Is the job market broken?
異なる価値観に耳を傾けるということ

Decisions Under Uncertainty

「またか」と言われそうですが、業務多忙→風邪でダウン のため更新が遅れてしまいました…。
せっかくの連休を寝て過ごすほど空しいことはないので、「体力づくり」が今年第二の課題になりそうです。

今日は、ふたたびArnold Kling氏から。Decisions Under Uncertainty を紹介します。

"Tim Russert: But can you launch a preemptive war without iron clad, absolute intelligence that he had weapons of mass destruction?

President Bush: Let me take a step back for a second and there is no such thing necessarily in a dictatorial regime of iron clad absolutely solid evidence."

冒頭に引用されたCNNのインタビュー、イラクが大量殺戮兵器-weapons of mass destruction (WMD) を持っているという確実な証拠を掴んでから攻撃すべきだったのではないか?というRussert氏の問い掛けはナンセンスである、と主張しています。

Kling氏がBush大統領支持派なのか、そうでないのか、この記事を読んだだけではよく分からないし、私自身、今の国際情勢に対して、「誰が悪い、誰がこうすべき」みたいな明確な知見を持っているわけではありません。ただ、

ending the mass murders committed by the Hussein regime and giving Iraqis an opportunity to establish a better government.

という辺りに漂うアメリカのお節介ぶりには共感できないものの、イラクに入ってみないとWMDがあるのかないのか確実な証拠を掴むことなど不可能だし、本当にWMDがあった場合、モタモタしていたらアメリカが攻撃されて莫大な被害をこうむるリスクを考えれば、WMDがないのにイラクを攻撃してしまうかもしれない、というリスクを取る決断を下さざるを得ないし、そう判断したBush大統領には理がある という論理には、同感しました。私がアメリカの大統領だったらやっぱりそうするだろうなぁ、と思うので。

Kling氏の記事では、イラク侵攻のタイミングとその是非を検証する前に、Floridaでの選挙で、Al Gore対Bushの正確な投票結果が出なかったことを例として取り上げていて、そちらも興味深かったのですが、今日の自分にとって、より身近で、切実な問題だったのは、不確実性の元に決断を下さなければいけない (Decisions Under Uncertainty) のは、ビジネスでも同じだからです。

実は、Bush大統領は、アメリカの大統領としては初のMBAホルダーだそうです。Kling氏の記事でも引用されているHBSのThomas Lifson氏の記事でも強調されているように、

The very first lesson drummed-into new students, as they file into the classrooms of Aldrich Hall, is that management consists of decision-making under conditions of uncertainty. There is never perfect information, and decisions often have to be made even when you’d really prefer to know a lot more. Given this reality, students are taught many techniques for analyzing the data which is available, extracting the non-obvious facets, learning how read into it the reasonable inferences which can be made, while quantifying the risks of doing so, and learning the costs and value of obtaining additional data.

「絶対にうまく行く確実な答え」でない限り動かない、という姿勢の人は、結構世の中に多いのではないでしょうか。しかし、未来のことに関して、万人が納得する確実な答えは、ありえないと思うのです。

(まだ読みかけなので恐縮ですが)「イノベーションへの解」で示唆されているようなチェックリストを使えば、ある会議の構成員で合意を取るためのプロトコルとしては機能するかもしれませんが、大ブレイクする商品が、世に出る前に、多くの人の諸手の賛成を受けることなど、まずないのではないか?と、最近私は考えています。ちなみに、「イノベーションへの解」では、SONYが次々世間の人をあっと言わせる面白い製品を次々出していた80年代までを振り返り、創業者・盛田昭夫さんの鋭い洞察力とわずか5人の腹心の部下、という極めて密室の新商品開発決定 (注:密室なのが悪い、と否定的に捉えているわけではなく、それくらい、まだ起こっていない出来事に対する読みを共有するのは難しい、という点を強調しています)の事例が示されています。

大勢が意思決定に参加すれば、「自分の意思が反映された」という満足感は得られるので、決定に対する不満は出づらいものの、大勢が参加すれば必ず「合理的」な意思決定ができる(ここでの「合理性」の定義は、その決定の結果得られる利益を最大化できる、という意味)かどうかはまた別の問題、と、過去blogで議論した「民主主義の合理性」とも重なってきます。

いずれにせよ、

Decision-making under uncertainty means living with probabilities, not absolutes.

起こりうる物事と、それらがもたらしうるメリット・デメリット、そして可能性、を考慮した上で、「完璧な答えは存在しない」自覚を持って意思決定していかなければならない、そういう場面は、上級マネジメントになればなるほど増えるんだろうなぁ、と改めて痛感した次第です。

Comments

Naotake

私の前職はSDGという会社で、「企業の戦略意思決定コンサルタント」でした。ですので、「不確実性の下での意思決定」などと聞くと今でも血が騒ぎます。

そこでの私の師匠であった籠屋邦夫さんの本、興味あったらお貸しします。

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4478490236/249-5231267-3653963

Tomomi

>Naotakeさん

わー、ありがとうございますー!!
今度取りに伺わせて頂きますので、また別途メールさせていただきます!

sugimoto

Tomomiさん、こんにちは。FPNのsugimotoです。

ちょうど今朝読み終わったところなのですが、まさにTomomiさんの云わんとしていらっしゃることと、あまりにシンクロしたのでご紹介させてください。

元自衛隊幕僚である松村劭氏の『勝つための状況判断学―軍隊に学ぶ戦略ノート』という本です。あまりに感動!してしまったので、3本もエントリーに紹介してしまいました(笑)

http://www.future-planning.net/xp/modules/news/article.php?storyid=812
http://www.future-planning.net/xp/modules/news/article.php?storyid=813
http://www.future-planning.net/xp/modules/news/article.php?storyid=814

Tomomi

sugimotoさん、

軍事組織、は、ここ数年、私の個人的な興味の裏テーマだったりするんですよ。何という奇遇!
日本で、IT業界の若手で勉強会をしていたときのテーマもマキャベリ「君主論」だったりとか(笑)
こう書くと何だかタカ派っぽいんですけど、やっぱり国家の存亡や命を掛けている組織でのリーダーシップやロジスティックスって、かなりビジネスでも共通の要素が多いと思うんですよね。

特に私の日本での本業はSCMソリューションのBusiness Developmentだったこともあるので、SCMに関してはかなり極端な例かもしれませんが、アメリカという国における技術や経済の発展と軍事は切って切れない関係にあるということを、痛感している今日この頃です。(DoDとIT業界の関係については、また後日改めてエントリしたいと思います)

「将来の敵の行動をいかに判断するか」

なんて、まさに!! って感じですね。

目標を極力具体的に落としこむところや、マイルストーンの設定など、日頃の仕事を思い返して、深く頷いてしまいました(笑)

興味深いエントリ、そして本のご紹介、ありがとうございました!

#それにしてもsugimotoさんが1エントリ10分という早筆(って日本語はヘンですか?)というのには本当に驚きました。私は筆が遅いので。

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