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沼上幹「組織戦略の考え方」

沼上幹「組織戦略の考え方―企業経営の健全性のために

この方のお名前はよく見掛けていたのですが著書を読んだのは初めてです。
なので、他の本については分かりませんが、(私にとっては)読み易い文体でした。表現が平易かつシンプルで力強さがあり、たとえがありふれていないのに納得感が高かったです。まぁ、何より、内容に対して「あるある」度が高かったからなのでしょう。

まず目次だけ読んでも「おぉ!」と読みたくなること請け合い(私はそうでした)なのでとりあえず目次と、各章の簡単なまとめ(私のメモですが)を付けます。

◆目次と各章のサマリ

     

  • 第1章 組織設計の基本は官僚制

    「官僚制」という言葉はどうも最近世間では旗色が悪いネガティブなイメージで語られがちだが、実は会社を支える基本・足腰。ルーチンワークを確実に遂行できる人たちがいなければ会社は成り立たない
     
  • 第2章 ボトルネックへの注目

    「ザ・ゴール」の「ボトルネック」の概念を組織の意思決定に適用している。仕事のできる人に仕事が集中しがちなので、そこが組織のボトルネックになる。その人でなければできない仕事以外はなるべく他の人に担当させ、エースのリソースを無駄にするな
     
  • 第3章 組織デザインは万能薬ではない

    「うちの組織はメチャクチャだ」「マトリックス組織万能論」に対して、問題を解決するのは組織設計ではなく最後は人だ、と一刀両断
     
  • 第4章 欲求階層説の誤用

    マズローの5段階の欲求階層説―「最後に人間がたどり着くのは自己実現欲求」だけが強調されすぎると、その一歩手前にある「承認・尊厳欲求」が軽視されるのが問題である。「自己実現という美しい言葉」は、会社にとって安上がり(ポスト・賃金を与える必要もなく、個々人が勝手に自己実現し続けてくれれば良いから)であり、金もポストもなくても、多くの手段がある
     
  • 第5章 組織の中のフリーライダー

    「厄介者」「怖い大人」という概念を用いて説明。「信頼できる中間層」をいかにして確保するか
     
  • 第6章 決断不足

    組織が安定してくると「落としどころ感知器」としての能力の高い人が登用される傾向がある。トップが決断できない組織は、どのような特徴を持ってくるか(①フルライン、フルスペック要求 ②経営改革検討委員会の増殖 ③人材育成プログラムの提案 は、どれもトップが決断できないがゆえに起こる)
     
  • 第7章 トラの権力、キツネの権力

    組織の実力者を「トラ」その威を借り、自分に都合の良い方向に意思決定を捻じ曲げる「キツネ」、キツネの権力を作らないためには、社内調整専門のポストを作るべきではない
     
  • 第8章 奇妙な権力の生まれる瞬間

    「宦官」の台頭を許さないために、「ウチ向きマネジメント」を昇進の評価基準にすべきではない
     
  • 第9章 組織腐敗のメカニズム

     
  • 第10章 組織腐敗の診断と処方

9&10章はとりわけ面白かったので、下に改めてまとめます。

「組織の寿命は30年」という言葉が80年代にはやったそうですが(当時私は義務教育中なので伝聞形)、30年という数字の妥当性はともかく、年数が経つとほうっておけば組織は腐るものだ(その傾向が強い)というのに異論のある人は少ないでしょう。ここでは、組織が腐って行くメカニズムを2つのキーワードで説明しています。

     

  1. ルールの複雑怪奇化

    古いルールや手続きを廃棄処分にして新しいルールを作る新陳代謝が起こりにくく、古いものの上に新しい物が追加的に加わるため、古い組織ほど複雑怪奇なルールを持つ。「ルールの抜け道」「運用」のプロ、すなわち社内宦官が権力を持つようになり、外からお金を稼いでくる「武闘派」の足を引っ張り、若手が徐々に宦官化していく
     
  2. 成熟事業部の暇

    成熟事業部ではみんなが仕事に慣れてきているので仕事遂行能力が余っている。その余った時間で内向きの無用な仕事(ムダに社内用の企画書・プレゼン資料に凝りはじめる、他人の資料にケチを付ける能力の洗練とそれをかいくぐるための根回し労力の増加、秀才が暇を持て余し本来必要ではない細かなスペック変更が行われる)が次々と生み出される

