Silicon Valley Player (SVJEN第4回起業家トーク)
Appleの描く世界観

シリコンバレー・エグゼクティブの給料事情と日本のコーポレートガバナンス

2003年、シリコンバレーで最も高給取りだったのは誰か? (San Jose Mercury)

なんで先月の記事なのにわざわざリンクを貼ったかというと、


  1. 2002年度の記事にもチェックを入れていたため。

    もともとBlogは自分の備忘録なので、定点観測的に見たいデータなので残しておくことにした。ちなみに、2002年の調査については、Silicon Valley's highest-paid bosses というエントリで取り上げています。
  2. 昨年のデータを見た時 コーポレートガバナンスについて自分なりに考えた のだが、あの頃の疑問に対する一つの答えとなりそうな本に出会えたため。

    伊藤秀史編著「日本企業 変革期の選択」は、本Blogではお馴染み(?)の 黄昏さん のお勧め。

…マイペースですいません。

さて、気を取り直して、記事のポイントだけメモしておくと、2003年のシリコンバレートップエグゼクティブのサラリー事情は、

The paychecks of Silicon Valley's top bosses got fatter in 2003 -- the first time in three years.

2000年以降の3年間では初めて増加しており、

Among Silicon Valley's top bosses, the average paycheck last year -- including salary, bonus and estimated stock options gains -- was $1.78 million, up 32 percent from $1.35 million the previous year. That increase was largely driven by a 32 percent increase in the average gain on stock options to $929,808 -- far less than the $5.09 million average options gain in 2000.

ストックオプション含めたトータルの給与は、平均 $1.78 million(約2億円?)で昨年比32%増とのこと。これは、(2000年の頃に比べればはるかに低いが)ストックオプションの増加によるところが大きいようです。

過去Blogで書いたように、私個人は、経営者は会社の経営に対してちゃんとコミットすべきだし、成功した場合のインセンティブは起業・新たな産業創出を促進する、と思うので、ストックオプションは基本的にどんどんやったらいいんじゃないの、という意見です。…まぁ実際は、色々難しい問題もあるとは思うのですが。

しかし、日本企業の経営者のモチベーション、あるいはいい加減な経営に対する歯止めをどう説明すれば良いのだろう? というのが謎でした。(不祥事も幾つか続いたとは言え、給料で比べるとアメリカ企業の経営者よりはるかに不利なのに、モラルは高いと言って良いのでは?と思うので)

先に紹介した この本 では、株主による統治ではなく、従業員が経営者の行動をチェックする役割を果たしている(いた)と、「自律的ガバナンス」というコンセプト(※)で説明を試みています。経営者がいい加減なことをやっていると、従業員の会社に対するロイヤルティや仕事に対するモチベーションが低下し、長期的に見て会社の業績に悪影響を与える可能性があるので、従業員の厳しい目に晒されている緊張感が経営者の意思決定・行動を律している、ということがインタビューの結果から分かったとのこと。

というわけで、日本のコーポレートガバナンスにまつわる通説―「日本企業には経営者に対するチェック機能がない」は、必ずしも当てはまらないという意見が支配的 であるという興味深い指摘がありました。

言われてみれば、まぁそりゃそうだよね、という気もしないでもないですが、個人的には「コロンブスの卵」的な発見で、目からウロコでした。

他にも、この本では、日本企業における「事業経営」の実態―責任者はどんな人で、どう育成・選抜され、アプローチし、どの程度まで戦略的なのか―や、日本式のもの造り方式とイノベーションの関係、等について調べた結果が出ていて、とても面白かったです。本のレビューは、また別途まとめようと思っていますが、取り急ぎ。

(※)但し、このモデルは全ての場合でうまく機能するわけではなく、以下の場合は機能不全を起こすので外部のガバナンスが必要とされています。
→「長期雇用の程度が低い」「労働市場が流動的」「規制産業」「衰退産業」

Comments

zoffy

はい、しかしながら“従業員の厳しい目に晒されている緊張感が”ない経営者も少なくなく。「長期雇用の程度が低い」わけでも「労働市場が流動的」でも「規制産業」でなく「衰退産業」でなくても。数少ない例外なのかも知れませんが、たまたま自分の会社の社長がそんなんだったりすると最悪です、、、たわ言失礼。:p

Tomomi

zoffyさん、コメントありがとうございました。

まぁ上記はあくまで「そういう会社が多い」という話ですので、世の中には「そうでない」会社もたくさんあるだろうとは思います。

人生におけるプライオリティは人それぞれ、どういう会社を選ぶかも人それぞれなので、経営者に緊張感があるかどうかは、その中の一つの基準に過ぎないわけですし。

でもどうせ働くんなら「この人のためなら苦労しても良い!」って思えるような人の下で働きたいものですよね。

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