川上弘美「センセイの鞄」
Is An MBA Worth It?

挑戦者の背中 (SVJEN第5回起業家トーク)

※11月1日追記:起業家トークセッションの公式レポートが公開されました。
http://www.svjen.org/blog/archives/000004.html

KeyEye Communications, Inc. のCo-founder & CTO, 鷹取洋さんに関する日本語の文献は、これまで全くなかったのですが、その略歴をご紹介すると、

日本の大手企業の中央研究所から、カナダ留学を機に、創業間もないアメリカのベンチャー企業Level One Communicationsへ転職。2-30人のまさしくスタートアップの頃から、IPOを経て、衰退期に差しかかり、Intelに買収されるまでの約10年間をLevel Oneで過ごされ、スタートアップの興亡 を目の当たりにされます。買収先のIntelではFellowのポジションに就任され、エンジニアの頂点を極め ながらも、自らの得意とする技術で理論限界に挑戦し、DSL分野で世界最速のチップを作る夢をかなえるため、Level One時代の同僚とKeyEyeを創業されました。しかし、その起業も、当初は苦難の連続で、創業者達は完全無給、従業員もHalf-payでの船出。1年足らずで 資金ショートによる操業停止という憂き目を見ながらも、復活を遂げ、来年の製品出荷に向けて現在製品開発中。

取得された数々の特許や、ANSIやIEEEといった標準化団体でのご貢献など、エンジニアとしての素晴らしい経歴は勿論、このようなドラマチックな生き方を誰もができるわけではないでしょうが、エンジニアとしての一つの生き方(ロールモデル) を提示してくれたのではないかと思います。

今回の起業家トークの鷹取さんのお話では、数多くの言葉が、働く上でのヒントとして、私の中に残りました。


  • 「生涯、一エンジニアとして生きたい」「理論限界値に自分の技術で挑戦したい」という、一つのものに邁進するひたむきさ、
  • 「ダメだったときのことは考えもしませんでした」「何とかなるさ」という楽観主義、
  • 「なぜか私の転機はいつも逆風の中のチャレンジでした」「もっと知っていれば、挑戦していなかったかもしれない、ということはたくさんあります」というリスクテイカーの姿勢、

何より「まだ成功したわけではないので、秘訣はありません」と謙虚に語られる鷹取さんご自身の、道の途中にいる人の「挑戦者の背中」 そして温和で静かな物腰の奥に秘められた熱い思いに、感銘を受けました。何かを知っているから成功するとは限らないし、むしろ後先考えずに果敢に飛び込んでみて、あとはとにかくやり抜く、execution が大事だ、という勇気の大切さを教えていただきました。

同時に、自分自身を世の中でどのように活かしていくべきなのか、自分のポジショニングについて、またしても考えさせられました。

鷹取さんのメンタリティからのみならず、その「会社の歩き方」からも、シリコンバレーモデルの特徴について考えたこともありますが、機会を改めてまたいずれ。

以下は個人的な話ですが、今回の起業家トークは、私自身にとって一つの転機になったと思います。

実は、鷹取さんをSVJENで最初に見つけ出し、突撃電話インタビューを敢行し、そのお話に感動してスピーカーに推薦したのは、私でした。

当時の興奮は、この辺りのエントリからも伺えます。また、私の最近のエントリで割と評判が良かった、成功する人のマインドセットとは というエントリは、鷹取さんにインスパイアされてまとめたものです。(勿論、これまでSVJEN等でご一緒させていただいた、他の起業家の方々に対して普段から感じていたことが大半なのですが、書き上げるモチベーションになった、という意味)

私がボランティアをやっているのは、やはり、人との出会いに喜びを感じるからですが、とりわけ、こうして 自分の力で探し出して自ら求めて行った出会いで、素晴らしい話が聞けて、その感動を多くの人と分かち合えることを、とても幸せ に思いました。

そういうわけで、これまで関わっていたイベントが、どちらかと言うと、他の人によって決められた路線を遂行するための「お手伝い」だったのに比べて(それはそれで、得るものは色々ありましたが、)今回は、自分の思いを人に問うていくものだった(と、自分では思っていた)のに、自分自身は編集長としての役割に追われ、イベントにはそれほどコミットできなかったこともあって、自分はボランティアとして何をすべきなのか、何ができるのか、限られた時間の中でなすべきことについて色々考えさせられました。こんなに参加者からのフィードバックが気になったイベントも、初めてでした。

しかし、イザ蓋を開けてみたら、スタッフの方々の素晴らしいチームワークとご協力によって、過去最高の動員数を達成。参加者からのフィードバックも非常に好評でしたし(他の日本人起業家の方々からも「勉強になった」「身につまされた」という感想を頂いたり、起業家同士の苦労話にも花が咲いていた)、スピーカーの鷹取さんからも「お引き受けして良かった」と言っていただいたのが、何より良かったです。

鷹取さんとKeyEyeの今後益々のご発展・ご活躍を心よりお祈りいたします。

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