◆組織の「腐敗度」チェック指標

皆がどれだけ暇で、暇がどれだけ内向きの仕事に費やされているかをチェックする指標であり、以下の2つが挙げられています。

     

  1. 社内手続きと事業分析のバランス

    新規事業開発の企画を正当化するのに、事業内容の検討と、社内正当化プロセス(稟議)に費やす時間の割合 -- 社内からの批判の対処に4割時間を取られているようなら病気
     
  2. スタッフたちのコトバ遊び

    ①社員の雑談の内容が内向きか、外向きか -- 管理職・経営陣の仲の良さ悪さに関する感情論や、当事者が傷つくといった配慮論(内向き)か、最近調子の良い社内の新事業はなぜ成功しているのか、逆に失敗した事業はどこがダメだったのか(外向き) ②本社戦略スタッフの企画がメタファーを多用したコトバ遊び -- 戦略実行の現場をイメージできない空理空論 -- になっていないかどうか

◆腐敗からの回復

組織の問題は、最悪の事態に至るまで、なかなか必要な手立てが打てないのが難しいところですが、腐った組織を復活させるためのポイントが、3つ挙げられています。

     
  1. 複雑怪奇化したルール・手続きは全面的に破壊
     
  2. 成熟事業部から優秀な若手を乱暴に引き抜き、新規事業等、外向きの意識になる仕事へつける
     
  3. 忙しさと暇のメリハリをハッキリつける組織運営 -- 最初のステップとして、仕事ができる人を暇にすると、新事業開発や省力化など利益に直結する新しい仕事を考案できるようになる

以下は雑感・オマケなので興味のある方だけどうぞ。

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Holidays in Tokyo

すっかりご無沙汰しておりました。

ベイエリアに戻ってきてはいたのですが、時差ぼけ休みぼけからのリハビリ、なんて悠長なことを言ってる間もなく、仕事やボランティアで色々あって、更新が遅れてしまいました。

リハビリ代わりに、久々のトーキョーの感想などを…。

  • 六本木について

休暇中3度も六本木ヒルズに行ったんですが、いやー、すごかったです。都会のネオンがまぶしかった。
今、私が住んでいるところは、「夜22時以降、やってる店が2軒しかない」と嘆かれるほどの田舎なもので。
「もう電車がない時間なのに、こんなに人がいるよ~」「ガイジンがいっぱ~い」「ひぇ~みんな英語喋ってるよ~」などなど、札幌から上京した時以上の衝撃を受けました。

でも、ヒルズを一歩離れると、「マスター」と呼びたい渋い男性がやってる喫茶店、老舗のお蕎麦屋さん、いぶし銀の職人さんがやってるラーメン屋さん、なぜか2階に温泉がある建物、などなど、なにやら地元に密着した感じのお店がたくさんあり、面白いところだなぁと思いました。

路線図上は同じ駅の圏内なのに、一本違う道に入ると雰囲気が変わるのは東京(というか大都会なのかな?)の面白いところだなぁ、と、思いがけない "Discover Japan" を楽しみました。

  • 家電について

日本にいたときはそれが当たり前だと思っていたはずなんですが、こちらで 食器洗い機を回すとテレビの音も聞こえない という生活に慣れてしまったせいか、日本の家電の静かさには、逆カルチャーショックでした。動いてるか動いてないか分からないくらい、静かで。

あと、お湯の温度(エアコンの温度設定も、ですが)が1度単位で設定できるって、すごいですよねぇ。アメリカだと、「あつい<->つめたい」ぐらいしか設定が変えられないので、こういう細やかさは日本人ならではだなぁ、と思いました。

ただ、謎なのは、台所にある風呂のスイッチです。
あれ、どうやって使うんでしょうね?風呂沸かす前には、掃除して、その場でお湯を入れはじめるし、追い炊きが必要なときは、入る人が風呂場で自分でスイッチ押せばいいだけの話なので、台所で「風呂を自動で沸かす」スイッチなんて、使ったことがないのですが。

もしかして、台所で料理や片付けものをしてる妻に、風呂場から夫が、「おーい、風呂がぬるいぞー」と言ったら、「ハイハイ」とその場でスイッチを押すとか、そういうことなのでしょうか…?(自分で書いてて怖くなってきた)

