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変貌しつつあるメディア(糸井重里氏インタビュー)

2004年、米国労働市場は復調

昨年2月には、2001年3月以来、景気は回復しているが職はなおも減り続けている、というセンセーショナルな発表があったりしましたが、

    The U.S. economy created 2.23 million jobs in 2004, the largest annual gain since 1999 and a number that nearly reverses the 2.4 million jobs lost from 2001 to 2003.

2004年、アメリカでは、2001~2003年の間に失われた雇用と、ほぼ同レベルの新規雇用が創出された、とのことです。もはや景気回復と雇用の増加というトラディショナルな経済モデルが通用しないのではないか、等と悲観的な声も聞かれましたが、まだまだ米国内での雇用創出力には力強いものがあるようです。

更に、1月10日付のWall Street Journalには、興味深いコメントが紹介されていました。

    American Economic Association in Philadelphia, Fed Vice Chairman Roger Ferguson noted that very few of the people who have propped out of the labor force in the past few years say they can't find work. Rather, most have done so to attend school, because they are ill or disabled, or because they retired. (中略) Mr. Ferguson also said the bulk of the jobs loss earlier this decade appears to have been caused by industrial restructuring, which will make it harder for those laid off to find new work. (中略) He said this could depress the supply of readily available workers since "workers displaced by restructuring must either search longer to find a job appropriate for their skills, or seek retaining."

過去数年間、労働市場からドロップアウトしたものの、仕事が見つけられなかった、という訴えは殆どなく、ドロップアウトした殆どの人が、学校に通ったり、病気などで働けない状態だったり、単純にリタイアしていた、とAmerican Economic AssociationのVice Chairmanによって指摘されています。

「なぁんだ~。そうならそうと、もう少し早く言ってくれれば良かったのに~」と思わず胸をなでおろしましたが、よく思うと、雇用が回復してからのこのコメントって、後出しじゃんけんのような気も。

但し、業界別で見ると明暗はあるようです。最も多くの雇用を創出したのはProfessional/business services (+546,000)。ヘルスケア、台風などの影響で特需を生んだ建設業界が続いているようです。逆に、非耐久消費財メーカーやテレコム、エンターテインメント業界では、2-3万の雇用が減っています。とりわけ、製造業では雇用の減少が止まらないようですが、産業構造自体が、だんだん第2次産業から第3次産業へシフトしているマクロなトレンドの現れと言えるのかもしれません。

    The manufacturing sector added 76,000 new jobs, although this gain hardly makes up for the 3.3 million jobs jost in this industry in 1998 to 2003.

以前、Forrester Researchによる調査結果―アメリカ国内で過去3年間(おそらく、雇用がマイナス成長に転じた、2001年から)失われた雇用270万のうち、 Offshoringによって失われたのは30万。生産性が1%あがると130万の雇用が失われる―をご紹介したこともありました。ベビーブーマー世代の引退で未曾有の熟練労働力不足に陥るのではないかという説もありましたし、でもその世代は元気だしアメリカには定年がないので、彼ら/彼女らがコントラクタとして働き続ければ、案外何とかなるんじゃないかという記事もありました。

労働者を巡る議論は今後も色々続くでしょうし、いずれにせよ、今日の企業は、1人の労働者の職業人人生全部をカバーするだけの寿命を持っていないと 考えたほうが確実です。私の祖母の口癖ですが、「どんな仕事に就いたとしても、一生に一度は良い時がある」―逆に言えば、どんな仕事にも必ず辛い時期はあるということですから、辛い時期をどのように過ごすのかに、その人の個性が出てくるのかもしれません。

これからも、今の自分を信頼し期待してくれる人を大切に、私にできることを精一杯やらせていただくだけですが、その中で、私が大切に思えるもの・信じるところに誠実であり続けたい、と思う年始でした。

 

Comments

SW

こういう報道もありましたね。ちょっと政治的な空気を感じます(しかも二つ以上の意図がありそうな)。

対中貿易赤字:中国から輸入増 米で雇用150万人分喪失
http://www.mainichi-msn.co.jp/keizai/wadai/news/20050113k0000m020020000c.html

Tomomi

SWさん、
関連記事のご紹介どうもありがとうございます。

14年間で150万という数字は、それほどビックリするようなものではない(それなりに妥当性がある)かもしれないですね。以前ご紹介したBusinessWeekの記事でも引用されていたForrester Researchの試算では、直近3年間でOffshoringによって米国内から失われた雇用は30万ということでしたから。それから、U.S Department of Laborによると現在のアメリカの失業者数は800万程度だそうです。

USCCのレポートは50ページ以上あるのでまだ読んでいませんが、試算は、製造業でのみ行なわれているそうです。この14年間で、製造業でトータルどれくらいの雇用が失われたのか、そして150万という数字が失われた雇用の何%なのか、Offshoringによって製造コストや商品価格はどう変化し、企業や消費者がどういうベネフィットを得たかなど、検証してみないとまだこの数字については何とも言えませんね。更に言えば、アメリカの産業構造自体がサービス業へシフトしているでしょうし。ただ、政治的意図でこういう報道がなされているのだとすれば、今後、雇用政策や対中国外交政策などにどういう影響が出てくるかは要チェックかも。

※米中経済安保調査委員会が発表したというレポートですが、原文はここにありました。

U.S.-China Economic and Security Review Commission
http://www.uscc.gov/researchpapers/2005/050107_epi_wp_rscott.pdf

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