更新が滞っていた間、というか、多分それ以前からずーっとアレコレ考えていたのですが、「下手の考え休むに似たり」というわけで、とりあえず今の時点で思うところを思うままに書いておきます(最近多いな…。こういうの。調べたり勉強する余裕がないってことなのかも)
挑戦者の背中で、日本人起業家・鷹取さんの会社の歩き方が印象的だったと書いたことがあります。
日立で通信業界向けの半導体設計→Intelからスピンアウトした、同じく通信業界向けの半導体(それもDSLに特化した)スタートアップ・Level One Communicationsへ転職→IPO→Level OneがIntelに買収される→IntelからスピンアウトしてKeyEyeを創業
大企業からスピンアウトしてM&Aされ、そしてまたスピンアウトする、という、同じ人が業界の中を行ったり来たりしながらイノベーションを続ける様は、極めてシリコンバレーらしいし、シリコンバレーがなぜ「イノベーションのメッカ」なのかを如実に示している典型だなあ、と感じたからです。
ちょっと「イノベーションのジレンマ」のおさらいをしますと、同書は、市場に破壊的イノベーションが起こるとき、新しく小さな会社に従来のリーダー企業が脅かされる、という構図を提示しています(本のサマリと私の書評は過去のエントリでご参照ください)
そして、大企業が、破壊的イノベーションによる市場の変革にうまく対応していくためには、
既存のビジネスとカニバライズするかもしれないし、既存の優良顧客とは異なる層を相手に、成功するかどうかも定かでない技術に投資して、企業の成長に対するプレッシャーと調和させるためには、既存ビジネスの枠組みからはなれた小規模な組織に任せるべし
とクリステンセン教授は主張しています。
半導体業界は、一見変化が激しそうな世界ですが、一つのチップをR&Dから製品化まで持っていくには5年は掛かるので、R&Dのリスクが高いと聞いたことがあります。更に、近年、R&Dコストは、業界的に着実にあがっています(下のグラフ参照。出典はElectronic Business)。従って、高いR&Dリスクをいかに分散するかが雌雄を決するように思うのですが、Intelの戦略は、まさに、高いリスクをスタートアップに乗せて、一旦外に出して分散する(そしてある程度うまく行ったらまた買い戻せば良い)というものだからです。
ここでは半導体とIntelを例に挙げましたが、こういう人は特殊ではなく、シリコンバレーで「連続起業」している人はみんなこんな感じなのではないかと思うほどです。例えば、業務アプリケーション市場では、高価なソリューションを買う体力のある会社の需要は一巡し、PeoplesoftはOracleに買収されそうだし、SAPはMicrosoftに買収されるという話があったし、Siebelは、中小企業に触手を伸ばし始めており、典型的な市場飽和が起きている状態です。その中で、気を吐いているのがASPとOpensourceで、Salesforce.comのCEO, Benioff氏はOracle出身だし、Sugar CRMの創業者はePiphanyの出身。
既に市場が成熟して来た商品を売っている大手企業に勤めていた人が、「もっと市場は小さいかもしれないけど、小さい会社なら大丈夫だし、売れる」と見切りを付けてスピンアウトして行っている、という様子が今はむちゃくちゃ分かりやすいですが、こういう例はちょっと調べただけでゴロゴロあるのでいちいち挙げません。
シリコンバレーを見ている限り、ある業界におけるイノベーションというのは、どこか遠いところからやってきた黒船みたいなものではなく、内部から起こっており、あえて俗な言い方をすれば、みんな仲間内系なのかもしれないなあ、というのが(駐在員というアウトサイダーの立場から見ている)私の今の感想です。
さて、今回半導体業界とIntelについて少し書いたのですが、実はIntelは、マイクロプロセッサ事業があまりに大きすぎ、自前のR&Dが強すぎるため、M&Aはあんまり得意でない会社だというのが、鷹取さんや元インベストメントバンカー東恵美子さんの共通した見解で、印象に残っています。
そんなIntelが、電話という世紀の大発明を成し遂げた元祖イノベーター(笑)グラハム・ベルの系譜を継ぐ、AT&TとR&Dのジョイントプロジェクトを始める、それもVoIPに関する、という最近のニュースは注目していました。
VoIPは間違いなく通信業界の破壊的イノベーションだろう、と思いますが、マイクロプロセッサ以外の技術では評価が高くないIntelと、どちらかというとVoIPに駆逐される側で何とか逃げたいはずのAT&Tという2社が一体どういう成果を出すのか、ちょっと気になります。
Recent Comments