ともあれ、モツ煮やちゃんこを、畳の部屋でワイワイ食べる、なんてのは、日本ならではの楽しみよねー、とホクホクしつつ、久しぶりの友達に会ったり、ベト麺食べたり、ちょっとリフレッシュしてきました。

#今日はオチのない話ですいません


Microsoft帝国のゆくえ

Microsoft's Midlife Crisis
http://www.businessweek.com/magazine/content/04_16/b3879001_mz001.htm

Microsoftはどこまで大きくなるのか?死角はあるのか?あるとすれば、それはどこか?と、先日来気になっていたのですが、早速BusinessWeekでMicrosoft特集が組まれたので、メモしておきます。

まずは、その巨人っぷりを示すデータを幾つか挙げますと、


  • 90年代の売上高成長率:平均36%
  • マーケットバリュエーションは世界No. 2 (ちなみにNo. 1はGE)
  • 毎月$1Billionのキャッシュを稼ぎ出す

だそうです。99年には、ダウ工業株三十種平均に選ばれるなど、ハイテク業界のリーディングカンパニーであるだけではなく、名実共に今日のアメリカを代表する企業の一つにもなっています。

そんなMicrosoftが今直面している危機とは?

Threats abound: Linux. European trustbusters. Key product delays.

とのこと。Linuxの話や独禁法の話(あんまりBusinessWeekの記事には詳しく書かれていない)は既に何度かこのblogでも取り上げていますが、次期OS・Longhornについては、これまであんまり意識して調べたことがなかったので、私にとっては興味深かったです。

また、売上も、今後は90年代のように30%台というのは見込めず、今後数年間は11%(ベストケース)、2006年までは8%程度と予測されているとのことです。次期OS・Longhornの発売が早くて2006年後半だと言われ、主要な大型製品(Office等)もOSの発売時期に歩調をあわせると見られるため、特に2006年までは低成長が予想されているのだと思われます。

All this has Wall Street's best and brightest penciling in estimates for Microsoft that would have been an insult a few years back. Never mind 30%, or even 20% revenue growth. The optimistic forecast is for 11% growth over the next few years, shown here as the best-case scenario (charts). The Wall Street consensus is that the company will boost revenues 8% a year through 2006, according to Thomson First Call.

Microsoftの開発力・技術力が凄いという話は、その筋(?)の方からはよく聞くのですが、具体的な内容についてはここで触れるのは避けておきます。同社が今力を入れていること、これから力を入れて取組むことはというと、

A look down The List provides intriguing insight into Microsoft's concept of innovation. The company pours about $6 billion a year into research and development, and the vast majority of that goes to improve its monopoly businesses, Windows and Office. In the past, it developed ClearType technology for high-resolution text displays and grammar checking that identifies errors as people write with its word-processing software. Gates's work now on security and search also will be baked into Microsoft's most popular software.

研究開発費$6Billionの大半はコア製品であるWindowsとOfficeにつぎ込まれているそうですが、中でも、今最もホットなのはセキュリティとサーチだそうです。記事では、この他に、テレコム(VoIPとか?)も注力分野の一つであると書かれていました。

同社の屋台骨であるWindowsとOfficeの利益率に関しては、あちこちで色々言われていますが、決してマーケットリーダーの地位に安住することなく、常に改善を目指しているという姿勢は、その巨額の研究開発費にも現れているとも言えます。Gates自身も、自社のビジネスについて、以下のように語っています。

"You can sit on the existing [products] -- that's a perfectly legitimate choice. This is not a soft drink where you get thirsty and say, 'I drank my word processor. Let's have another."'

ソフトドリンクのように、顧客が喉が渇くたびに新規の需要が発生するわけでないので、「買う理由」を作らなければいけないというのがソフトウェアの特徴である、と。

同社は顧客が新しい商品を「買う理由」を作り出すことにこれまでは成功して来た、と、過去の高い成長率からも言えると思いますが、Longhornを市場へ送り出すに当たっては、相当の産みの苦しみを味わっているようです。

The most important change is to the file system -- the way information is stored on the PC. Microsoft is creating a new design not just for Windows but for all of its products that makes it easier to retrieve photos, documents, songs, and e-mail. (中略)Microsoft is cutting some of the most ambitious technologies to get the product out the door. For example, Longhorn will now ship with a scaled-back version of the file system. The current plan, in practical terms, means people will be able to search their PCs for documents and information related to each other, but they won't be able to reach into corporate servers for similar files.

