Previous month:
January 2004
Next month:
March 2004

SVJEN 起業家トーク

SVJEN (Silicon Valley Japanese Entrepreneur Network) 「第3回起業家トークセッション

テーマ: 『シリコンバレーの、日本人による、映像マーケットのための起業』
スピーカー: 渡辺 誠一郎氏
(NuCORE Technology, Inc., Founder & CTO)

今日はこのイベントに行っていました。
というか、正確には、受付担当ボランティアとしてお手伝いしつつ話も聞いてきました。

以前から渡辺さんのことは存じ上げていたので、ダンディで、すごい技術者であるにもかかわらず、とても物腰の柔らかい方(かつ、かなりの麺好き。ここがわたし的にはポイント)だとは思っていたものの、ベト麺屋でランチするぐらいではなかなかお仕事の話まで聞けないので、とても貴重な体験でした。

イベントの感想はまた、追々週末にでもアップしたいと思います。


イノベーションのパラドックス

Deloitte Study Analyzes "Innovation Paradox"


  • 製造業者の売上全体に占める新商品の割合は、1998年は21%→2006年は35%
  • 2010年までに現在売られている商品の7割は顧客ニーズの変化や競争によって市場から消える
  • 製造業者は、新商品のイノベーションは最も重要でないこととして位置づけている
  • 新商品の立ち上げは5-7割が失敗している

とのことで、イノベーションの重要性は高まっているにも関わらず、企業側の認識は極めて低い、という現象が生じているそうです。

ちなみに、イノベーションがうまくいかない理由としては、以下の4点が挙げられています。


  • 顧客のニーズに対する不十分な情報
  • サプライヤのケイパビリティ
  • R&Dに対する予算配分への抵抗
  • イノベーションへのアプローチが商品単位、顧客単位、オペレーション単位で分断されていること

成功企業の特徴を分析した結果、イノベーションを継続的に創出する企業は以下の3つが優れていたそうです。

  • イノベーションの管理 従来とは異なる顧客層・チャネルを使って、従来の市場を変える「破壊的イノベーション」を成功させるためのアプローチを理解し、活用する
  • 商品ライフサイクル全体で、アイディアを利益に変換する能力
  • 組織能力 サプライヤや顧客との柔軟で緊密なコラボレーション、商品開発~製造までのプロセスの柔軟性

PLM (Product Lifecycle Management)やCRM (Customer Relationship Management)といった技術はさることながら、組織力がイノベーションのカギと言えそうです。

「破壊的イノベーション」については、私の古い方のblog過去ログでご紹介しています。
クレイトン・クリステンセン「イノベーションのジレンマ」
http://www.myprofile.ne.jp/blog/archive/vietmenlover/74


海外アウトソーシングの波にアメリカはどう立ち向かうのか

"Off-shoring" Manifesto/Rant: Sixteen Hard Truths
http://www.tompeters.com/toms_world/observations.asp

エクセレント・カンパニー」「セクシープロジェクトで差を付けろ!」の、あの Tom Peters まで遂にOffshore Outsourcing について語っています。 なるほど、と思ったのは、

10. Big companies do not create jobs, and historically have not created jobs. Big companies are not "built to last;" they almost inexorably are "built to decline."

11. Job creation is entrepreneurially led, especially by the small fraction of "start-ups" that become growth companies (Microsoft, Amgen et al.); hence entrepreneurial incentives including low capital-gains taxes and high R&D supports are a top priority.

何度もこのblogで書いている気もしますが、1917年に「Forbes 100」だった会社100社のうち、87年にもForbes 100入りしていた会社は約3分の1。そのうち殆どが平均以下のパフォーマンスしかあげておらず、平均以上を維持し続けていたのは、たった2社 - KodakとGE - のみで、大企業が永続的に繁栄を続けた例はない(少なくとも最近のアメリカでは)ようです。しかも、商品ライフサイクルの短命化・市場の細分化が進む一方である以上、Entrepreneurship こそがこの国を牽引する、というPetersの主張は、目新しくはないにせよ、岩井克人の「会社はこれからどうなるのか」等にも通じるところがあります。

うーむ、と唸らされたのは、Petersが "worth noting/quoting" で引用しているノーベル経済学賞学者のRobert Solow(IT投資の規模と企業の生産性は比例しない、という「生産性のパラドックス」を唱えたことで有名)の言葉です。

"The notion that God intended Americans to be permanently wealthier than the rest of the world, that gets less and less likely as time goes on."

