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効率性と多様性のあいだ

実は最近、ちょっとMicrosoft が気になってました。

Microsoft EUで罰金、バンドリング禁止
http://www.economist.com/agenda/displayStory.cfm?story_id=2535519

他にもたくさん記事があると思いますが、Economistのは、年表風にまとめられてて見やすいのでリンク。

In addition to the record fine, the Commission has demanded that Microsoft do two things to make life easier for its rivals: it must produce a Windows package that excludes Windows Media Player within 90 days; and, within 120 days, it must make available a chunk of code for Windows, so that rival server manufacturers can design network computers that will work smoothly with the 90%-plus of PCs that run on Windows operating software.

ところで、私の素朴な疑問なんですが。

電話料金のバンドル(ローカル、長距離、インターネット、携帯、等。EUはどうか知らないのですが、アメリカではコンテンツまで含めて垂直統合的なConsolidationが起こっています。)は良いのに、どうしてOSがブラウザをバンドルするのはダメなのでしょうか?

もし、Microsoft が、Windowsのレジストリ等を改造して、IE以外のブラウザをインストールさせない設定にしているのなら、「競争を妨害するのはやめなさい」と言われるのは理解できます。でも、ユーザが他のブラウザをインストールするのは自由なわけですし、実際問題、自分でイチイチIEをインストールしろと言われたら、面倒くさくないですか?今や、ブラウザ使わないでパソコンを使うなんて考えられないですし、「最初からIEぐらいは入れておいてくれよ」と、私は思うのですが…。

曲がりなりにもエンジニア経験のある私ですら面倒だと思うのに、プリインストール以外のソフトウェアは入れたことがない、という一般ユーザって相当いるんじゃないでしょうか。その人たちにも自分でブラウザをインストールさせるつもりなのでしょうか?

確かに、OS市場におけるMicrosoftのシェアを考えると、かなり支配的なプレイヤーであるのは事実だとは思います。が、Microsoftは、規制に守られて競争せずに今日の地位を築いたわけではないはずです。むしろ、自由競争の元に、マーケティングや製品開発力、ディストリビューションチャネルの構築、開発ツール・APIの提供など、OS市場で覇権を握るための戦略とオペレーションに最も優れた会社だったからリーダーになれた、というほうが正確なのではないか?と私は思っていました。

ですので、市場のルールに基づいて競争して勝利したMicrosoftが、別に他社製品をインストールすることを妨げているわけでなく、ユーザが毎日のように使う基本的なソフトも含めて販売したからといって、なんでいけないのかが理解できません。

#OSは宗教論争みたいなものなので、感情的に好き嫌いがあるのは私も重々理解しているつもりですので、別に喧嘩を売ってるつもりは全くないです。どうしてなのかが理解できないだけです(単に私が無知なだけかもしれないので、今後この問題少しフォローするつもりですが)。

ところで、Microsoftの影響力があまりに強くて大きい、ということの負の側面を心配・懸念する意見があるのも、理解できます。

Microsoft ramps up on search engine
http://www.mercurynews.com/mld/mercurynews/business/technology/8292516.htm

In any case, Microsoft has one huge advantage: Its MSN home page already has enough traffic to make its search engine one of the most popular, said Charlene Li, principal analyst at Forrester Research in San Francisco. More people visit Microsoft's MSN home page daily than read the top seven U.S. newspapers combined, Ballmer said.

全米トップ7新聞社のサイトよりMSNのほうがPVが多いって、すごくないですか?(私はこの記事を読むまで知らなかったので、素朴に驚きました。)

IMにHotmailにSNS (Social Networking Service), blogに検索エンジンと、コンシューマ市場でも相当なイキオイですが、本当に、この先Microsoftってどこまで大きくなるんでしょうね?

そう考えていたときに、幾つか気になる言葉・ニュースを見つけたので、まとめてリンクしておきます。

自分のサイズを探していくことが、ポスト産業資本主義時代を生きる人間すべてにとってのいちばん大きな仕事なのかもしれない」(ほぼ日刊イトイ新聞 糸井重里×岩井克人)
http://www.1101.com/event2004/2004-03-29.html

産業資本主義の時代では、大きくなることには意味がありました。それは機械制工場を使って大量にモノを作っていたわけですから、工場の規模が大きくなると、それに比例して、さらにモノを大量に作れるようになります。

だが、ポスト産業資本主義の時代とは、モノではなく、違いそのものを売る時代です。そこでは必然的に市場で流通する価値とモノとしての実体的な価値とは乖離します。

そうすると、そこで大きくなるということは、虚名の部分が広がっていくということです。実体と名前の乖離をどうバランスさせるかは、非常にむずかしいですよね。

名前が実体とあまりにかけ離れると、それはバブルですから、いつかかならず崩壊します。
ただ、まったく流通に関して何もしないと、そもそも実体にあまり価値がないわけですから、ほとんどゼロですよね。