ファイルを保存・検索しやすくする新しいファイルシステムを採用する予定だったそうですが、開発が大幅に遅れている(Gartnerの当初予測より3年延びており、市場に出るのは早くて2006年後半とのこと)ので、ファイルシステムに関しては現状維持となるようです。

同社が、95年・98年・2000年・2002年と次々OSを送り出してきたことを考えると、4年間のインターバルは、次期OSが相当なチャレンジに直面していることを示しているのでしょう。

巨人の苦悩は更に続きます。

The U.S. PC market is largely mature, so Microsoft has moved into new businesses. But these categories, such as online services and video-game consoles, already are dominated by large rivals -- and they know Microsoft's tactics. So instead of opening new frontiers, Microsoft finds itself in pitched battles for existing territory. "Microsoft is the only company in the world that can afford to take fortified hills -- and that's almost a disadvantage," says Richard E. Belluzzo, ex-Microsoft president and now CEO of data-storage player Quantum Corp. (DSS ). "They have too much money, too many good people, too much time -- all of which can hurt [them] in some ways."

お金と才能ある人、そして時間が有り余っていること-なんとも「贅沢な悩み」ですが、これらは殆どディスアドバンテージである、というのは興味深い指摘でした。

サーチのGoogle, オンライン音楽販売ではApple, ビジネスアプリケーション分野ではSalesforce.com等のライバルも多いこと、Linuxが企業ユーザにヒタヒタと着実に採用され始めている(記事には事例も出ていました)ことなど、巨人の行く手を阻む勢力は存在します。Microsoftはこれからどこへ行くのか、Longhorn発売までの2年半に一体市場はどうなるのか、興味は尽きません。


帰郷

明日から家庭の用事でちょっと休みをいただいて、半年ぶりに日本に帰ります。
休暇中は、気が向けばblog更新します。
今週号のBusinessWeekがMicrosoft特集なので、気になってるのですが、時間がないので飛行機の中で読もうかなと。

日本は食べ物おいしいし、言葉も通じるし、いいな~♪と、大和撫子な私はウキウキしております。
(2年近く住んでても、あまりにアメリカナイズされないので、それはそれで、色々普段の生活ではヘコむことも多いのですが…)

それと、アメリカ再入国する際は、やっぱ指紋採られるんだよなぁ、などと、なかなかできない体験なので、出国する前から再入国する時のことでドキドキしています。


Into Thin Air

「雇用問題」は、今年のアメリカ大統領選でも一つの大きな争点になっています。大統領候補の政策で最も注目するトピックは「雇用」「保険(※)」だという有権者アンケートの結果がWall Street Journalに出ていたのを見たことがあります。

雇用に対する大衆の不安を逸らすためには、海外アウトソーシングは格好のスケープゴート(ガイジンが我々の職を奪った!というのは非常に分かりやすいし、国内の利害を一致させやすい)なんだろうなぁ、などと、ややヒネた見方をしている私ですが、「ここ3年間で失われた270万の職のうち、海外アウトソーシングされたのは30万。生産性が1%あがるたびに130万の職が失われる」というForrester Researchの発表(これを取り上げたBusinessWeekの記事紹介)には、少し驚きました。アメリカ人の職を奪っているのはインド人・中国人ではなくアメリカ人自身だった、というのは、ある意味非常にセンセーショナルなものだったのではないかと思います。

また、海外アウトソーシングはアメリカ国内での雇用創出に繋がっている、と、業界団体が発表したりと、最近、企業側の反論も盛んになってきました。

270万のうち30万が多いか、少ないか、とか、その数字の妥当性は、とか、難しく考えれば色々突っ込むところはあるのですが、

Maybe offshoring is good for the economy in the long run. Maybe it will boost productivity and save companies. But it's causing real pain to real people. And they never thought it would happen to them.