個人レベルの生活は自分で何とかするしかないので、まぁ、良いとして、世の中全ての人がうまくバリューチェーンの変化に対応できるのだろうか? 実は、私は確証を持てずにいます。しかしながら、民主主義の国では、その人の年収やスキルに関係なく、成人すれば選挙権を行使できるようになります。ごく少数の成功者が圧倒的な富を所有するこの国でも、選挙権は平等に1人1票、となると、当然、雇用は政治問題になるだろう…と、少し前から気になっていました。
※参考:私の過去エントリ「どうなる米国の労働市場

しかし、
保護貿易主義が本当にアメリカのためになるのか?(ならない、という論調も最近見受けられます)
「アメリカさえ良ければ」的な一国主義がまかりとおるのか?
という問題があるため、このテーマは国際問題としての側面も大きく、一体、これからアメリカはどうするのか? 盛り上がっている大統領選の党員大会のニュースも、気になって仕方ありません。

そんなわけで、Entrepreneurshipのお膝元、シリコンバレーでも、

Outsourcing controversy gets some VC input
http://www.siliconvalley.com/mld/siliconvalley/8026798.htm

民主党の党員大会は、一般のメディアのみならずIT系の雑誌(CIO Magazineとか)でも取り上げられる一大トピックですが、blog界でも一躍有名人になった時の人・Dr. Howard Dean がアッサリ脱落し、当初はあまり注目されていなかった John Edwards 上院議員がじわじわと人気を高めているのは、Edwards 上院議員が、「雇用」にフォーカスした政策をアピールし続けているからではないかとも言われています。

アメリカでも有数のお金持ち家庭に育った共和党のBush大統領に対して、「勝てそう」ということで、民主党では、依然Kelly 上院議員が優勢のようです。確かに、軍隊勤務経験や反戦運動などの彼の経歴に安心感をおぼえる人が多いのも理解はできるのですが、イマイチ、Bush大統領に比べて新鮮味が薄いのでは? というのが私の個人的な意見で、「田舎から出てきた」「一族で初めて大学を出た」と、一般庶民にとって身近さをうまくアピールし、政治の世界での経歴の浅さを「ワシントンDCとのコネに左右されない」と印象付けられる点で有利なEdwards上院議員が今後も善戦するのでは、というか、まだまだ勝敗は分からないのではないか? と私は思っています。資金や組織票など、色々選挙を動かす要素は他にもあるのでしょうから、いちがいに政策だけでは何とも言えませんが。

#実のところ、Edwards上院議員だって、辣腕弁護士で、大企業相手の訴訟に立て続けに勝ち、相当な個人資産をお持ちのようなので、「庶民の味方」的なアピールはマーケティング上手だなぁという気もしないでもないのですが、それにしてもEdwards候補はプレゼン上手だと思います。私は口べたなので、プレゼン上手は一つの才能だ、といつも感心してしまうのですが。

政治関連の話も含めてまとまっている記事がEconomistに出ていましたのでリンク。

The great hollowing-out myth
http://economist.com/agenda/displayStory.cfm?story_id=2454530

ちなみに、Hollowing out とは「空洞化」のことだそうで、経済関連の記事を読むときに覚えておくと便利かもしれません(実は私も最近覚えたばかりなのですが)。


Social Networking の可能性

Do-Not-Call Registry がサービス開始してから早数ヶ月になるのですが、その弊害を痛感しています。
最近、やたらスパムメールが多いのです。
私の携帯電話には、一日4-5通は広告が届いています。

※Do-Not-Call Registry とは:アメリカでは、予め「セールス電話お断り」のデータベースに自分の電話番号を登録すると、テレマ業者は、登録した人に対してセールス電話を掛けてはならないことになっている。
FCCのDo-Not-Call説明ページ:http://www.fcc.gov/cgb/donotcall

※参考:私の過去blogでの関連エントリは、
セールス電話お断りを考える
Do-Not-Call List がコールセンタビジネスに与える影響

テレマ業者の苦肉の策として、メールのアウトバウンド業務に切り替えたところが多いのか、はたまた、電話でのセールスができなくなったので、企業がその分の広告予算をメールに向ける事にしたのか。