実体と名前の乖離──ポシャらないけど、バブルにもならないバランスを探すことは、ほんとうにむずかしいと思います。

Los Gatosの商店街に押し寄せる大資本の波
http://www.mercurynews.com/mld/mercurynews/business/8291449.htm

Los Gatos は、こじゃれた小さいショップがたくさん並んでいて、おいしいケーキ屋さんやベトナミーズレストランがあって、なかなか素敵な小さな街なのですが、ここに大資本が続々参入していることに対する地元の危機意識について書かれた記事です。

アメリカに初めて来た時、正直、「アメリカの大都市は、どこの街に行っても、ダウンタウンに並んでる店はだいたい似たり寄ったりでツマラン」と思ったのですが、やはり、小さい独立資本のお店が醸し出すユニークさに対する郷愁や執着というのは、洋の東西を問わないのだな、と思いました。

というわけで、Microsoftの今後については、Wal-Martと同様に、今日の会社はどこまで大きくなれるんだろう という課題意識を持って見守っていきたいと思います。

ちなみに、「別に公正に競争して勝ったんならいいじゃん」と言いつつ、いち消費者としては、"Don't let your friends go to Starbucks" というロゴを店内に貼っている(ホントです)独立系自家焙煎コーヒー屋を応援しています。


ベト麺's Club

今日はJTPAのネットワーキングパーティへ行ってきました。

他の参加者がマジメな自己紹介をする中、「ベイエリアで最もうまいベトナミーズヌードル(ベト麺)を求めて食べ歩く会をやってます。ベト麺レポートをアップするためにblogを始めました」と言ったところ、渡辺千賀さんに「その割には、blogにベト麺の話が少ない」とツッコまれたので、慌ててベト麺情報をアップしてます。ついでに、blogに「Vietmen」というカテゴリを追加しました。これから更新されるベト麺情報はココに入れます。

#普段、blogはかなりシリアスに書いてるので、ベト麺のおちゃらけモードとは180度路線が違うので、両者を同じblogに共存させるのは難しいなぁ、と思いつつ。ベト麺's Clubのblogも立ち上げたいねー、と企画だけはあるのですが

以下の過去ログに「私がいちばんうまいと思う店」の一覧が載せてあります。初心者にありがちな質問も含めたFAQ付きですので、まずはこちらをご一読ください。

「独断と偏見の "Best Vietmen in Silicon Valley"」
http://www.myprofile.ne.jp/blog/archive/vietmenlover/67

最近は、情報を求めてベト床屋(当地の安い床屋はなぜか大抵ベトナム人によって営まれている)に行っても、隊員の方がベトナム人よりうまいPho屋に詳しい という事態が起こりつつあり、新規開拓に苦労しています。「ぜひ、ここに行ってみて!」というオススメ口コミをお待ちしております。いちおう活動拠点はサウスベイですが、バークレーやサンフランシスコにも潜伏中の隊員がいますので、ベイエリア全域の情報を募集しています。

上で紹介したリストに付け加えるなら、Tully Rd (San Jose) にある「Pho Bang」を Pho Bo 部門の一位タイに入れようかな?という感じです。

※以下は、Pho Bang 訪問レポートなので興味のある方だけお読みください

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書きあぐねている人のためのblog入門

ランナーズ・ハイなのかもしれませんが、私自身は、最近「書くことがなくて困った」ことはあんまりなくなってきたんですが、先日友達に「よくそんなに書くことがあるね」と言われて、思わず考え込んでしまいました。うーん。なぜ私は書き続けられるのだろう?そんなわけで、私がどうやって書いているか(来たか)まとめてみたいと思います。「blogなど、何か文章を書いてみたいと思っているけど、どう書いたらいいのか分からない」という人の参考になるかもしれないので。

#ちなみに今日のエントリの題は、「書きあぐねている人のための小説入門」から借りてますが、中身が本に準拠しているかどうかは定かではありません(読んでないので…)。

◆Non-nativeとしての情報収集Tactics

私が会社でやっている仕事、というのは、世の中で起こっているたくさんの物事の中から、小さいニュースを根気強く拾い集め、断片的な情報から「ある市場は、これからどうなりそうか」について予測を立てて、「だから、こうするべき」といった提言をまとめるアナリスト業務なので、もともとbloggerへの適性は高かったのかもしれません。

ちなみに、私の英語力は「Non-nativeとしては上の下」ぐらいだそうです。
(こちらで、Non-nativeのビジネスパーソンに長年英語を教えている先生のアセスメントの結果)
bilingualへの道は、ホント遠く険しいことを痛感中ですが、そんな私がアメリカに来て、アメリカの情報をウォッチする業務についてみて、英語での情報があまりに多いこと、特に、最初はその情報がどの程度信用できるものなのか、情報ソースの信頼性に対するコンテクスト(そのサイトが、業界内でどういう評判なのか、等)が理解できなかったので、非常に苦労しました。

情報が多いので、「全部読んでみて判断する」なんて無理だし、そもそもNon-nativeの私にとっては、英語での情報収集では、時間あたりの作業量は、日本語での場合に比べて圧倒的に効率が悪いのです。