「本当の痛みを味わっている人たちの肉声」を紹介しているFast Companyの記事を今日は紹介します。

Into Thin Air
http://www.fastcompany.com/magazine/freebie/81/offshore.html

WatchMark Corpというソフトウェア会社や、製本会社、自動車の部品工場、Agilent Technologyなどで働いていた人たちが、いかに職を失ったか、という話が書いてあります。「この人はこうで、あの人はああで」という感じの文章が多いので、紹介が難しいのですが、特に冒頭、WatchMark Corpの従業員で構成されるYahoo Groupで、Saddam Husseinという名前で不気味な予告がされた翌日には、確実に人がレイオフされた、という話には、何とも言えない怖さ・やるせなさが漂っています。最初の6パラグラフほどを読むだけでも確実に「ある日突然職を失う恐怖」が味わえますので、「対岸の火事」だと思っている方、良かったらご一読を。

ちなみに、後半には、じわじわと職を失って行く様も描かれています。こっちも怖いですね。

It's an increasingly common pattern. Full-time jobs become contract work, without benefits, and then vanish overseas.

30万、というのは客観的な数字ですが、それぞれ人生があるわけだよなぁ…、と、当たり前のことを実感させられます。

ちなみに、野暮を承知で少し補足しますと、「月曜日に自分の替わりがやって来る云々」というのは、レイオフするなら月曜日の朝イチに言え というのがアメリカ式マネージャの心得だからだと思います。「月曜の朝に言われれば、次どうするべきか、色々手立ても打てるし、気持ちの整理も付く。金曜日の帰りがけに言われたりなんかしたら、レイオフされた人は、解決策も持たず、気持ちの整理も付かず、”家族には何て言えば…”と絶望的な気分で帰宅し、暗い週末を過ごさなければならない。その人の家庭にとっても不幸だ」と、留学した時に教わりました。

Fast Companyの記事後半では、

In IT alone, Gartner estimates that another 500,000 positions in the U.S. may leave by the end of this year; in one scenario, as many as 25% of all IT professional jobs could go overseas by 2008.

アメリカのIT業界の1/4の職は2008年までに海外アウトソースされるというGartnerの予測についても触れています。

MicrosoftのBill Gatesが一流大学のEngineering専攻の学生を激励したそうですが、反面、シリコンバレーですら、Engineering専攻の学生の数は減っているというデータもあり、トレンドの変化を敏感に感じ取っているアメリカの若い人の姿が伺えます。

manufacturing accounts for just 14% of U.S. output, while services provide 60% and employ two-thirds of all workers. "It's happening much faster [than in manufacturing]," says Cynthia Kroll, senior regional economist at UC Berkeley's Haas School of Business. "There are fewer capital investments required in outsourcing a services job." Kroll cowrote a recent study that pegged the current number of jobs vulnerable in some way to offshoring at a stunning 14 million.

しかも、今回の環境変化は、かつてアメリカの産業構造が製造業からサービス業へとシフトした時よりも遥かに急速に進んでいるとのことです。

The irony is that offshoring is not an American-only concern. In manufacturing, the jobs have trampolined from country to country. In a world where people are treated as any other factor of production, scapegoating one country is pointless.

職が海外に移ったからといって、その国をスケープゴートにするのは的外れなことだ、と言いつつ、これがアメリカだけの問題でないとしたら。海外アウトソーサーとの付き合い方においても、先進諸国の中でアメリカが一歩リードする構図となるのでしょうか?

こんな時代、個人はどうやって会社や仕事と付き合えば良いのでしょうか?

突然の退職勧告」は、私のblogで最も参照されているエントリの一つですが、退職勧告を受けたある30代半ばの男性が、どう自分の道を切り拓いたかの話には、非常に重要なヒントが含まれていると思います。興味のある方はまぐまぐプレミアムでお読みください。ちなみに、FRI&Associatesのメルマガでは、「戦後最大の経済事件」といわれたイトマン事件についても、筆者・河合さんが、当事者の一人として、会社がなくなる日のことまでを語りつくしており(力作です!)、日本の企業戦士な皆さまにとっても読み応え十分だと思います。

日本企業が潰れるときの一つの例と、そこでしぶとくSurviveするためにはどうすれば良いのか?イトマン事件シリーズで今の会社に入社した時の感慨を思い出しつつ、失敗パターンを観察し、勧告退職シリーズで明日への知恵を学べる、という、大変素晴らしいメルマガですので、私Tomomiが改めてオススメします!!