とにかく企業からのプッシュ型のセールスは消費者に大変迷惑がられているという印象がありますが、反面、売れるモノは売れているわけで、口コミによるマーケティング というのが、今後のダイレクトマーケティングで果たす役割を増して行くのではないか、という予測はちょくちょく見かけます。そんなわけで、実は、Social Networking には、ダイレクトマーケティングのキラーアプリとしての期待が掛けられているのではないでしょうか。

…という切り口は、既に渡辺千賀さんのblogで「普通の人セレブリティ、略して普セレ」と紹介されていましたので、リンク。
http://chika.typepad.com/blog/2004/02/orkut.html

はたまた、セマンティックWebも、共通の背景知識を有する人同士の間でやったら非常に大きなインパクトを持つだろう(特定業界・企業の中では、いちいち説明しなくても”ツーと言えばカー”な暗黙の了解がたくさんあるため)と思うので、blog によって生成される大量のテキストデータと、Social Networking による人の繋がりをうまく組み合わせれば、メタデータの価値って飛躍的に上がるのではなかろうか、などと、実は私はSocial Networking には期待をしています。(最近私の周りでも急速に流行り始めたOrkutがGoogle社員によって開発された、というのも、サーチの未来を見越してのコトに違いない!)

小さい例を挙げると、P2Pと聞いてPeer-to-Peerを連想するか、Path-to-Profitを連想するか、ATMと聞いて銀行のキャッシュディスペンサーを連想するか、Asynchronous Transfer Mode のことだと思うか、等など、ある特定の単語を読んで、どういう文脈のどういう単語と意味づけるか、というのは、かなりその人の属するコミュニティによって差がある、と思うので。

まぁ、私の挙げた例は極端なので、「そんなの前後の文脈で分かるだろう」と思う人もいらっしゃるかもしれませんが、友達に「マック(=マクドナルド)でレポート書いてきた」と言われて、「すごーい、こんな手書きフォントあるんだー」と真顔で答えたMacintoshオタクを私は知っています。


アメリカ、そしてシリコンバレーにおける軍の存在感

FPNのsugimotoさんとのやり取りで、今まで書くのに少し気が引けていたネタを出そうと思い立ちました。
※ 火種となったエントリ:「勝つための状況判断学

戦後日本の歴史教育しか知らない、「戦争を知らない子供たち」の1人である私が、アメリカに来て、いちばん驚いたことは、この国は臨戦体制にある ということです。(まぁ、渡米してすぐに開戦したので、余計そういう印象が強まっているんだと思いますが)

もう少し具体的に言うと、政治・経済・アカデミックの世界に軍需が与えている影響力の大きさに、驚きました。 例を順不同で挙げていきますが、

■なんたってお金持ち

まずは、2005年のアメリカ政府予算をご覧ください。
http://www.whitehouse.gov/omb/budget/fy2005/tables.html
国防総省 (Department of Defence: 以下DoD) が ザックリ政府予算の半分を占めていることがお分かりいただけると思います。具体的な各省予算の内訳まで詳しくは知りませんが、IT予算に関しても、全省を通して、DoDが半分を占めている構図はほぼ同じだそうです。

ちなみに、DoDのIT投資額は、一組織としては世界最大(民間企業を含めてもぶっちぎりで)だそうです。
経営におけるIT活用で常にエクセレントカンパニーに名前が挙がるWal-Martをして 「弊社のIT投資規模は、DoDに次いで世界で2位」と言わせた、という話はあまりに有名です。

■しかも研究熱心

DoDの予算の内訳を見て行くと、
http://www.whitehouse.gov/omb/budget/fy2005/defense.html
予算の10数%をR&Dに費やしていることが分かります。

FPNで話題になったシナリオ・アプローチや、ゲーム理論の発展に多大な貢献をしたランド研究所も、元々は軍需用途の研究機関、「ハーバード流交渉術」も、テロの際の人質交渉での経験や研究に基づいて民需に転用された(確かそう習った)、等など、先進的な研究が軍によって行なわれていた例は枚挙に暇がありません。クリントン政権下で行なわれていた、TRP (Technology Reinvestment Project) という軍事技術の民需転用も、今は下火になったようですが、今も、無線ICタグの先進ユーザとして、研究に貢献しつつ、数十億個のタグ需要を作り出すとも言われており、その存在感は無視できないものがあります。やや脱線しますが、ロジスティックス (Logistics) という単語がもともと「兵站」を意味する軍事用語だったように、アメリカにおけるSCM分野の理論は、産・学ならぬ、産・軍・学で育まれてきた色彩が濃いことも、恥ずかしながら、この国に来るまで私は知りませんでした。