そこで、blogを通じて二つの訓練(足腰を鍛えつつ、選球眼を養う)をしようと思ったのでした。


  • とにかく、たくさんの、色んなメディアの記事を読んで英文読解力を鍛えること
  • 「何のために」「どういう情報が欲しいのか」「自分なりの仮説・着眼点はコレ」と、あるテーマに対して、自分なりの編集方針・目的意識を持ち、時間あたりの情報収集力をあげる

「読んでいれば何か面白い発見があるのではないか」と、ダラダラ、目的意識を持たずに、ひたすら情報を探していては日が暮れてしまいます(時間に余裕があればそれでも良いのですが…)書かれてる情報もよく読むと矛盾があるのはよくあることです。それに、世の統計情報というのは、ちょっとデータの取り方が変われば正反対の内容が複数存在する、というのはよくあることなので、「他人が言っていること」の鵜呑みでは、結論として何が言いたいのか、筋の通ったレポートを書くのは難しいものだ、としみじみ思います。

※ 以下、長いです

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私がblogを書く理由

理論的には、世界中の人が自由に見れるところに、実名で文章を継続的に投稿し続けるという営みを、生まれて初めて、半年続けたことになります。

こういうことを長年続けている人にとっては当たり前のことかもしれませんが、私が今、痛切に感じているのは、

「誰かが書いたものを読む、ということは、単なる情報の共有以上のものである」

ということです。

blogを始めた当初は、これまでは”サイト間のリンク”みたいな、比較的静的な繋がりだったWebの世界が、blogのような小さい断片的な情報がダイナミックに繋がりを見せていることに魅せられたのですが、

繋がっているのは、情報ではなくて、人ではないのか?

と、最近は感じるようになりました。

世の中には、頭の良い人も、文章の上手い人もたくさんいます。
文章以外のところで有名な人-大きな事業を成功させたとか、リアルの世界で一流のトラックレコードを持っている人もいます。
有名な人の文章をみんなが読むのは、「あの人が何を語るのかに興味がある」からですし、
大学教授の書いた論文を読むのは「その分野での最先端・一流の研究成果を知りたい」からでしょう。
アカデミックの世界での評価基準のように「ハイインパクト」よく引用されるblog、というのも、それはそれで一つの価値です。

では、有名でもなければ、名だたるトラックレコードもない私のblogに「繋がって」くれた人たちは、どう感じたんだろう?

ということが気になって、考えてみたのですが、

ネットという情報の海を漂う人たちは、ただの「情報」が欲しいのではなくて、それを書いている「人」との繋がりを意識・無意識に求めているのではないか、と。

blogの「繋がりやすさ」を示す一つの考え方として、「ツッコミビリティ」という言葉があります。
「論理的な筋道が明快で、書き手の主張が明確なほど突っ込みが入れやすい」
という洞察だそうで、とても興味深い事象だと思うのですが、これに加えて、「繋がりやすさ」には、

そこに書き手がいるかどうか。
書き手の思いに対して「共感」できるかどうか。

表現がうまいかどうか、提供している情報のValueが高いかどうかだけでなく、
書いている人の気持ちに「そうだよねぇ」と相槌を打ちたくなるかどうか、話し掛けたくなるかどうか、
もっと突き詰めて言えば、
「その人と友達になりたい、繋がりたい、と思うかどうか」
人の心にある、この壁を超えられるかどうか、というのが、とても重要なファクターなのではないか、という気がしています。

「人の心を動かす」には、論理的に相手を納得させるだけでは足りない。
言い換えれば、「理解」に加えて「共感」があるからこそ人は繋がる のだ、とも言えるのではないでしょうか。

私がこのblogを始めた理由は、「この先、この世の中がどうなっていくのか(そして自分はどうしたいのか、どうすべきなのか)」という大きなテーマに対して、自分なりの問い・答えのようなものを探していく過程を書きとめておくためだと、これまで思ってきたのですが、それをわざわざ世間に公開しているのは、

自ら声を上げなければ、誰からも意見を求められない立場。
言いたいことがあってもうまく表現できない外国で。
自分の意見には、何の価値もないのではないか?

そんな自分に対してあせりや苛立ちを感じていたからだったのだろう、と今になって思います。

「死んでしまったら私のことなんか誰も話さない」

というタイトルは、

「もしかして、生きている今だって、私のことなんか誰も話さないかもしれない」

と不安に思う自分を鼓舞し、

「大丈夫。生きている以上、私の存在にはきっと意義がある。死んでしまってからでは何も変えられない。変えられるのは、これからの自分だけ。」

と言い聞かせるためのおまじないだったのだろうな、と。

表現に対する渇望感から誕生したこのblogは、

私が私自身になろうとする戦いの記録

だと言い換えても良いかもしれません。もしくは「ささやかな反抗」かな。

とまぁ、こんなふうに、極めて個人的な動機でやってるblogですが、私の個人的な戦いの記録が、同じように戦おうとしている人たちにとって励みやヒントになったり、慰めになったり、時には共感しあったり突っ込み合ったりして、戦いの合間の憩いの場(…というとやっぱり飲み屋か)になれれば幸いです。

