収したCompaqのラインを統合できていない)」「hpはR&Dに定評があるが、90年代以降は殆どヒットとなる新商品を生み出せていない(更にハッキリ言えばHP-UNIX以降イノベーションが実っていない)のが課題ではないか」と言っていました。「世界一影響力のあるブランド」の座に3年ぶりに返り咲いたアップルにおいても、

アップルのR&Dって怪物みたいなんです。その怪物を、ジョブズ以前の社長は、誰もコントロールできていなかった。ジョブズはR&Dをしっかり掌握しましたね(梅田望夫さんによる、アップル木田泰夫さんのインタビューより)

エンジニアやR&Dをコントロールすることができるかどうか、それが次のhpのCEOの課題かもしれないなあ、等と思いました。

ちなみに、成功を謳歌していた90年代のhpの企業文化については、下の本が詳しく紹介しています。

日本的経営を忘れた日本企業へ―9万人のベンチャー企業。ヒューレット・パッカード
校条 浩 本荘 修二

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