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The Meaning of Business

すごいタイトルのblogがスタートしたようです。その名もWorthwhile。

The Meaning of Business
http://www.worthwhilemag.com/entry/2004/04/06/the_meaning_of_business.php

"The simplest definition of business is you solve a customer's problem and create sustainable profits over time. Anyone with vision should understand the problem they're solving. The problem with business today is that people think the meaning is about building a monument to yourself. The meaning of business is having an impact on people's lives."

そうなんですよねぇ。

「何のために私って仕事してるんだっけ?」
「この仕事って、一体何の役に立つんだっけ?」

などと、考えずに働いておられようか(いや、おられまい)。


Pandora's Bundle

引き続き、市場における「効率性」「多様性」の役割・バランス・トレードオフについて、考えてみたいと思います。
しつこくってスイマセン。

「効率性と多様性のあいだ (2)」に対するmeta-oさんからのTrackback:「生産性原理と創造性原理」
http://www1.kcn.ne.jp/~ikoma/mt/archives/000010.html

「効率性と多様性」というキーワードを敷衍して、非常に興味深い議論を展開されています。
ご自身の体験を盛り込んでいて説得力もあって面白いので、皆さんもぜひご一読ください。

同じ環境が続く場合は、生産性を極端まで追求していくのもよいかもしれない。その環境に最適なものだけ存在するのがいちばん効率がよい。しかし、環境が激変する時期には、一網打尽となってしまう危険がある。そのような時期には、多様な存在の中から新しい環境に適応したものが生き残る混在型の方が有利だ。

そして、これは稿を改めて述べてみたいが、長い目でみれば環境の変化は永遠に加速し続け(てい)るというのがわたしが密かに抱いている仮説だ(「IT革命」が完了して、平穏な時期が再び訪れるなどと期待してもむだだ。「IT革命」ということばは死語になろうとも)。

全体主義に対する民主主義の優位性もこのコンテキストの中で捉えることができるのではないだろうか。そういえば、わたしは制服がきらいだ(自分が着る分には)。

私が前回までのエントリを「効率性と多様性のあいだ」とネーミングしたのは、(あまり考えがクリアにまとまってなかったのでハッキリ書けなかったのですが、) meta-oさん同様、効率性と多様性は、決して二者択一の決断ではなく、同じ会社の中でも、両方を共存させていくためのバランス(時に6:4、3:7、みたいに)を追求し続ける営みなのではないか?と思っていたからなんだろうな、と、気づかされました。

サプライチェーンの効率に優れた企業はそうでない企業に比べて業績が良い、という調査結果 は幾つかありますが、同時に、コスト重視・効率重視しすぎるあまりに将来の成長に対する視点からのIT投資を行なっていない企業は、長期的に見ると、「次のヒット商品」が出づらくなったり、価格競争に巻き込まれて利幅が薄くなる傾向があることも分かっています(ITポートフォリオ戦略論

自分のサイズを探していくこと、その瞬間・瞬間に最適なバランスを追求し続けて行くこと、に意義があるのではないかな、と。

バンドルというテーマがこれほど問題になるのも、市場の多様性をいかにして維持するかに密接に関わるテーマだからなのではないか、と思いを新たにしました。

とりわけ「情報」という無形財を売るビジネスでのバンドルのコストは非常に安いため、これを禁止するのは「パンドラの箱」を開けるようなものだ、と指摘しているArnold Kling氏の「Pandora's Bundle」を今日は紹介します。

What George Stigler showed is that ordinary intuition about bundling is wrong. Your intuition is that the reason that the seller engages in bundling is to force you to buy something that you do not want. However, as Stigler pointed out, if that were the case, it would be cheaper for the seller to leave out the unwanted good and just charge you for what you want. That is why grocery stores do not bundle milk with broccoli -- it's cheaper for them just to sell you the milk.

まず、バンドルに対して消費者が抱く直感というのは多くの場合間違っている。バンドルとは、顧客が欲しくないものを強制的に買わせるものだ、と考えている。しかし、売り手にとっては、顧客が欲しがるものの対価だけを貰いつつ、欲しがっていないものも付けてあげるほうが安く付くからバンドルしているのだ。食料品店は、決して牛乳とブロッコリーをバンドルしないが、それは単に牛乳だけ売る方がバンドルよりコストが安いからだ。

Information goods are almost impossible to sell without bundling. As Carl Shapiro and Hal Varian pointed out in their classic book Information Rules, information goods are characterized by very low marginal cost of production and distribution, as well as by uncertainty on the part of the buyer as to the value (until you've actually obtained the good).