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※ 山篭り宣言したにも拘らず、現実逃避で、ついこんなことをつらつら考えていたら、橋本大也さんの「Passion For The Future」で、ブログタイトルのネーミングで、「新しい」「優秀」な日本語でのネーミング例 として弊blogをご紹介いただいたことに気が付きました。あわわわ…。ありがとうございます。

※ 3/21追記: ちなみに、ネーミング自体は、同名のスペイン映画(私のお気に入りの映画の一つでもある)から借用?引用?しています。
http://www.sankei.co.jp/mov/review/97/0307nadiehablara.html


シリコンバレーの伝説

ひとつの文明が終わり、風が吹き抜けたそのあとには ただ石だけが残る。…

と、何とも格調高く始まる勇馬さんのblogで、弊blogをご紹介いただきました。
http://yuuma.jugem.cc/

そこはかとなく漂う諸行無常感と絶妙のユーモア感覚で、うまく言葉で説明できない私のblogのコンセプト・物の見方をこういう風にうまく捉えてくださったことに驚きました。

ペシミスティックな感性をもっていたかもしれない少女

確かに、ここのblogタイトル、言われてみると「こまっしゃくれてる」かもしれないですね。「大人は判ってくれない」みたいな。実年齢は、とうに「少女」を過ぎてしまったのですが(ソーシャルネットワーキングサービスでは顔出してるので、余計恥ずかしいかも…)。気持ちとしては「よりよく生きるためにどうすれば良いか」を考えて行く blog なのですが、元々、誰かのためというより、自分自身の課題を解決するために始めたので、内容もけっこう内省的かもしれませんし。

(そう言えば、Sotto Voce の村山さんには Maven タイプだと分析されたことも。)

正直、始めた頃は、マイナー単館系としてヒッソリ内輪受けでやっていくと思っていたので、あまり深く考えずにタイトルを付けてしまったのですが、タイトル、大事ですよね…(EdiTechさんには「日記系サイトだと思った」、友人には「縁起でもない」「ぎょっとした」と言われたし)

シリコンの谷に、何か一つでも私が存在した証拠が残ったらこんなに嬉しいことはないです。
勇馬さん、ありがとうございます!


Where Are the Jobs?

BusinessWeekの最新号は、たびたびこのblogでも取り上げている雇用問題特集でした。

Where Are The Jobs?
http://www.businessweek.com/magazine/toc/04_12/B38750412jobs.htm

0412covdv.gif

アメリカ人がこんなに慌てている理由は、

The link between strong growth and job creation appears to be broken, and we don't know what's wrong with it.

Is the job market broken? でも触れたように、「景気の回復が雇用を創出する」というこれまでの法則が成り立っておらず、企業の売上は伸び、新規設備投資も増えてきているにもかかわらず、雇用が回復していないからです。

海外アウトソーシングがアメリカ人の職を奪っているのか?

Forrester Research Inc. estimates that of the 2.7 million jobs lost in the last three years, only 300,000 have been from outsourcing. (The Price of Efficiency)

Forrester Research は、直近の3年間で失われた職 270万のうち、海外アウトソーシングされたのはたった30万と推定しています。
まぁ、30万もあれば、全く影響がないとも言えないですし、

While exact numbers are hard to come by, a study by Cutting Edge Information Inc., a Durham (N.C.) consulting firm, found that 90% of all U.S. businesses now outsource some work

9割の企業が何らかの形でアウトソーシング(注:ハッキリ書いていませんが前後の文脈から「海外への」だと思います)を使っているそうです。

しかし、海外アウトソーシングよりももっと大きなインパクトを持つ要因とは一体なんなのか?

it's a real job killer this time: A one-percentage-point increase in annual productivity growth costs about 1.3 million jobs.

年間1%生産性が向上すると、130万の雇用が失われる、というのが現実であるとのこと。

生産性向上の理由は、BusinessWeekの特集ではあまり掘り下げられてはいません。過去私が紹介したことがあるNY TimesやHarvard Business Reviewの記事から推察すると、ITが直接的な要因というよりは、その産業の中での競争の厳しさが増していることの影響が大きいようです。それから、「生産性が上がったから人が要らなくなった」のではなく「人を減らしたから生産性が上がった」と言う方が適切なのではないか、という気もしています。激化する競争を生き残るために企業が必要最低限しか雇用を維持しなくなったため、結果として従業員一人一人の業務処理能力が上がった、もしくは、一人当たりの負担が重くなっているのではないかと。

この影響を最も強く受けているのは、若年層のようです。

Young, inexperienced people, who were sucked into the job market during the boom, are not what companies are looking for right now. That's especially true in finance. In this recovery, Wall Street firms are being more picky about their hiring, looking for experienced, highly productive bankers, traders, and brokers.