若者が自由なアイディアを基に起業している、と世間で思われているかもしれないシリコンバレーですら、その成功に政府が大きく寄与していると言われています。「シリコンバレー なぜ変わり続けるのか」では、政府が果たした3つの役割が指摘されています(この本では、直接的なスポンサーシップより、起業を促すルール作りでの間接的貢献のほうが大きかった、と言われています)。

①企業の行動を律するルールの作り手
②企業の製品の買い手
③研究と開発初期の資金の提供者

ところで、DoDがアメリカの情報産業をリードしていたのは5年前までで、インターネットブーム以降は、むしろ先進的な民需がDoDに貢献している、という話もあるのが面白いところです。とは言え、スタートアップにとって、DoDが顧客リストに名を連ねることが安定した収入源を意味するのは今も変わらないそうです。クリステンセンブームで、最近は、「ローエンドから」始まるイノベーションが注目を集めているとは言え、「お金持ちを相手にする商売」がビジネスの王道だとすれば、DoD相手は王道中の王道、と言えるでしょうか…。

参考:Managing Supply Chains: What the Military Can Teach Business (and Vice Versa)
※ 記事閲覧には、Knowlege@Whartonの無料登録が必要かもしれません

■IT以外でも

手元にデータがないのでうろ覚えで恐縮ですが、製造業におけるFortune 500の売上規模を見て行くと、石油が断トツのNo. 1 らしいです。次いで、通信、ユーティリティ、もう少し規模が落ちて医薬品、そして航空/防衛と続きます。やはり軍需に関連しそうな産業がアメリカでは一番儲かっている というのはちょっと衝撃的な事実でした。

やや脱線しますが、NY Times大統領選特集インタラクティブページへ行くと、各候補の現在の手持ち資金が出て来ます(それも日本人的感覚から言うと随分えげつないのですが。こんなに選挙にお金が掛かるっていうことを、アメリカ人はどう思っているのかが興味深い)。 現職のブッシュ大統領の資金が、民主党の事実上残った二人の候補を大きく上回っているのが一目で分かります。エドワーズ氏の10倍近く、ってところでしょうか。これも実家のファミリービジネスが石油だからかなぁ…などと、何とも言えない気持ちになります。それに、(リンクご覧になった方はお気づきでしょうが、)2005年のアメリカ政府予算、何気にDoDの予算、増えてますしね…。

政治における軍隊、そしてアメリカの大統領選については、色々思うところがあるので、これもそのうち書きたいと思います。

Continue reading "アメリカ、そしてシリコンバレーにおける軍の存在感" »


異なる価値観に耳を傾けるということ

今日は記事の紹介ではなく、徒然なるままに思うところを書きます。

最近、色々な方がリンクしてくださったお蔭でアクセス数は増加傾向なのですが、実は、私自身としてはややスランプ気味なのです…。

「自分って何に興味があるんだっけ」を掘り下げるため、帰納法的アプローチで(笑)書いているうちに何か色が出てくるのではないか?と、自分のためのスクラップブックを作る感覚でblogを始めました。最初の頃は、がむしゃらに人がいいと言うものを手当たり次第に読み漁り、みるもの全てが新鮮な感動だったのですが、放っておくと、巡回先がどうしても固定化して、マンネリになってしまうんですね。もう少し正確に言うと、「なるほどなぁ」と感心したblogを巡回先にする→巡回先で紹介されているサイトも巡回するようになる というサイクルだけだと、ある人・特定の傾向に偏った情報ばかりを取り入れている、というか。世の中には頭が良く、高潔な志を持った方がたくさんいらっしゃるので、つい感化され、「そうだよねぇ」的エントリが増えてしまってるなぁ、と、危機感を持っています。

私は文系出身、大学は法学部なのですが、ゼミでは、在日外国人の人権に関する憲法判例を使って、ケーススタディをしていました。あるテーマをディスカッションするとき、必ず、「判例に賛成か、反対か」を表明して、それぞれの立場の代弁人として意見を言いました。そこで一番勉強になるのは、自分が本来思っているのとは逆の立場になって意見を言うことでした。例えば、「台湾人軍属が亡くなったら故人や遺族の意向も無視して靖国に祀るのに、恩給はあげないなんておかしい」と思っていたとしても、敢えて心を鬼にして(?)「イヤイヤ、それでいいんです」と、その論拠を挙げるわけです。