情報という商品は、殆どバンドル無しで売るのは不可能だ。Carl ShapiroとHal Varianが古典的名著「Information Rules」で指摘しているように、情報という商品の特徴は、製造・ディストリビューションの極めて低い限界コストにあり、また、買い手にとっての価値は実際に買ってみないと分からない不確実性にある。

Microsoftについては、以下のように述べています。

I am an investor in a small, privately-held software company developing a product in a space where we expect Microsoft will someday have its own offering. The way that we look at it, when Microsoft chooses to enter this market, they will have to decide whether it is cheaper to buy our company or build the software themselves. That "make or buy" decision does not depend on whether Microsoft chooses to sell the product separately or not. Instead, the decision depends on whether they think that the product we have is worth more than the cost that they would have to undertake to develop a viable competing product. If they believe that they can develop a product more cheaply and effectively internally, then they will choose not to buy our company. In that case, we will have to compete with them, and that may be difficult. But that's life.

自分は小さいソフトウェア会社に投資している。Microsoftが、そこと同じ分野で勝負しようと思ったとき、そこよりも安く、良い製品を社内で作れると思えばそうするだろう。もし、その会社を買った方が得だと思えば、買収するだろう。その「作るか、買うか」の決定には、Microsoftがそれをバンドルして売るかどうかは関係がない。もし、Microsoftが、その会社より安く、良い製品が作れると踏んだら、Microsoftと今日そうしなければならない。難しいだろうけれども、それが世の常なんだと。

もう少し突っ込んで言えば、Microsoftよりも安く良い製品を作れば、Microsoftに高い値段で会社を身売りするなり、競争で勝つなりできるじゃないか、というところでしょうか(厳しいお言葉ですが)。でもまぁ実際、アメリカの大きい会社って、買収の連続ですものね…。

これって、本当に難しい問題だと思います。
選択肢が多いのはいいことだ、と多くの人が信じる一方で、選択肢が多くなればなるほど、消費者は選ぶのが面倒になるので(オンライン音楽販売について考えた際に、消費者が選べなくなる事象について少し触れています)。

法学部出身だけに「権利は不断の努力を持って維持すべし」が信条な私としては、選択肢がなくなるのがイヤなら、多様性を維持すべく反骨精神で。たとえ経済性が悪くてもマジョリティと違う選択をしましょう、と、改めて思うのでした。

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効率性と多様性のあいだ (2)

Microsoftのバンドル問題に対して、示唆に富むコメント・Trackbackをありがとうございました。
考えがまとまらない段階で、とりあえず「どうして?」と球だけ投げて、放置してしまってすみません。
ただ、前回エントリしてから急激にPVが増えたので、この問題に対する世間の関心が非常に高いということを実感しました。

皆さんにお返事しながら、このテーマについて、もう少しまとめてみたいと思います。

最初に、私が気が付いた、Microsoftのバンドル問題の論点を二つほど挙げます。


  • 顧客の「選択肢」を確保するということ。
    たとえIEやMediaPlayerがその分野でメジャーな製品だったとしても、マイナーな製品を使う顧客も、必ず存在する。Microsoftは、「Windowsは使うが、IEやMedia Playerを使わない顧客の自由」を尊重する必要がある、ということ。
  • Microsoftが大きくなりすぎることに対する懸念。
    顧客の側からみれば、1社が市場を独占すると、価格統制やサービスの悪化などの「負の側面」が出て来る可能性がある。また、アメリカ以外の国の政府の立場からみれば、IT業界でアメリカ製品が「輸出超過」の状態は、自国経済保護の観点から望ましくない、という思惑が働いているのではないか。

以下、今回のEUの「お裁き」がMicrosoftに、そして市場にどのようなインパクトをもたらすか、考察してみます。

そもそもMicrosoftの独禁法問題が高まってきたのは、Windows95や98の時点で、プレインストール機を売ろうとするPCメーカに対して、MicrosoftのOSをプレインストールしたいなら、IEやMedia Playerも必ず一緒に抱き合わせでつけろ、その分の金を払えとMicrosoft側が強制していたという部分が焦点だったはずです。