但し、未曾有の事態に対しても希望を失わないのがやっぱりアメリカ人、というわけで、

True, there are plenty of possible candidates for the Next Big Thing: Biotech, telecom, energy, nanotechnology, and even the commercial exploitation of space are all capable, in theory, of making a big difference in the job picture. (Productivity: Who Wins, Who Loses)

バイオ、テレコム、エネルギー、ナノテク等 雇用をこれから創出しそうな新たな産業があるではないか、とか、

Harvard's Murnane, an education professor, points out that a century ago, half the U.S. population worked in agriculture, and many people didn't know how to read or write. History has proved that they and their descendants were capable of much more. Murnane, who spends a day a month observing Boston public schools, says "I'm cautiously optimistic" about the ability of Americans to rise above the routine. Those who can will find that computers amplify their powers and globalization extends their reach (The Future of Work)

一世紀前はアメリカ人の半分が農業に従事していて、多くの人は字の読み書きも出来なかったが、今では、それ以上のことができるようになっている。だからもう一度同じことができるはずだ、という(慎重ながら楽観的な見方、と微妙な言い回しではありますが)力強い調子で結ばれています。

それにしても。
ビジネスを遂行する上で、会社が人を必要としなくなってきた(必要なスキルセットが変わった、という言い方もできますが)というのは、会社は株主のモノである というアメリカ資本主義的思想の顕著な表れのような気がします。会社勤めしていてもいつレイオフされて食べるのに困るか分からない世の中だとすると、やっぱり、「お金のために働く」のではなく「お金を自分のために働かせる」資本家の側に回るのが「人生の勝ち組(この言葉、実はあんまり好きではないのですが)」なのでしょうか…。

In addition, the hike in productivity directly and indirectly has driven up asset prices. Rising profits, of course, have pushed the stock market nearly back to levels before the recession, benefiting investors, while low interest rates have sent home prices soaring, to the delight of many homeowners. All told, the latest data from the Federal Reserve show that household net wealth is at an all-time peak, surpassing the previous high in early 2000. (Productivity: Who Wins, Who Loses)

実際、株主や家を持っている人にとっては嬉しいことが多い、とのことで、この国における「持てる者・持たざる者」の格差が広がっていきそうな予感もします。フリードマンの「黄金の拘束服」という言葉(「レクサスとオリーブの木」より)を思い出しました。

個人レベルでのSurvivalに関しては、「The Future of Work」で、今後なくなる職業・増える職業のリストやVerizonの従業員の事例も出ていますので、興味のある方はご覧ください。

【このblogでの雇用問題関連エントリ】※古い→新しいの順に並んでいます

…リストアップしてて思ったけど、ホントこのblog、雇用問題ネタ多いですね。

さて、ここで一つお知らせです。
仕事でこれからしばし山に篭るので、blogはその間「開店休業」とさせていただきます。
更新再開は3月27-28日頃を予定していますので、またお付き合いいただければ幸いです。
それでは、また!


InnovationからRenovationへ

Trouble on Silicon Valley's doorstep
http://news.com.com/2008-1012_3-5171606.html?tag=nefd_lede

Oracleの元社長・Ray Laneのインタビュー記事です。

IT業界の未来については、世間には大きく二つの見方があるのではないかと思っています。一つは、「IT Doesn't Mater」、つまり、ITは既にコモディティ化しており、技術そのものがユーザー企業にとっての優位性をもたらすものではなくなった、という見方。もう一つは、いやいや、まだまだITが解決できるビジネス上の課題もあるんです、という見方です。

IT業界で働く私としては、後者の描く未来がやってくることを信じたいのですが、

Today, the post-bubble software industry is beginning to come around to Lane's way of thinking: Renovation, not innovation, is what's important.

に現れているように、どちらかというとITコモディティ化説に近い考えを持つLane氏のインタビューから、興味深いところをご紹介しつつ考察してみたいと思います。

The biggest challenge to him is in reorganizing his systems. Changing those systems is not easy. The more technology we have installed, the harder it is to change your business.

今日の企業の問題は、「システムを再組織化すること」であり、既にたくさんの技術を持っている企業にとって、システム・ビジネスのやり方を変更するのは大変なことだ、と、指摘しています。

Now, customers are looking for simplicity, integration and security across releases. They want standards-based software that doesn't require the labor expenditure of the past. Software CEOs have two choices: They can try to impose their proprietary methods on the market or they can adopt a new service-based approach to providing and maintaining software.

なので、顧客は、シンプルなものを求めている。このニーズに応えるために、ソフトウェア企業が取りうる二つの戦略-従来どおりの独自仕様・囲い込み戦略か、サービス・ベースのアプローチ-がある、とのこと。

この記事では、これ以上サービス・ベース・アプローチについて述べられていないので、彼の言わんとするところは推測するしかありませんが、2度目の波が来ていると言われるASPや、SOA (Service Oriented Architecture) 等が、それに相当すると考えられるでしょうか(実は、2004年のトピックとして、この二つは追うべきかな、と前から密かに思っていたんです。SOAは、私にとってはやや具体性に乏しい気がして、どう掘り下げたものか悩んでもいたのですが)。

In the past, when customers have asked for improvements, we've said, "Replace your old system with this new system." That's not true anymore. You've got to use the existing infrastructure and take advantage of information already there. During the last 10 years, we did modernize the infrastructure. Now, I can actually do the renovation. I don't have to knock it down.