ディベートを学んだ方ならお詳しいと思いますが、「悪魔の代弁人」に近い感じでしょうか。

自分の意見とは全く違う論理を組立てていく、というのは、当初自分が持っていた意見のアラがよく分かり、最終的には、一つの立場からモノを考える時よりも遥かに考えが深まる、とても効果的なアプローチでした。

しかし、自省も込めてですが、人間って、どうしても、自分と同じ意見・同じ価値観の人の話を聞く方が耳に優しいようで、自分と違う価値観に対して、耳を閉ざしがちな面があると思います。私から見て、ああこの人の思考プロセスは素晴らしいなぁ、と思う人は、自分と異なる意見を聞くこと・引き出すことに積極的で、議論するのが上手なことが多く、クリティカルシンキング、価値観の対立を恐れてはいけない!と、常々自分に言い聞かせています。

blogをやっていてとっても面白いのは、色んな方と色んな形でのリンクができて、思考がシンクロし、相乗効果で、自分の考えを深められる点なのですが、それに加えて、いかに自分と価値観が違っていて、なおかつ質が高い情報源をキープするか が今後の課題だなぁ、と、感じています。

自分は、自分に賛成してくれる人の意見だけ聞いているのではないか?
自分と異なる価値観の人を、排除していないか?
常に、自分と異なる意見に耳を傾ける努力をしているか?

PVが多く、露出度の高いblogでは、賛否両論が常に盛り上がっているので、それはそれで、bloggerとしては大変なのかもしれないんですが、ある意味、とても幸せなことではないかしら、と、私は思います。


Decisions Under Uncertainty

「またか」と言われそうですが、業務多忙→風邪でダウン のため更新が遅れてしまいました…。
せっかくの連休を寝て過ごすほど空しいことはないので、「体力づくり」が今年第二の課題になりそうです。

今日は、ふたたびArnold Kling氏から。Decisions Under Uncertainty を紹介します。

"Tim Russert: But can you launch a preemptive war without iron clad, absolute intelligence that he had weapons of mass destruction?

President Bush: Let me take a step back for a second and there is no such thing necessarily in a dictatorial regime of iron clad absolutely solid evidence."

冒頭に引用されたCNNのインタビュー、イラクが大量殺戮兵器-weapons of mass destruction (WMD) を持っているという確実な証拠を掴んでから攻撃すべきだったのではないか?というRussert氏の問い掛けはナンセンスである、と主張しています。

Kling氏がBush大統領支持派なのか、そうでないのか、この記事を読んだだけではよく分からないし、私自身、今の国際情勢に対して、「誰が悪い、誰がこうすべき」みたいな明確な知見を持っているわけではありません。ただ、

ending the mass murders committed by the Hussein regime and giving Iraqis an opportunity to establish a better government.

という辺りに漂うアメリカのお節介ぶりには共感できないものの、イラクに入ってみないとWMDがあるのかないのか確実な証拠を掴むことなど不可能だし、本当にWMDがあった場合、モタモタしていたらアメリカが攻撃されて莫大な被害をこうむるリスクを考えれば、WMDがないのにイラクを攻撃してしまうかもしれない、というリスクを取る決断を下さざるを得ないし、そう判断したBush大統領には理がある という論理には、同感しました。私がアメリカの大統領だったらやっぱりそうするだろうなぁ、と思うので。

Kling氏の記事では、イラク侵攻のタイミングとその是非を検証する前に、Floridaでの選挙で、Al Gore対Bushの正確な投票結果が出なかったことを例として取り上げていて、そちらも興味深かったのですが、今日の自分にとって、より身近で、切実な問題だったのは、不確実性の元に決断を下さなければいけない (Decisions Under Uncertainty) のは、ビジネスでも同じだからです。

実は、Bush大統領は、アメリカの大統領としては初のMBAホルダーだそうです。Kling氏の記事でも引用されているHBSのThomas Lifson氏の記事でも強調されているように、

The very first lesson drummed-into new students, as they file into the classrooms of Aldrich Hall, is that management consists of decision-making under conditions of uncertainty. There is never perfect information, and decisions often have to be made even when you’d really prefer to know a lot more. Given this reality, students are taught many techniques for analyzing the data which is available, extracting the non-obvious facets, learning how read into it the reasonable inferences which can be made, while quantifying the risks of doing so, and learning the costs and value of obtaining additional data.

