随分たくさんの本が机に積みあがっているのだけれど、それぞれ、読もうと思った理由もあるし、裏にある課題意識は一つに結ばれているような気がしています。「なぜ読むのか」「そこから何を得たいのか」自分の頭をスッキリさせる意味でも、リストを以下に列記しておきます。
まず、今日の勉強に繋がる発端は、JTPAのイベントでの東恵美子さんのコメント:M&Aの成功を測る指標は、株価がいかに上がったかであり、Wall Streetは「遅くとも1年以内に成果が出るかどうか」で判断する でした。今日の企業経営に対して投資家が大きな影響力を持っていること、短期間でリターンが得られることが重要になっていること、を感じると共に、
企業組織が長く続かなければいけないという前提は正しいのか?そもそも今日の企業の寿命はどれくらいなのか?企業統治の理想的なあり方とは?
と考えるようになりました。
そこで、史上最大の版図と1,000年以上の寿命を保ったローマ帝国はなぜ巨大になり、そして滅びたか にヒントがあるのではないか、と、エドワード・ギボン「新訳ローマ帝国衰亡史」を読んだりしました。(参考:私のギボンレビュー)90年代後半以降、米国企業の生産性は急激に伸びていますが、反面、労働時間は短くなり、失業率も下がらない、Jobless Recovery 現象が注目を浴びていることに、ローマ帝国爛熟時代の「パンと見世物」を連想したこともあります。「アメリカはこれからどうなるのか」もギボンを読んだ理由の一つでした。
ローマ帝国が滅びた直接的な理由は、イスラム勢力に敗北したからですが、では、今日の成功した企業にとってのイスラムは何なのか? クレイトン・クリステンセン「イノベーションのジレンマ」では、優れた企業が失敗する理由を「破壊的イノベーション」という概念を用いて鮮やかに切り取って見せました。(参考:私の「イノベーションのジレンマ」レビュー)
■クレイトン・クリステンセン「イノベーションへの解」
ある製品や技術が、顧客の求める性能・品質を上回った時、破壊的イノベーションは起こる、というのがクリステンセンの発見した法則ですが、同時に、破壊的技術は、実は既存の成功企業の中から生まれてきていることも指摘されています。では、どうすれば従来のリーダー企業は破壊的技術がもたらす市場の変化にキャッチアップすることができるのか?と誰もが抱く疑問に対して、破壊的イノベーターとして成功した企業の観察に基づいた法則が描かれているようです。
また、ソフトウェア産業は、まだ品質の保証という点で課題が多い、といわれ、品質の改善という点では自動車産業に見習う点が多い、という記事を紹介したことがありますが(参考:Make Software More Reliable)、ソフトウェアと自動車は、製品の設計思想(アーキテクチャ)が異なるとの鋭い指摘をSWさんから頂きました。実際、異なるアーキテクチャの製品市場で成功するためには異なる組織能力が必要とされるという議論が、今日 経済学や経営学で脚光を浴びているとのこと(経済学者の友人の談)。ソフトウェアは、モジュール(もしくは部品)間のインターフェースが公開され、相互の独立性の高い「モジュラー型」、自動車は部品間の依存度が高く、サプライヤ・機能間の摺り合わせが全体としての高性能・高品質を実現する「インテグラル型」とされているそうですが、このモジュラリティ概念をもう少し掘り下げて勉強したいと思い、以下の2冊を読んでいます。
■R・ボワイエ、P-F・スイリ 編「脱グローバリズム宣言」
■青木昌彦・安藤晴彦 編著「モジュール化」
私はSIerに勤務しているので、IT業界の今後が気になることは言うまでもありませんが、色々な産業のクライアントに対して調査レポートを書くような仕事もしております。ですので、他の産業にも関心があります。そこで、
■Boutellier, Gassmann, von Zedtwitz "Managing Global Innovation"
藤本隆宏「能力構築競争」、「成功する製品開発」
特に、日本企業が強みとする自動車製造企業がなぜ成功したのか、その他の産業では何がカギなのかについてHi-levelの知識と示唆が得られればと思っています。
それから、(これは特に私が外国に住んでいるから強く感じることかもしれませんが、) 日本人とアメリカ人や中国人では何かが違う、ということです。留学や駐在を通じて、私自身が勤める会社の採用活動に関わったときに、日本の大企業に勤めるような新卒学生は極めて均質性が高い(アメリカに比べると)ということが分かるようになりました。日本が単一民族国家である、という認識は間違っていることを理解してはいますが、日本は「均質性が高い」「単一民族国家だ」と何となく思っている人が多いのはなぜか、いつからなのか、そもそも日本人とは何なのか、と考えるようになりました。イラク戦争に対する自衛隊派遣のニュースにも、日本人として色々感じるところがありました。
■小熊英二「単一民族神話の起源」
これもまだ読んでいる途中ですが、日韓併合やアジア侵略を正当化するロジックとして、「日本と朝鮮半島は元々民族として同じである」「日本は多民族混血だから強いのである」とされていたそうで、自分が受けてきた歴史教育では全く触れられていなかった事実に驚くばかりです。
その他には、経営論や組織論を勉強するのであれば、なぜそのような理論が登場するようになったか、背景や、前後の文脈を理解する上で歴史を勉強すると良い、とのアドバイスを黄昏さんから頂いたので、
■スチュアート・クレイナー「マネジメントの世紀 1901-2000」
こちらはサラッと流し読みですが、前後関係が理解できるとかなり頭がスッキリしますし、それぞれ、同時代のエクセレント・カンパニーがどこだったか、リストも付いているので、理論と実世界のリンクも取りやすく、良い本だと思いました。
■S・I・ハヤカワ「思考と行動における言語」
P・ドラッカーは、全ての経営者は言葉の使い方を学び、訓練すべきである、みたいなことを言ったそうですが、「なぜ私の話は通じないのか」「どのような時、どう言えば話は通じるのか」日々の中で感じる疑問について考える時、ヒントが得られる本です。
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