業務アプリケーションのSE出身の私にとって一番実感がこもっていたのは、「もうインフラはある。既存の情報をうまく活用するべきだ」という指摘でした。

実は、言うは易しで、これは結構難しいはずだ、と思うのです。

典型的なFortune 1000企業では、平均して、アプリケーションを48個、データベースを14個持っていて、IT予算の7割はデータのインテグレーションに使われている(IDC)とか、35-40%のプログラミングコストは異なるデータベース・レガシーシステム間のデータのTransferに使われている(Gartner)と言われていますし、流通業界のサプライチェーンでは、小売=メーカ(もしくは卸売)間でのやり取りに使う商品カタログデータが3割間違っているというデータ(A.T Kearney)があり、これがRFIDを導入する際に問題になるだろう、と言われています。

どういうデータを、どうやって社内で管理していくか。データのモデリングと、更新・同期のプロセスを整理するというのは、それだけで大変なコンサルティングになると思います(…うちの夫がそういうのやってた気がします。そのうち守秘義務に触れない範囲で語ってもらおうっと)。

ちなみに、ソリューション提供側が意識しなければならない、顧客の今後の動向ですが、「これからの企業がやらなければいけない5つのこと」として、以下のように語られています。

The new enterprise has to do five things: respond and deliver to support demand; grow or shrink, based upon changes in demand; operate any time, anywhere, under any conditions; minimize asset and labor content per unit of production; and provide real-time transparency of operations, both internal and external.

不確実性の高い環境で、柔軟に規模を変えられること(そのため、資産はなるべく少なく持つ)いつでも、どこでも需要に応じてオペレーションを行うこと、オペレーションが社内外の人にリアルタイムで、ガラス張りで見えること、だそうです。

イノベーションをリードする土地・シリコンバレーの今後について、Lane氏は次のように語っています。

I would never say Silicon Valley is dead. We'll just have to learn to do things differently than in the past. (中略) It's like the home-building world. Most new home builders are not renovators, and most renovators are not new-home builders. They require different skills. But renovation is just as important as building new homes.

決してシリコンバレーは死なない。ただ、これからのやり方は、これまでとは違うものになるだろう。新しい家を建てるビジネスと、メンテナンスするビジネスがあるように。

この指摘は、ある産業が成熟してくると同時にアフターマーケットの市場が成長・成熟してくるトレンドとも合致しているので注目すべきポイントだと思います。例えば、住宅、それから自動車あたりでしょうか。アメリカは、日本に比べると、住宅そのものの寿命が長いこともあり、中古住宅の市場が成熟していると言われています。日本では、新規住宅の建設は景気をはかる重要な指標と考えられており、100万戸建設されるかどうかが一つの目安になっているほど(だったはず、確か)ですが、中古住宅市場はまだまだなのですが。

また、IT産業の今後を考える上で、抜きでは語れない海外アウトソーシングについては、

If you look at our portfolio companies, out of about 60 that could be doing something offshore, 60 percent are already doing it--mostly in India but also in China and Canada. We're talking about it primarily as a cost move, where quality assurance and testing is moved offshore. You can't compete if you have all your resources in California.

彼の会社が投資しているポートフォリオ企業でも、6割が何らかの形で海外アウトソーシングを活用しているとのことです。

さて、この後、IT企業はどこに活路を見出すべきか?

The whole idea of information access, communication around the world, may be the next one. (中略)until biotechnology overtakes it.

逆に、世界中に分散した仕事の仕方になることから、情報へのアクセス・コミュニケーションがカギであろう、としています。


天才の歌は、いつもポップソング

※今日は英語文献の紹介ではないです。年度末に向けて仕事が最繁忙期で、仕事以外の勉強時間があまり取れない状態です。そんなわけで、しばらくは不定期更新が続くかと思いますが、ご容赦ください。

ほぼ日刊イトイ新聞「坊さん。」より
「天才の歌は、いつもポップソング。」
http://www.1101.com/bose/2003-02-11.html

Hondaさんから頂いたコメントを読んでいたら、この言葉を思い出しました。

世の中には2人と同じ人間がいないけれども、実は、みんなに共通する部分、普遍的な部分のほうが、多いのではないか?人間の普遍を切り取ること、それがマーケティングであり、ポップカルチャーなのではないか?」と、自分の進むべき方向性に対して、一筋の光を当ててくれた言葉です。起業家トークで渡辺さんが語っていた「ユーザーにとっての良い写真というのは、ユーザーの頭の中にある”イメージ”を再現した図に近いもの」というように、誰かの心の、ある断面を鮮やかに切り取って見せる、そういう商品だからこそ売れるのだ、というのにも通じるところがあるように思います。