「絶対にうまく行く確実な答え」でない限り動かない、という姿勢の人は、結構世の中に多いのではないでしょうか。しかし、未来のことに関して、万人が納得する確実な答えは、ありえないと思うのです。

(まだ読みかけなので恐縮ですが)「イノベーションへの解」で示唆されているようなチェックリストを使えば、ある会議の構成員で合意を取るためのプロトコルとしては機能するかもしれませんが、大ブレイクする商品が、世に出る前に、多くの人の諸手の賛成を受けることなど、まずないのではないか?と、最近私は考えています。ちなみに、「イノベーションへの解」では、SONYが次々世間の人をあっと言わせる面白い製品を次々出していた80年代までを振り返り、創業者・盛田昭夫さんの鋭い洞察力とわずか5人の腹心の部下、という極めて密室の新商品開発決定 (注:密室なのが悪い、と否定的に捉えているわけではなく、それくらい、まだ起こっていない出来事に対する読みを共有するのは難しい、という点を強調しています)の事例が示されています。

大勢が意思決定に参加すれば、「自分の意思が反映された」という満足感は得られるので、決定に対する不満は出づらいものの、大勢が参加すれば必ず「合理的」な意思決定ができる(ここでの「合理性」の定義は、その決定の結果得られる利益を最大化できる、という意味)かどうかはまた別の問題、と、過去blogで議論した「民主主義の合理性」とも重なってきます。

いずれにせよ、

Decision-making under uncertainty means living with probabilities, not absolutes.

起こりうる物事と、それらがもたらしうるメリット・デメリット、そして可能性、を考慮した上で、「完璧な答えは存在しない」自覚を持って意思決定していかなければならない、そういう場面は、上級マネジメントになればなるほど増えるんだろうなぁ、と改めて痛感した次第です。


Is the job market broken?

The Big Picture で紹介されていたCNNの記事 "Is the job market broken?"

センセーショナルな記事に右往左往してもしょうがないとは思うのですが、こうやってグラフで見るとけっこう衝撃的だったので、リンクしておきます。要は、不況が終わった宣言してから2年以上も経っているのに、その時よりも職が減っている、Jobless Recovery という言葉を裏付けるデータです。


In fact, the current "jobless recovery" has been much worse than the last one. Some 2.35 million jobs have disappeared since the job market peaked in March 2001, 34 months ago. That long after the labor-market's peak in June 1990, about 400,000 jobs had been added.

Some economists believe globalization, technology and stagnant prices have conspired to make today's economy a great deal different than even that of the early 1990s, making it easier -- even critical, in fact -- for businesses to move work overseas, where workers' skills are growing at a fast clip.

"This is really the first post-NAFTA, post-WTO economic recovery we've ever had in this country," said Wachovia Securities chief economist John Silvia. "Because of the globalization of the labor market, the relationship between economic growth and employment is different this time than it has been in the past."

In other words, he said, "the models are permanently broken."


引用箇所は、"Is the job market broken?" (CNN Money) より


最近このblogをご覧になるようになった方も増えたようなので、繰り返しになりますが改めて書いておきますと(初心に立ち返る、とも言う。)私のblogタイトルは、同名のスペイン映画から取っています。

これからビジネスは、会社は、職業というものはどうなるのか、私はどう生きたい・生きるべきか、自分がこの世に存在した意義を、仕事を通じて考えると何になるんだろう?という課題意識がこのblogを続けるモチベーションとなっています。


Offshore Outsourcing Satisfies

海外アウトソーシングの発注元のMajorityと言われる金融業界の企業75社(うち有効回答38社)を対象にした調査結果が報告されました。

Offshore Outsourcing Satisfies

Financial services companies in particular are benefiting from outsourcing their IT functions, says survey


  • 85%が「ITの海外アウトソーシングを行なっている」
  • 36%がコンタクトセンターをアウトソース、40%がビジネスプロセスアウトソーシング(BPO)
  • 1/4以上が「6年以上前から海外アウトソーシングをしている」
  • 89%が「海外アウトソーシングに満足している」
  • 89%が「海外アウトソーシングをもっと増やす」

94%が、主な動機は「コスト削減」と回答していますが、それだけではなく、63%が「スキルある人材の活用」、51%が「品質の改善」をも目的としており、海外アウトソーシング化の流れは、単にLabor costの安さだけが引き金というわけではないようです。

また、海外アウトソーシングを成功させる秘訣としては、

Specifically, making offshoring work involves setting up a program management office (85 percent) which broader success factors involve knowledge transfer (76 percent) and internal commitment (also 76 percent).