電話のバンドルも面倒なら一社に任せられますが、あくまで選択肢の一つであり、ユーザーが個々を別々に選ぶ権利もありますよね。PCの場合はIEが使いたくないユーザーは他のブラウザもインストールできますが、OSに付随しているIE分の料金を無駄にMicrosoftに払っているというのが良くないという考え方だと思います。(前エントリに対するTAKさんのコメント)

なるほど、これは非常にリーズナブルです。
確かに、電話のバンドルも、「ウチのローカル電話サービスを使うなら、携帯もウチにしなさい。そうでないとローカル電話サービスも売ってあげない」と言い出したら、それは問題大アリですよね。IEやMedia Playerを使いたい人はバンドル版を買えばいいですが、現状では、それらを使いたくない人にとって選択肢がないわけですから。

ただ、バンドル版・アンバンドル版ふたつのWindowsを販売せざるをえなくなったとして、それが、Microsoftの市場支配力にどれだけのインパクトを及ぼすのか?と考えると、実はあんまり影響力はないのでは? という気もします。

だいたい、QuickTimeもRealPlayerもBasicなセットはFreeで配布しているのである。ここでMediaPlayerに$50という値付けをしたところで、市場価格から考えてもあまり説得力は感じられない。せいぜい$10かそこらだとして、次に出てくるのは、ユーザーはどこからOSを入手するか。$2,000の買い物をしようというときにプリインストールのOSでMediaPlayerなし版が選べてそれが$10安くなるのでそっちを選ぶか?全体から見ると0.5%ということになるが、これだと他のrebateの方がいっぱいつきそうだ。「キャンペーン期間につき、$50のmail rebateがつきます」の広告文字のほうがインパクトがありそうだ。(前エントリに対するダンナからのTrackbackより)

そうなのだ。販売価格全体からみたら、IEやMedia Playerの占める金額はきっとごくわずかだし、Microsoftぐらいの財力があれば、痛くも痒くもないメールリベートで一気にシェアを挽回できてしまうだろう。余分なお金を払って、なおかつ、IEやMedia PlayerがバンドルされてないWindowsを買おう、等というヒネクレモノ、もとい、気骨のある人(笑)はどれくらいいるんだろう?

※ ちなみに、ダンナのエントリでは、今回の制裁金がMicrosoftに与えた影響力を、「諭吉さんが財布に5人いるときに吉野家で特盛と味噌汁レベル」と喩えている。分かりやすい(笑)

というわけで、「アンバンドル版のWindowsも売りなさいね」というお裁きは、名を捨て実を取ったMicrosoftに対して、形式上は威厳を保つための、EUの苦肉の策なのかな、というのが、現時点での私の意見です。

加えて、もう一つ、意義があるとしたら、先に紹介したEconomistの記事にもあるように、次のバージョンのOSで実装されるとみられるサーチ機能(コードネーム:Longhorn)に関しても、コレをセットにしないとOS売ってやらないぞ、という、強制抱き合わせ販売はさせませんよ、と釘を刺したことでしょうか。

オチとしては、(夫婦漫才状態で恐縮ですが、)

どうやら、Microsoftを打ち倒すには、Microsoftが打ち出すサービス・製品がたどり着けない領域を別に築き上げる必要がありそうだ。例えば「現在の」iTunesとiPODとiTunes Music Storeのように。99¢を5000万曲ダウンロードしたところで、$400を200万台売り上げたところで巨人の地位はそう簡単には揺らぎそうに無いが、結局巨人を倒すには巨人以上のアイディアとそして何よりもその実行が必要なのだろう。

やっぱり、ココかなぁ、と思います。

うちの祖母の口癖なのですが、「どんな商売にも、一度は必ず良い時がある。」つまり、ずっと繁盛し続ける商売なんてものはない。でも、やっていれば、いつかは良い時が巡ってくるものだ、そう信じて石にかじりついてガンバレ、ということらしいです。

ところで、私が、「どうして電話のバンドルはいいのに、OSがブラウザバンドルしちゃダメなのさ?」と最初に思ったように、「バンドリング」に関しては、アメリカの経済学界でもちょっとした話題になっていたみたいです。以下、色んな経済学者等のコメントを載せておきます。喧々諤々っぷりが面白いのでご参考までに。この問題、簡単に答えが出ないんだなぁ、ということが分かっただけでも貴重かも。

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