勿論、どれぐらいの人数にとっての普遍かによって、マーケットの規模は全然変わってくるのですが。

blog開設前夜(2003年8月末)に、冒頭のお坊さんの言葉にインスパイアされて、私が今後、仕事・ビジネスにどのように臨んで行くか、考えたときの文章があることを思い出したので、アップしておきます。なんかちょっと青臭くて気恥ずかしいので、隠してた(?)のですが、初心に立ち返る意味も込めて。

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「世界中の誰か一人であっても、誰かにものすごく喜ばれるものを」
と思う気持ちと同時に、
「世界中の誰か、一人でも多くの人に喜ばれるものを」
と思う気持ち、私は両方持っている。

誰とも違っていたいという気持ちと誰かと同じでいたいという気持ち。

どちらも人間だと思う。

優れたソングライターは、誰かの心にピッタリと来る、「これは私のことを歌ってるんじゃないか」と思わせるような曲を書きながら、ミリオンセラーにしてしまう。

中には、ものすごくマニアックな天才で、独自の世界観を持ち、あるものすごく狭いセグメントの人の教祖になるタイプも勿論いるだろうし、それがポップに劣る価値だとは私は思わない。

blogを始めるにあたり、「誰か一人でも見ててくれる人がいるならいいんだ」という考え方も勿論あると思うし、ある狭いセグメントの関心を集めるサイト、それも一つの価値だけど、HTTPポート80番を開ける事の意義は、「誰かと繋がること」だと思う。

自分自身の世界観を模索しつつ、みんなの周波数にチューニングを合わせること。
これを私の目標にしようと思う。

ビジネスは、誰かの何らかの欲望を満たすもの、誰かを喜ばせるためのものだからで、「どうすれば人が喜ぶか」「そのために自分はどうすればよいか」を考えるのが私は好きなんだと思う。ポップなビジネスを目指して、少しでも多くの人を喜ばせるために今後もやっていくのだろうと思う。

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SVJEN 起業家トークの夜

随分レポートするまで間が空いてしまいましたが、「SVJEN 起業家トーク」に参加した感想を書きます。

日本人起業家が、人生観・仕事観などをざっくばらんに語る、という趣旨の会にふさわしく、スピーカー紹介では渡辺さんの特技:蕎麦打ちの画像が披露され、140人もの参加者がいたにも拘らず、とてもアットホームな雰囲気のセミナーでした。

裏方として、ちょっとだけ裏話をすると、今回のセミナーは、特に内容に関する参加者の満足度は非常に高かったのですが、それも、スピーカー渡辺さんのお人柄と、「画像オタク」を自認するエンジニア魂に対する共感が高かったのではないか、と感じています。シリコンバレーの日本人のうち、かなりの割合はエンジニアが占めていると思うので。

セミナーでは、渡辺さんがなぜ起業に至ったのか、画像認識技術へのこだわりや、決意してから起業家になるまでの道のりについて語られました(内容の詳細を知りたい方は、SVJEN公式レポートへどうぞ)。控えめで朴訥とした口調だからこそ、乗り越えてきた数々の苦労話も迫力があり、技術者として起業を考えている人にとっては、何でつまづきやすいのか、どういう心がけが必要なのか、というポイントはとても勉強になったのではないかと思います。私自身は、ここまでこだわれるもの・打ちこめるものがあって、その夢を共有できる仲間と一緒に歩んで来れた という前向きな生き方に感銘を受けました。

デジタルカメラのチップを作っている渡辺さんが、「デジタル化は必要悪。アナログで処理できれば、それがいちばんいい。」と語られるのは、一見意外ではあるのですが、信念を持ち続け、夢を実現するチャンスを追い続けてここまで来られた、その情熱の源って一体何だったのだろう…と思うと同時に、自分にとっての夢・こだわりって何なんだろう…と、改めて考えさせられました。

また、印象深かったのは、VCから言われたという「桁違いを3つ持て」という言葉でした。既存企業の2-3倍ではすぐに追い付かれてしまうし、たとえその瞬間は桁違いであっても、半年・1年経てばどんどんその強みは消費されていくので、常に桁違いを創造し続ける必要があるとのこと。ミュージシャンを志す友人が、オーディションの審査員に「歌が上手い、曲が書けるだけでなく、従来の歌手と違う個性を持っていなければ市場に出せない」と言われたと聞いた事がありますが、それと似ていると感じました。

逆に、一つでも桁違いを作り出そうとするのは大変なことなので、何でもかんでもやるのは無理だということも、最近強く感じるようになりました。このアドバイス、起業家でなくても、自分自身のキャリアを考えて行く際のヒントになりそうです。自分のコンピテンシーを3つ挙げるとしたらそれは何なのか。

また、VC巡りでは、必ず「どこを改善すれば良くなるか」アドバイスを貰えて非常に勉強になった、という話も、チャレンジ推奨文化のシリコンバレーならではだなぁ、と感じました。「できない理由」を並べるより、「どうすればできるか」を考え出すマインドセットを心がけている私としては、とても共感しました。