とのことで、発注元の積極的なコミットがカギだそうです。

ちなみに、この調査、半数近くの企業が匿名にも関わらず回答を拒否したのは、海外アウトソーシングに対する世論の反対を気にしてのことだったようです。あと何年かすれば団塊の世代が退職の時期を迎えるので、アメリカでは未曾有の労働力不足が起こる、という説もあるんですが、海外アウトソーシングがうまく進めば、減る人口でも産業を維持できハッピー、他の国々への富の再配分もスンナリ行ってハッピー、と、一挙両得にならないものでしょうか。

※補足:

ちょっとキレが悪かったので、今日紹介した記事で私が注目したポイントをまとめます。


  • 海外アウトソーシングは、昨日・今日始まった一過性の流行ではない
  • シリコンバレーというより、Mainstreamのアメリカ企業からIT関連の職が流出している
  • コールセンターに留まらず、ビジネスプロセスアウトソーシングの割合も増加している
  • ユーザー企業の海外アウトソーシングに対する満足度も高い
  • 今後、海外アウトソーシングの傾向は加速する


Cost-of-Living Arbitrage

着眼点と内容の濃さが気に入って愛読しているも、テーマが重すぎていつもあまりこのblogでは紹介できないArnolg Kling氏のEconLogで、インドのITエンジニアの生活コストはアメリカの1/5である、という記事がありました。

Cost-of-Living Arbitrage

彼がこのエントリを書く引き金になったのは、インド在住のエンジニアからのメールだったようです。インドのエンジニア氏によると、

...an average programmer in India lives the same life-style as an average US programmer now - in many ways better - in some ways worse - in a new high-rise modern apartment, with swimming pool, jaccuzi, sauna, steam, 3-bed 2-bath, 2400 sq. ft apartment, gated community, modern bowling, tennis etc and other facilities - ...for 300 $ a month - something that will cost atleast 1500 $ a month in a cheap American city such as Dallas or Austin...labor that is supporting this programmer - house maid, builders, cooks, apartment management, etc is done by people who have incomes up to 10 to 30 times lower than this programmer's - he is able to buy these other services for a much lower price while he is able to get a high salary...

確かに、これを「額面どおり受け取れば」シリコンバレーの標準的なエンジニアよりも住んでる家は立派そうです。バブル期に比べれば随分Rentが下がったと皆さんおっしゃいますが、それでも$1,500で3ベッドルームのアパートを借りるのはこの辺りではちょっと難しいので。

とは言え、Kling氏も、

Measuring the cost of living across countries is hazardous, because the consumption baskets tend to be so different. I do not believe that there is a simple, precise estimate of the ratio of the cost of living in one country to the cost of living in another.

国が違えば生活コスト算出の前提条件が違うので単純にはいかない、と思っているようです。「インドとの生活コストを比較する上で他に何か情報はありませんか?」という問いかけでエントリは結ばれています。

コメントで紹介されていたのは、India Shines For Job Seeking Foreigners, too という記事で、職がインドにアウトソースされるだけでなく、実際にエンジニア自身がインドに移り住んでいるという実態について報告されています。

実際にイギリスからインドに移り住んだMr. Teeいわく、

“I have been following the growth of the Indian IT and BPO markets from the UK and see the potential.” Having married an Indian, Mr Tee says, “We have already taken the decision to settle in India ahead of securing a position as we believe the best opportunities are currently in India. Our preferred city is Bangalore as it is cosmopolitan, the climate is great and the IT buzz is very present.”

インドへのOffshore Outsourcing というと、コールセンターか、もしくは比較的具体的な仕様まで落としこまれたプログラミング作業がシリコンバレー企業から移転している、というイメージがあるのですが、実は、発注元の大半は金融・製造業で、複雑な業務知識が必要となるビジネスプロセスアウトソーシングの割合はうなぎのぼり、インドの強みはマネジメント力である ということがStanford大学の調査で明らかになったそうです(Stanford researcher examines offshoring trend 有料コンテンツらしいので、概要を知りたい方は私の古い方のblogをご参照ください)。

Offshore Outsourcingの際には、商習慣に対する理解など、言語以外の背景部分が問題になることが多い、と言われていますが、こうして外国人が実際に加わるとなると、Offshore Outsourcingで受注できる仕事の幅も広がりそうな気がします。

Continue reading "Cost-of-Living Arbitrage" »