Mona Lisa Smile
May 16, 2004
日本に一時帰国した飛行機の中で観たので、ずいぶん前になってしまいましたが、Mona Lisa Smile(※1)と、観て感じたことを少し。
主演は、押しも押されぬハリウッドNo. 1女優のジュリア・ロバーツ。アメリカ東部の名門女子大に着任した、型破りの美術教師を演じています。
大学とは言え、教師も親も学生も「花嫁学校」だと考えており、学生の半分は在学中に結婚し、花嫁修業もカリキュラムの一部、良い結婚相手を見つけることが学生たちにとっての一大事という時代です。カリフォルニアからやって来たワトソン先生は、あまりにコンサバで古臭いしきたりが多い東部の大学に驚き、こまっしゃくれた女の子たちは、あからさまな反撥を持って新任教師を迎えます。しかし、恋多き女であるにも関わらず独身を貫き、プロフェッショナルとして毅然とした態度を貫くワトソン先生は、「結婚して専業主婦になる」以外の生き方を、身をもって教えようとし、学生たちも、次第に彼女に心を開くようになります。途中は、ワトソン先生の恋と仕事や、学生たちの恋愛・結婚、家族との関係などが丁寧に描かれていきます。
結論から言うと、ワトソン先生と学生のちょうど間の年齢に位置する私としては、何だか身につまされる映画でした。
「弁護士の夢を諦めたら、私は後悔するかもしれない。でも、自分の子供を自分で育てられなかったら、私はもっと後悔すると思う。どうして専業主婦じゃダメなんですか?先生は、自分の生きたいように生きろ、って言うけれど、仕事と家庭の両立にこだわって、他の生き方を否定しているのは先生のほうだわ。これが私の生き方なんです」
映画後半で出てくる、こんな台詞が、一番印象に残りました。
今日のアメリカですら(※2)、まだまだ、仕事と家庭(主に出産・育児)との両立は大変だと言われています。$100,000以上の収入を得ている女性エグゼクティブの49%には子供がおらず、$55,000-$66,000クラスでは、43%が未婚だったそうです(Harvard Business Review; 2001年)
おそらく、この映画を観た働くアメリカ人女性も、自分の生き方と照らし合わせて、色々考えさせられたのではないでしょうか。
多かれ少なかれ、女性は結婚・出産・育児に際して影響を受けることが多いわけで、キャリアを考えていく時に、避けては通れない問題を、改めて目の前に突きつけられたというか、「そういや大学同窓の女友達はみんなどうしてるかなぁ…」などと思いを巡らせたのでした。
ただ、同時に、世間の常識ほどあやふやなものもないしな、とも。
「夫は仕事、妻は家庭」という家族のあり方が「常識」と言われたのって、日本ではごく最近の事象で、昔は農家や商家のおかみさんも一緒になって働くのが当たり前だったりと、国や時代が変われば「常識」なんて幾らでも変化するものですし、ジェンダーで窮屈な思いをしているのは女性だけではありません。
キャリアが断続したり、中断したりすることは、ある意味、大変ではあるけれど、逆に、(特に日本の)男性には、キャリアが中断する「自由」「選択肢」もあんまりなくて、それはそれで大変そうというか。配偶者が海外駐在になったので「仕事を辞めてついて行って、現地でコミュニティスクールに通ったりボランティアしたりする」のは、女性だったら誰にも何も言われない当たり前のことなのに、男性がそうしようとしたら周りがアレコレ言うというのも、男性には「キャリアを中断する自由」がないことの一つの例だと思うので。
何かを成し遂げようとすると、誰もが何らかの「打ち壊さなければならない常識」という壁にぶつかっているのではないか、と思ったりもします。
…とまぁ、色々考えましたが、シンプルに言うと、「色々あるけど、納得の行く生き方をしたいなぁ。自分にとっても、家族にとっても」と、改めて感じたのでした。
余談ですが、別のところで聴いた、ジュリア・ロバーツが Mona Lisa Smile について語ったインタビュー、とりわけ彼女自身のキャリアアップについての部分が面白かったです。
大ヒットした Pretty Woman の後、年上の男性と恋をする若い女の子役のオファーが続き、役どころが固定化した女優になることを恐れた彼女は、納得行く脚本を待ち続けた結果、The Pelican Brief に出会うまで、2年以上のブランク(映画に出ている、という意味では)を余儀なくされました。その間、「もう誰からも、何のオファーも来なくなったらどうしよう」と怯むことなく、「自分がやりたいものを探すために今頑張らずにいつ頑張る」と信じて頑張ったのが、結果としては良かった、現在築いたポジションのお蔭で自分で仕事をコントロールできる、だから家庭との両立にそれほど苦労しないのだと思う、とのことで、一流キャリア女性の一つの例を見たような気がしました。
※1:Mona Lisa Smile の日本での公開は今年8月だそうです。
http://www.monalisa-smile.jp/
※2:この記事を見たときの第一印象は、「逆に言うと、アメリカの女性エグゼクティブの半分以上は子供も産んで育ててるのか」というものでした。そもそも日本だと、女性エグゼクティブの数自体がむちゃくちゃ少なそうだし…。データ手元にありませんが、ここ1-2週間以内ぐらいのWall Street Journalにアメリカの母親の有職率が出ていましたが、なんと、70%以上の母親が仕事を持っている(出世する・しないは別として、仕事を続けること自体は一般的)とのことで、これまた驚きました。確かに、少なくともシリコンバレーに住んでいる女性は、子供がいても働いてるのが普通みたいだし、こちらのWorking mothersの話を伺うと、アメリカのほうが子育てしながら仕事を続ける環境が整っていることを感じます。その辺の話(シリコンバレー子育て事情)は、また機会を改めていずれ。とにかく、日本に比べると、家庭を持ちながら働く女性(もしかしたら、男性にとっても、かも)にとってのラクさは段違いだなー、というのが私の率直な感想です。
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