私は、SVJENのお手伝いをしている関係と、食い意地の関係で、こちらに来てから、何人かの起業家にお会いしています。それほど毎回突っ込んだ話をするわけではないので、どこまで真に迫っているか確信はありませんが、成功している方の共通点として、多少うまく行かないことがあっても、いつかうまく行くはずだと信じて再挑戦しつづける執念の強さ・明るさ、自分に対する自信、というのがあると感じています。

それと、とても年上の男性に対してこういう言い方は失礼に当たるのかもしれないのですが、皆さんどこか少年ぽいお茶目なところもあります。他の人から見れば「???」な物事かもしれないけど、恥ずかしがったりせずに堂々と「何何のどれそれが、イイんだよ~!!」などと熱を込めて語れるって可愛いなぁと。「可愛い」は、私が女だからの感想かもしれませんが、同性からも「アイツしょうがないよな~。でも、憎めないよな、ちょっと助けてやらないと」みたいな、愛嬌というのはリーダーシップの一つのポイントなのではないでしょうか(だからといってなめられてはいけないんですが)。

いずれにせよ、前向きな人とのInteractionは私にとっての元気の素だと改めて感じると共に、年度末に向けて繁忙期真っ盛り、もうちょっとガンバロウ!! と思えたPalo Altoの夜でした。


The Myths of Open Source

The Myths of Open Source
http://www.cio.com/archive/030104/open.html

オープンソースについては、興味は持っているものの、まだ考えが煮詰まっていません。CIO Magazineの記事は、幾つか私が持っている課題意識に一つの示唆を与えてくれるものだったので、ポストしておきます。

私がオープンソースについて考えていることを列記します。


  • オープンソースだからこそできること(メリット)/できないこと(限界)とは何か
  • ITサービスプロバイダはオープンソースとどう付き合うべきか(どこに儲けを出すか)
  • 今後ソフトウェア開発の向かう方向性とは

このCIO Magazineの記事では、オープンソースにまつわる6つの伝説・神話について、反証しています。


  • THE ATTRACTION IS THE PRICE TAG (ユーザがオープンソースを選択するのはタダだから)
  • THE SAVINGS AREN'T REAL (実はコスト削減にはなっていない)
  • THERE'S NO SUPPORT (サポートがない)
  • IT'S A LEGAL MINEFIELD (訴訟沙汰の危険性をはらんでいる)
  • OPEN SOURCE ISN'T FOR MISSION-CRITICAL APPLICATIONS (ミッションクリティカルなアプリケーションには使えない)
  • OPEN SOURCE ISN'T READY FOR THE DESKTOP (デスクトップOSとしては不十分)

特に5番目:ミッションクリティカルなアプリケーションには使えない については私自身も同じ疑問を持っていたので、記事で紹介されていたイタリアの銀行Banca Popolareの事例は興味深く読みました。

Unwilling to throw out the bank's legacy banking applications, totaling some 90 million lines of Cobol, but unable to keep them running under IBM's vintage OS/2 Presentation Manager operating system, Whincup has used a proprietary legacy integration tool from Jacada to connect the Cobol to IBM's WebSphere—running in a Linux partition on the bank's mainframe.

9,000万行のCOBOLのソースコードを捨てるわけにもいかないし、かといって年代物のOS/2を維持するのも辛いし…というこの状況、日本のメインフレームユーザにも共通した悩みと言えそうですが、Jacadaという会社のインテグレーションツールでCOBOLのレガシーシステムとWebSphereを接続したとのこと。

結果としては、

Formerly disjointed applications now run slickly in a Web browser, yielding faster transaction times, less time spent training tellers—and many more opportunities for cross-selling the bank's services.
分断されていたアプリケーションがWebブラウザで操作可能になり、パフォーマンスも向上し、研修時間も短縮(ユーザビリティが改善したのか?)、システム間統合ができたことでクロス・セリングの機会も増えたそうです。

この記事で一番面白かったところは、

Is open source right for every organization?

という命題に対するCGE&YのCTOのコメントでした。

"The arguments for and against open-source software often get very trivialized," he says. "It's not a technology issue; it's a business issue to do with externalization."

全ての企業・全てのOSにLinuxが適するとは、私は思いません(少なくとも今の時点では)。確かに、自分で切り分け・問題解決できる(そしてその方が早い、とか)場合はソースコードが公開されているほうが便利かもしれませんが、OSの選択は、その上に乗っかる業務アプリケーションの選択にも影響を与えるので、ベンダ特有のアーキテクチャで動作するパッケージソフトウェアを使いたい場合は、OSの選択にも影響があるでしょう。リソース(アーキテクチャ特有のスキルを習得しているエンジニアの層の厚さ)の調達のしやすさなども一つのファクターとなりえます。

そう考えていくと、社内のITインフラをどこまで共有化するか、業務アプリケーションの選択に対する各事業部(もしくはBU)の戦略はどんなか、等、OSの選択は高度なビジネス決定事項と言えるのではないでしょうか。

今回はユーザ側の視点で考察しましたが、サービスプロバイダ側がどうかについては、また機会を改めて。